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by nicoxz

双日が豪州産レアアース輸入拡大、脱中国依存の最前線

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はじめに

ハイテク産業や防衛に欠かせないレアアース(希土類)の調達先多角化が大きく前進しています。双日は2027年半ばまでに、オーストラリア産の中重希土類の輸入品目を現在の2品目から最大6品目に拡大する計画を発表しました。2026年4月には新たに「サマリウム」の輸入を開始します。

中重希土類は電気自動車(EV)のモーターや防衛装備に不可欠な永久磁石の原材料ですが、その生産は中国がほぼ独占しています。中国が2025年4月に輸出管理を強化したことで、供給リスクはさらに高まりました。

本記事では、双日の取り組みを軸に、レアアース供給網の多角化に向けた日本と世界の動向を解説します。

双日の豪州レアアース戦略

ライナス社との連携強化

双日のレアアース戦略の中核にあるのが、オーストラリアの資源大手ライナス・レアアース社との提携です。双日は前身企業の時代から1960年代よりレアアースを取り扱っており、2011年にはライナス社の軽希土類製品について日本市場向け独占販売契約を締結しました。

さらに2023年3月、双日はライナス社から重希土類のジスプロシウムとテルビウムの供給を確保する契約を締結。2025年10月には、これら2品目の日本への輸入を開始しました。これは中国以外の供給源から重希土類を商業ベースで日本に輸入した画期的な事例です。

輸入品目を最大6品目に拡大

双日は2026年4月にサマリウムの輸入を新たに開始します。サマリウムはサマリウムコバルト磁石の原材料であり、高温環境でも性能が安定することから、航空宇宙分野や防衛装備品に広く使用されています。

2027年半ばまでには最大6品目にまで輸入品目を拡大する計画です。ジスプロシウム、テルビウムに加え、サマリウムを含む中重希土類の幅広い品目をカバーすることで、日本の国内需要の約3割を豪州産で賄うことを目指しています。

ライナス社の生産体制

ライナス社は西オーストラリア州カルグーリー近郊のマウントウェルド鉱山で鉱石を採掘し、マレーシアのクアンタンにある精錬工場(LAMP)で加工しています。この精錬工場は中国国外で最大のレアアース生産施設です。

2025年半ばには重希土類のジスプロシウム酸化物とテルビウム酸化物の商業生産を開始しました。重希土類の分離能力は年間最大1,500トンに達し、中国以外で初めて重希土類を商業生産する企業となりました。

中国の輸出規制と供給リスク

強化される中国の輸出管理

中国政府は2025年4月4日、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種の中・重希土類について輸出許可制を導入しました。これは米中対立の激化を背景に、戦略的資源を外交カードとして活用する姿勢の表れです。

世界のレアアース精製シェアにおいて中国は約92%を占めています。採掘段階では中国以外の国も生産していますが、最終的な精製工程では依然として中国への依存度が極めて高い状態にあります。

2010年の教訓

日本にとってレアアースの供給リスクは過去の教訓に基づく現実的な脅威です。2010年、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化に伴い、中国が日本向けのレアアース輸出を事実上制限した経験があります。当時の混乱は、特定国への資源依存がもたらすリスクを日本に強く認識させる契機となりました。

EVと防衛を支える永久磁石の重要性

ネオジム磁石と重希土類

レアアースの中でも特に重要なのが、ネオジム磁石(ネオジム鉄ボロン磁石)に使われる希土類元素です。ネオジム磁石は最も強力な永久磁石であり、EVの駆動モーター、風力発電機、ロボット、防衛装備品など幅広い分野で使用されています。

EVの駆動モーターのように内部温度が100℃を超える環境で使用する場合、磁石の耐熱性を高めるためにジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類の添加が必要です。これらの元素は産出量が極めて少なく、中国への依存度が特に高い品目です。

代替技術の開発も進行中

中国依存の低減に向けては、供給網の多角化と並行して代替技術の開発も進んでいます。東芝はサマリウム鉄系磁石で少ないレアアース量でネオジム磁石と同等の磁力を実現する技術を開発しました。また、デンソーは鉄とニッケルのみで構成するレアアース不要の磁石を5〜10年内に実用化する方針を示しています。

ただし、代替技術が実用化されるまでには時間を要するため、当面は既存のレアアースの安定調達が最重要課題であることに変わりはありません。

注意点・展望

多角化の課題

レアアース供給網の多角化は一朝一夕には実現しません。鉱山開発から精製技術の確立、商業生産の安定化まで、長い時間と多額の投資が必要です。ライナス社のマレーシア工場も、稼働開始から安定生産に至るまでに数年を要しました。

また、コスト面での課題もあります。中国の大規模な生産体制と比較すると、オーストラリア産やフランス産のレアアースは価格競争力で劣る可能性があります。経済合理性だけでなく、経済安全保障の観点から供給源の分散を進める必要があります。

フランスとの共同事業にも注目

双日やライナス社の取り組みに加え、フランスのカレマグ社によるレアアース精錬事業も動き出しています。経済産業省は2024年5月にカレマグ社への資金拠出を決定しており、欧州でもレアアース精錬能力の構築が進んでいます。日本にとっては、豪州ルートに加えて欧州ルートという新たな選択肢が生まれることになります。

まとめ

双日によるオーストラリア産中重希土類の輸入拡大は、レアアース供給網における中国一極集中を打破する重要な一歩です。2027年半ばまでに最大6品目に拡大する計画は、日本のハイテク産業や防衛産業の安定に大きく寄与するでしょう。

しかし、中国が世界のレアアース精製の約92%を握る現状は容易には変わりません。供給源の多角化、代替技術の開発、そして備蓄体制の整備を総合的に進めていくことが、日本の経済安全保障にとって不可欠です。

参考資料:

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