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by nicoxz

SaaS株急落、AIエージェントが業務ソフトを脅かす構図とは

by nicoxz
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はじめに

2026年2月3日、米国のSaaS(Software as a Service)関連株が急落しました。中小企業向け会計ソフトのIntuitが一時11%安、顧客情報管理のSalesforceも大幅下落となり、法律や金融の専門ソフトウェア企業にまで売りが広がりました。

この急落のきっかけとなったのは、AI開発新興企業Anthropicの新技術公開です。幅広いソフトウェアがAIに代替される「SaaSの死」に対し、株式市場が警戒を強めています。本記事では、SaaS株急落の背景と、AIエージェントが業務ソフトウェア市場に与える影響を解説します。

SaaS株急落の実態

決算好調でも株価下落の異常事態

2026年1月29日、ServiceNowは四半期決算で市場予想を上回る好業績を発表しました。売上高は前年比20.5%増、サブスクリプション収益は21%増、利益もコンセンサスを上回りました。CEOは「勝利」と評したにもかかわらず、株価は10%近く急落したのです。

同日は、コロナショック以来最悪のソフトウェア株売りの日となりました。iShares Expanded Tech-Software ETFはピークから20%超下落し、テクニカル的な弱気相場入り。50日移動平均線が200日移動平均線を下回る「デスクロス」も形成されました。

主要銘柄の下落状況

主要SaaS銘柄の下落は広範囲に及びました。Salesforceは7.1%安、Intuitは7.8%安、ドイツのSAPは16%超の急落。S&P 500 Software and Services Indexは8.7%下落し、9カ月ぶりの安値を記録しました。Microsoftも1日で時価総額3600億ドル(約56兆円)を失いました。

HubSpot、ServiceTitan、Atlassian、Klaviyo、DocuSign、Asana、PagerDuty、Workday、Adobeなど、エンタープライズソフトウェアの主要銘柄が軒並み52週安値を更新しています。

Anthropicの新技術が引き金に

Claude Coworkの衝撃

Anthropicは2026年1月12日、AIエージェント「Claude Cowork」を発表しました。macOS上でファイル管理やドキュメント処理タスクを自動化する汎用AIエージェントです。従来のチャットインターフェースを超え、指定されたローカルディレクトリ内で複数ステップのワークフローを自律的に実行できます。

1月30日には、カスタムプラグイン機能も追加されました。CRMプラットフォームからリード情報を取得するなど、外部アプリケーションとの連携が可能になり、営業担当者がAIに定型業務を任せる道が開けました。特定タスクに最適化された「サブエージェント」も作成でき、業務プロセスの自動化範囲が大幅に拡大しています。

エンタープライズでの採用拡大

ServiceNowはClaudeを「ServiceNow Build Agent」のデフォルトモデルとして採用しました。2月3日にはAppleがXcode 26.3を発表し、AnthropicのClaude AgentとOpenAIのCodexを開発環境に直接統合。AIエージェントによるアプリ開発の自動化が、メインストリームに浸透しつつあります。

「SaaSの死」は本当か

AI予算シフトの現実

市場が警戒する「SaaSの死」の背景には、企業のIT予算がAIにシフトしている現実があります。Metaは今年AIインフラに最大1350億ドル、Microsoftは年間750億ドルを投資予定。ハイパースケーラー全体では、2026年のAIインフラ投資は4700億ドル超に達する見込みです。

これらのAI投資予算の多くは、従来のエンタープライズソフトウェア予算から振り向けられています。LPL Financialのチーフテクニカルストラテジスト、アダム・ターンクイスト氏は「市場はソフトウェアがAIに破壊されるという最悪シナリオを織り込んでいる」と分析しています。

シート数削減の「静かな殺し手」

AIが複数の人間の仕事をこなせるようになれば、必要な人員は減ります。人員が減れば、SaaSのシートライセンス数も減少します。これが「静かな殺し手」としてSaaS企業の成長を脅かしています。

Gartnerによると、2026年末までにIT運用管理ベンダーの90%以上がAI機能を製品に組み込む見通しです。また、2026年には75%の企業が合成データ生成に生成AIを活用すると予測されており、従来のデータ駆動型SaaSモデルにも影響が及ぶ可能性があります。

反論:「SaaSの死」は誇張されている

エンタープライズシステムの代替は容易でない

一方で、「SaaSの死」という見方は誇張だとの指摘もあります。SaaStrの分析によれば、「誰もReplitでホームメイドのCRMを作ってSalesforceを置き換えようとはしていない」のが現実です。

AIエージェントはコード生成に優れていますが、エンタープライズの基幹システム(Systems of Record)を置き換えるには程遠いという見方です。v1のプロトタイプを作ることは全工程の2%程度に過ぎず、エンタープライズ品質のソフトウェアには長年の改良とエコシステムの構築が必要です。

真の原因は市場の再評価

SaaStrは「2026年のSaaSクラッシュは、AIがSaaSを殺すからではなく、2021年から始まった成長鈍化を市場がようやく織り込んでいるからだ」と分析しています。CIOはベンダー数を増やすのではなく、統合・削減を進めています。「ベスト・オブ・ブリード」の時代は終わり、企業はプラットフォームへの集約を求めているのです。

注意点と今後の展望

SaaS企業の対応策

SaaS企業もAI機能の強化を急いでいます。ServiceNowは2025年にサイバーセキュリティ企業Armisを77.5億ドルで買収、Salesforceはデータ管理プラットフォームInformaticaを80億ドルで買収しました。

しかし、業界調査によると、約70%のソフトウェアプロバイダーがAI機能の提供が収益性を圧迫していると認めています。GPU計算と大規模推論のコストは依然として高く、AI投資が短期的に利益を生むわけではありません。

60%が陳腐化する可能性

業界予測では、AI非対応のSaaSプラットフォームの60%が2028年までに陳腐化するとされています。AIエージェントへの移行は、データプライバシーや雇用への影響といった倫理的課題も伴います。しかし、対応しないコストはさらに高く、SaaS企業は転換点に立っています。

まとめ

SaaS株の急落は、Anthropicの新技術公開をきっかけに「SaaSの死」への警戒が強まった結果です。AIエージェントによる業務自動化の進展、企業のAI予算シフト、シートライセンスモデルへの構造的脅威が、市場心理を冷やしています。

一方で、エンタープライズの基幹システムがすぐにAIに置き換わるわけではなく、「SaaSの死」は誇張された面もあります。投資家にとっては、AI時代に適応できるSaaS企業を見極めることが重要です。プラットフォーム型への転換、AI機能の内製化、顧客との深い統合を進める企業が、淘汰の波を乗り越える可能性が高いでしょう。

参考資料:

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