Switch2販売1700万台突破も、メモリー高騰が収益に影
はじめに
任天堂が発表した2025年4〜12月期の連結決算は、純利益が前年同期から5割増と大きく伸びました。2025年6月に発売したゲーム機「Nintendo Switch 2」の世界販売は1700万台を超え、任天堂史上最速のペースで普及が進んでいます。
しかし、好調な販売とは裏腹に、新たな懸念材料が浮上しています。AI需要の急増を背景としたメモリー価格の高騰です。決算会見で古川俊太郎社長は「高騰が長期化すれば来期以降の収益を圧迫する可能性がある」と言及し、市場の注目を集めています。
本記事では、Switch 2の販売状況と業績への貢献、そしてメモリー高騰がゲーム業界に与える影響について解説します。
Switch 2の販売状況と特徴
任天堂史上最速の販売ペース
Nintendo Switch 2は2025年6月5日に発売され、発売後わずか4日間で世界累計販売台数350万台を突破しました。これは任天堂のゲーム専用機として過去最高の初動記録です。その後も販売は堅調に推移し、9月末までの約4か月間で1000万台を超え、12月末時点では1737万台に達しています。
ソフトウェアも3793万本を販売しており、ハード1台あたり約2.2本のソフトが購入されている計算になります。ローンチタイトルとして発売された「マリオカート ワールド」などの人気作品が、ハードの普及を後押ししています。
進化したスペックと新機能
Switch 2は初代Switchから大幅な性能向上を実現しています。ディスプレイは7.9インチの大型液晶を搭載し、携帯モードでも1080p(フルHD)解像度と120Hzリフレッシュレートに対応しています。ドック接続時には4K解像度と60Hzリフレッシュレートでの出力が可能で、HDRもサポートしています。
NVIDIA製カスタムプロセッサーとDLSS(Deep Learning Super Sampling)技術により、AIが低解像度の映像を高解像度に変換することで、処理負荷を抑えながら美しいグラフィックを実現しています。ストレージは256GBに増量され、バッテリー容量も5220mAhと初代の4310mAhから20%以上増加しました。
新型Joy-Con 2コントローラーはマグネット式で着脱可能となり、マウスとしても使用できる新機能を搭載しています。また、ノイズキャンセリング機能付きデジタルマイクや、ソフト1本で他のSwitch 2と画面を共有できる「おすそわけ通信」機能なども追加されています。
好調な業績と今後の見通し
純利益5割増の決算
2025年4〜12月期の決算では、ゲーム専用機ビジネスの売上高は前年同期比119.7%増の1兆661億円を記録しました。売上総利益も前年同期比25.3%増の3984億円となっています。
Switch 2は初代Switchと比べて単価が高いことも売上増加に寄与しています。日本語・国内専用版の希望小売価格は49,980円(税込)、多言語対応版は69,980円(税込)と、初代Switchの発売時価格(29,980円)から大幅に上昇しています。
上方修正された通期予想
好調な販売を受けて、任天堂は通期業績予想を上方修正しました。売上高は2兆2500億円、営業利益は3700億円、経常利益は4600億円、当期純利益は3500億円を見込んでいます。
ユーザーの8割超が初代Switchからの移行とみられており、既存の任天堂ファン層がしっかりとSwitch 2に移行していることがうかがえます。今後は新規ユーザーの獲得と、Switch 2専用ソフトの投入が焦点となります。
メモリー高騰という新たなリスク
AI需要が引き起こすDRAM不足
Switch 2の好調な業績に影を落としているのが、メモリー(DRAM)価格の急騰です。2025年10月から徐々に上昇したメモリー価格は、11月末から急激に高騰し、わずか3か月で価格が3〜4倍に跳ね上がりました。
台湾の市場調査会社トレンドフォースによると、16ギガビットDDR5の平均スポット価格は、9月20日時点では6.84ドルだったものが、12月1日には27.2ドルまで上昇しています。主要DRAMメーカーの在庫水準も、2024年末の13〜17週間から、2025年10月には2〜4週間へと大きく減少しました。
AI半導体への生産シフト
高騰の主因は、Samsung、SK hynix、Micronといった大手メーカーがAI向けチップの生産を優先しているためです。OpenAIの「スターゲート」計画に代表されるAIインフラへの巨額投資により、AIデータセンター向けのHBM(High Bandwidth Memory)など高付加価値メモリの需要が爆発的に増えています。
報道によると、SamsungとSK HynixはOpenAIと月間最大90万枚のDRAMウェハを供給する契約を結んだとされ、これは世界のDRAM生産量の約4割に相当します。結果として、PC用やゲーム機用の一般的なDRAMは品薄状態が続いています。
ゲーム機への影響は必至
トレンドフォースの予測では、ゲーム機は最大10%の値上げが予想されています。現時点で大きな影響を受けているのはPCですが、メモリーを使用するスマートフォンやタブレット、そしてゲーム機への波及は避けられないとみられています。
米国格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、メモリーの供給逼迫は2026年まで続く可能性が高く、正常化は2027〜2028年ごろと予測しています。AI需要によるラインの切り替えから生産までのサイクルは約3年かかるため、この状況は長期化する公算が大きいとされています。
今後の展望と課題
短期的には好調維持も
Switch 2は任天堂史上最速のペースで普及が進んでおり、短期的には好調な販売が続く見通しです。初代Switchからの買い替え需要に加え、4K対応やDLSS技術など大幅な性能向上により、新規ユーザーの獲得も期待されています。
ソフトウェア面でも、「マリオカート ワールド」に続くSwitch 2専用タイトルの投入が予定されており、プラットフォームとしての魅力は着実に高まっています。
中長期的なコスト管理が鍵
一方で、メモリー価格の高騰が長期化すれば、製造コストの上昇は避けられません。任天堂は従来、価格競争力を武器に幅広い層のユーザーを獲得してきましたが、コスト上昇を価格に転嫁すれば販売に影響が出る可能性があります。
古川社長が言及したように、来期以降の収益への影響をいかに最小化するかが経営課題となります。部品の調達先多様化や、長期契約による価格安定化など、サプライチェーン管理の巧拙が問われる局面です。
まとめ
Nintendo Switch 2は世界販売1700万台を突破し、任天堂に大きな利益をもたらしています。性能の大幅な向上と新機能により、ユーザーからの評価も高く、短期的には好調な販売が続く見通しです。
しかし、AI需要を背景としたメモリー価格の高騰は、ゲーム業界全体に影響を与える構造的な問題です。供給逼迫は2026年まで続く可能性が高く、任天堂にとっても中長期的なコスト管理が重要な経営課題となっています。好調な業績の裏に潜むリスクに、今後も注視が必要です。
参考資料:
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