日経平均を揺るがすベネズエラ攻撃 円安と金高の行方

by nicoxz

はじめに

2026年の日本株式市場は、波乱の幕開けとなりました。新年最初の取引となる1月5日の大発会を控えた1月3日、トランプ米大統領が「ベネズエラに大規模攻撃を成功裏に実施し、マドゥロ大統領を拘束した」と発表したのです。この衝撃的なニュースは、2025年末に史上初の「5万円台の年越し」を達成した日経平均株価に暗い影を落としています。本記事では、ベネズエラ攻撃という地政学リスクが日本市場に与える影響、円安と金高の持続性、そして今週の主要経済指標について詳しく解説します。

米国のベネズエラ攻撃の衝撃

攻撃の概要

2026年1月3日、現地時間午前2時頃、ベネズエラの首都カラカス市内の軍事施設から爆発音が響きました。米軍はステルス機による精密爆撃を実施し、ベネズエラ軍の行政区域、通信施設、空軍基地、港湾施設を標的としました。カラカスでは少なくとも7回の爆発が確認されています。

トランプ大統領は自身のSNSで、「反米左派政権が率いるベネズエラに対して大規模な攻撃を成功裏に実施した」と発表し、「マドゥロ大統領を妻とともに拘束し、国外に移送した」と明らかにしました。

国際社会の反応

ベネズエラ政府は非常事態宣言を発出し、米国を激しく非難しました。国連安全保障理事会は緊急会合を開き、グテレス国連事務総長は「軍事作戦において国際法の規則が尊重されなかった」と懸念を表明しました。

日本政府も3日、外務省に石瀬素行中南米局長をトップとする連絡室を設置し、邦人の安全確認を急ぎました。幸い、日本人の被害は確認されていません。

地政学リスクの高まり

原油埋蔵量世界一のベネズエラを含む中南米は、米国が中国やロシアと勢力圏を争う重要な地域です。今回の軍事攻撃は、トランプ政権が「国際法より国益を優先する」姿勢を鮮明にしたものと受け取られています。

この出来事は、中東、ウクライナに続く新たな地政学リスクとして、世界の金融市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。

2026年大発会の日経平均と市場動向

2025年の強い上昇からの転換点

2025年の日経平均株価は年間上昇率26.18%という強い一年となり、大納会では5万0339円を記録しました。史上初の「5万円台の年越し」という快挙は、企業収益の高水準維持、AI関連需要の拡大、円安による輸出企業の業績改善が背景にありました。

しかし、2026年の大発会は全く異なる雰囲気となりました。ベネズエラ攻撃という予想外の地政学リスクが浮上し、日経平均株価は年明けスタートから荒れた展開となりました。

上値が重い理由

市場関係者は、日経平均株価の上値が重くなると予想しています。その理由は以下の通りです。

第一に、地政学リスクの拡大です。中東やウクライナに加え、中南米という新たな不安定要因が加わりました。投資家のリスク回避姿勢が強まり、株式から安全資産への資金移動が予想されます。

第二に、原油価格への影響です。ベネズエラは世界最大の原油埋蔵量を持つ国であり、軍事衝突が供給不安を招く可能性があります。原油価格の上昇は、日本のような資源輸入国にとってコスト増要因となります。

第三に、米国の政策不透明感です。トランプ大統領の予測困難な外交・軍事政策は、市場の不確実性を高めています。

2026年の日経平均予想

市場アナリストの間では、「春までモミ合い、夏以降に上昇で、日経平均6万円に期待」という見方が多く聞かれます。予想レンジは4万5800円~5万9000円とされています。

しかし、これらの予想はベネズエラ攻撃以前に立てられたものであり、今後の地政学情勢次第で大きく変動する可能性があります。

今週の主要経済指標

ISM製造業景況指数(1月5日発表済み)

2025年12月のISM製造業PMIは47.9%を記録し、前月の48.2%から0.3ポイント低下して2025年の最低水準となりました。10ヶ月連続の縮小です。

製造業部門は需要の低迷、貿易と関税への懸念、経済・地政学的不確実性という暗いテーマが反映されています。特に新規受注指数は47.7%と50%を下回っており、今後の生産活動への懸念が残ります。

ISMサービス業景況指数(1月7日発表済み)

一方、2025年12月のISMサービスPMIは54.4%に上昇し、2024年10月以来の最高水準となりました。新規受注指数は57.9%と堅調で、サービス業セクターの成長が確認されています。

製造業とサービス業の明暗が分かれる形となっており、米国経済の二極化が進んでいることを示しています。

日銀支店長会議とさくらリポート(1月8日)

日銀は8日発表した1月の地域経済報告(さくらリポート)で、全国9地域すべての景気判断を四半期前から据え置きました。多くの地域で「緩やかに回復」または「持ち直し」の基調が続いています。

特筆すべきは、米関税政策を巡る不確実性が低下して企業収益が高水準を保つなか、2026年度も2025年度並みの賃上げを見込む企業が多数あると指摘された点です。人手不足感が強く、従業員のつなぎとめや士気向上の観点から賃上げが続くと見られています。

また、輸出・生産活動について「人工知能(AI)関連製品を中心にグローバルな需要の増加」も追い風になっていると報告されました。

米貿易収支(1月8日)

米貿易収支では、関税影響がどのように輸出入や物価に影響するかが焦点となります。2025年10月の米貿易赤字は2,940億ドルと、2009年6月以来16年4ヶ月ぶりの低水準となりました。トランプ政権の関税政策により、特に医薬品の輸入が減少したことが影響しています。

関税は貿易赤字を縮小させる一方で、国内物価の上昇圧力となります。議会予算局(CBO)の試算では、トランプ大統領が提唱する中国製品への60%関税と他国への一律10%関税が実施された場合、個人消費支出(PCE)物価指数が2026年までに約1%上昇すると推計されています。

米雇用統計(1月9日発表済み)

1月9日に発表された2025年12月の米非農業部門雇用者数は前月比5万人増加にとどまり、市場予想の7万人増を下回りました。失業率は4.4%でした。

2025年通年では約67万人の増加にとどまり、2024年の200万人増を大幅に下回りました。リッチモンド連銀のバーキン総裁は、この雇用統計が「雇用の緩やかな伸びと低調な採用状況の継続を反映している」と指摘しました。

雇用の伸び鈍化は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策判断に影響を与える可能性があります。

円安と金高は持続するのか

円安の現状と背景

2026年のスタートを切った円相場の下値は堅く、対ドルの円相場は一時156円台前半まで上昇(円安方向)しました。円安は2026年も続く可能性が高いとの見方が市場では優勢です。

円安が持続する理由は以下の通りです。

第一に、日米金利差の継続です。米国では雇用の伸び鈍化が見られるものの、インフレ圧力は依然として残っており、FRBが急速に利下げを進める可能性は低いと見られています。一方、日銀は緩やかな金融政策正常化を進めていますが、その速度は慎重です。

第二に、地政学リスクの高まりです。ベネズエラ攻撃のような予想外の出来事は、安全資産であるドルへの需要を高める傾向があります。

第三に、トランプ関税政策の影響です。関税による物価上昇圧力は、米国の金利を高止まりさせる要因となります。

円高シナリオの可能性

一方で、「2026年円高シナリオ」の現実味を指摘する声もあります。年始には相場が反転するという経験則があり、過去のパターンから円高に転じる可能性も否定できません。

また、米国経済が関税の影響で減速すれば、FRBが利下げに転じ、ドル安・円高が進む可能性もあります。

金価格の高騰

2026年1月5日時点で、国内の金価格は1グラムあたり2万4,000円台に到達しています。これは地政学的な緊張の高まりがリスク回避の金買いにつながったことが主因です。

外国為替市場での円安・ドル高の進行も、円建て金価格を押し上げています。金は伝統的に「有事の資産」として知られており、中東紛争、ウクライナ戦争、そして今回のベネズエラ攻撃といった地政学リスクの高まりは、金需要を押し上げる要因となります。

今後、ベネズエラ情勢が安定化しない限り、金高は持続すると見られています。一部の専門家は、2026年中に金価格が1グラム2万5,000円を超える可能性も指摘しています。

注意点と今後の展望

複数のリスクシナリオ

投資家が注意すべきリスクシナリオは以下の通りです。

第一に、ベネズエラ情勢のさらなる悪化です。中南米全体に軍事衝突が拡大すれば、原油価格の急騰、物流の混乱、グローバルサプライチェーンへの影響が懸念されます。

第二に、トランプ関税の拡大です。日米通商交渉が難航すれば、自動車など日本の主力輸出品に高関税がかけられるリスクがあります。

第三に、米国経済の減速です。約79%のエコノミストが「米追加関税措置は米GDPを押し下げる」と予想しており、米国経済が減速すれば日本の輸出企業に打撃となります。

日本経済への影響

ニッセイ基礎研究所などの試算では、日本の実質GDP成長率は2025年度が0.5%、2026年度が0.7%と予想されています。トランプ関税により輸出が下押し圧力を受けることが主な要因です。

一方で、日銀さくらリポートが示すように、国内景気は「緩やかに回復」基調を維持しており、AI関連需要の拡大、賃上げの継続といった明るい材料もあります。

投資戦略のポイント

このような不確実性の高い環境では、以下のような投資戦略が有効と考えられます。

第一に、分散投資の徹底です。株式、債券、金、不動産など複数の資産クラスに分散することで、特定のリスクへの集中を避けることができます。

第二に、ディフェンシブ銘柄への注目です。生活必需品、医薬品、公共事業など、景気変動の影響を受けにくいセクターは相対的に安定性が高いと言えます。

第三に、金などの安全資産の保有です。地政学リスクが高まる環境では、ポートフォリオの一部に金を組み入れることでリスクヘッジが可能です。

まとめ

2026年の日本株式市場は、米国のベネズエラ攻撃という予想外の地政学リスクで波乱の幕開けとなりました。2025年末に史上初の「5万円台の年越し」を達成した日経平均株価ですが、今後は上値の重い展開が予想されます。

今週発表された主要経済指標では、米国の製造業が低迷する一方でサービス業は堅調、日本国内も緩やかな回復基調を維持しているという、まだら模様の経済状況が浮き彫りとなりました。

円安と金高は地政学リスクの高まりを背景に持続する可能性が高く、投資家はリスク管理を徹底する必要があります。ベネズエラ情勢の推移、トランプ関税の動向、米国経済の減速リスクなど、複数のリスク要因を注視しながら、慎重な投資判断が求められる局面となっています。

参考資料:

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