時短勤務で成果を出す父親たちの新しい働き方
はじめに
育児休業を取得する男性は年々増加し、2024年度には取得率が初めて40%を超えました。しかし、育休後の短時間(時短)勤務となると、利用率はわずか7.6%と極めて低い水準にとどまっています。給与やキャリアへの懸念、「働き方は変えられない」という諦めなど、理由はさまざまです。
一方で、時短勤務をしながらも成果を出す働き方を追求する父親たちが現れ始めています。2025年4月から始まった育児時短就業給付制度などの法改正も追い風となり、男性の時短勤務を取り巻く環境は変化しつつあります。本記事では、時短勤務パパの現状と課題、成果を出すための働き方について解説します。
男性の育休と時短勤務の現状
育休取得率は過去最高を更新
厚生労働省の発表によると、2024年度の民間企業における男性の育児休業取得率は40.5%となり、前年度から10.4ポイント上昇して過去最高を更新しました。企業による意向確認や取得状況の公表義務化が効果を発揮しています。
政府は2025年度に50%、2030年度に85%という目標を掲げており、取得率は着実に伸びています。産業別では「金融業・保険業」が63.6%、「情報通信業」が58.1%と高い一方、「生活関連サービス業・娯楽業」は15.8%と業種間で大きな差があります。
また、取得期間については「1か月~3か月未満」が最も多く約3割を占めますが、2週間未満の短期取得も約4割(「5日~2週間未満」22.0%、「5日未満」15.7%)と依然として多い状況です。
時短勤務の利用は極めて低調
育休からの復帰後の時短勤務については、状況が大きく異なります。厚生労働省の調査によると、育児を理由とした短時間勤務制度を「利用している」または「以前は利用していた」と回答した割合は、女性正社員で51.2%であるのに対し、男性正社員はわずか7.6%にとどまっています。
さらに深刻なのは、「利用希望もない」と答えた男性が41.2%にのぼることです。別の調査では男性の時短勤務利用率が0.5%という数字も報告されており、育休取得の進展に比べて時短勤務は圧倒的に普及していません。
時短勤務が敬遠される理由
男性が時短勤務を利用しない理由として、主に以下の点が挙げられます。
まず、収入面の懸念があります。時短勤務では労働時間に応じて給与が減額されるのが一般的です。例えば8時間勤務を6時間に短縮すれば、単純計算で25%の収入減となります。家計を支える立場にある場合、この収入減は大きな障壁となります。
次に、キャリアへの影響です。「マミートラック」という言葉があるように、時短勤務を長期的に利用することで昇進や重要なプロジェクトから外されることへの不安があります。男性においても同様の「パパトラック」が生じる可能性は否定できません。
また、職場環境や文化の問題もあります。「利用したいと思っていたが、利用できなかった」という回答も存在しており、制度があっても実際には利用しづらい雰囲気が職場に残っていることがうかがえます。
2025年の法改正による変化
育児時短就業給付の創設
2025年4月から、時短勤務の利用促進を目指した新制度「育児時短就業給付」がスタートしました。2歳未満の子どもを養育するために短時間勤務制度を利用している男女従業員を対象に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%が支給されます。
この制度により、時短勤務による収入減が一部補填されることになります。給与の減少を懸念して時短勤務を避けていた人にとって、利用のハードルが下がることが期待されています。
ただし、支給には上限があり、支給対象月に支払われた賃金額が471,393円(2026年7月31日までの額)以上の場合は支給されません。また、対象を2歳未満に限定しているのは、時短勤務の長期化・固定化を防ぎ、マミートラック(パパトラック)の助長を避ける意図があります。
柔軟な働き方の義務化
同じく2025年4月からは、3歳から小学校就学前の子どもを育てる従業員に対して、企業が柔軟な働き方の選択肢を提供することが義務化されました。企業は以下の措置から2つ以上を選択して導入する必要があります。
- フレックスタイム制度または時差出勤制度
- テレワーク等(月10日以上)
- 保育施設の設置運営等
- 養育両立支援休暇(年10日以上付与)
- 短時間勤務制度
これにより、従業員は企業が選んだ措置の中から自分に合った働き方を選択できるようになりました。時短勤務だけでなく、テレワークやフレックスタイムを組み合わせることで、より柔軟な育児との両立が可能になります。
出生後休業支援給付金
2025年4月からは「出生後休業支援給付金」も創設され、育児休業給付金と合わせて受給すると、最大28日間は賃金額面の80%(手取りで10割相当)の給付金を受給できるようになりました。これにより、出産直後の育休取得時の経済的負担が大幅に軽減されています。
時短勤務で成果を出す働き方
時間の制約を活かす発想転換
時短勤務で成果を出すためには、単に労働時間を減らすのではなく、働き方そのものを見直す必要があります。限られた時間の中で最大の成果を出すことを意識することで、むしろ生産性が向上するケースも報告されています。
具体的には、会議時間の短縮や効率化、タスクの優先順位付けの徹底、集中できる時間帯への重要業務の配置などが有効です。時間の制約があるからこそ、本当に必要な業務に集中できるという見方もあります。
リモートワークとの併用
時短勤務とリモートワークを組み合わせることで、通勤時間を削減し、より効率的に働くことが可能になります。勤務地が遠く通勤に時間がかかる場合でも、リモートワークを活用すれば子どもの保育園への送迎との両立がしやすくなります。
テレワークと出社を適宜組み合わせた「ハイブリッドワーク」は、従業員のストレス軽減や業務効率化、育児と仕事の両立、働く場所に縛られない柔軟な働き方の実現など、複数のメリットが期待できます。
成果の可視化と評価制度
時短勤務で成果を出すためには、その成果が適切に評価される仕組みが不可欠です。労働時間ではなく成果で評価する制度が整っている企業では、時短勤務者も公平に評価を受けることができます。
成果給や歩合制を導入している企業では、労働時間の長短に関わらず実績で評価されるため、時短勤務でも高い評価を得ることが可能です。自分の成果を可視化し、上司やチームと共有することも重要です。
注意点と今後の展望
制度利用の際の留意点
時短勤務を利用する際には、いくつかの点に注意が必要です。まず、時短勤務中の給与は基本的に労働時間に応じて減額されます。育児時短就業給付を受けても、フルタイム時と同等の収入を維持することは難しい場合があります。
また、時短勤務の対象期間は企業や制度によって異なります。法律上は3歳未満の子を養育する労働者に対する短時間勤務制度の設置が義務付けられていますが、それ以降は企業の任意となります。自社の制度内容を事前に確認しておくことが重要です。
職場文化の変革が鍵
制度が整っても、実際に利用しやすい職場環境がなければ普及は進みません。時短勤務を利用する男性が「特別」ではなく「当たり前」になるためには、職場全体の意識改革が必要です。
管理職自身が時短勤務を経験したり、成功事例を社内で共有したりすることで、制度利用への心理的ハードルを下げることができます。法改正を機に、企業は制度の整備だけでなく、職場文化の変革にも取り組む必要があります。
共働き・共育ての実現へ
政府が掲げる「共働き・共育て」の実現には、男性の育児参加が不可欠です。育休取得率の向上は大きな前進ですが、それだけでは十分ではありません。育休後も継続的に育児に関わるためには、時短勤務やテレワークなど、柔軟な働き方の活用が求められます。
2025年の法改正はその基盤を整えるものですが、実際に制度が活用され、男性も女性も仕事と育児を両立できる社会の実現には、企業と個人双方の意識変革が必要です。
まとめ
男性の育休取得率が40%を超える一方、時短勤務の利用率はわずか7.6%と大きな開きがあります。収入減やキャリアへの懸念、職場の雰囲気など、さまざまな理由から時短勤務は敬遠されてきました。
しかし、2025年4月から育児時短就業給付が創設され、収入減を一部補填できるようになりました。また、柔軟な働き方の義務化により、テレワークやフレックスタイムとの組み合わせも選択しやすくなっています。
時短勤務で成果を出すためには、限られた時間での効率的な働き方と、成果を適切に評価する仕組みの両方が重要です。制度の活用と職場文化の変革を通じて、男性も女性も育児と仕事を両立できる社会の実現が期待されます。
参考資料:
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