高市内閣支持率と自民党支持率の乖離、その背景を読む
はじめに
日本経済新聞社とテレビ東京が2026年1月23〜25日に実施した世論調査で、高市早苗内閣の支持率が自民党の政党支持率を大きく上回る傾向が続いています。内閣支持率は67%を記録する一方、自民党の政党支持率は42%にとどまりました。
この25ポイントもの乖離は、有権者が高市首相個人と自民党という政党組織を明確に区別して評価していることを示しています。衆院選を目前に控え、この「高市人気」を自民党が選挙に活かせるかどうかが注目されています。
本記事では、高市内閣の高支持率の背景、自民党支持率との乖離の要因、そして衆院選への影響について詳しく解説します。
高市内閣支持率の推移
発足以来の高水準
2025年10月21日に発足した高市内閣は、発足以来一貫して高い支持率を維持しています。各社の世論調査では60〜70%台という高水準が続いており、JNN世論調査では78.1%、時事通信調査では61.0%を記録しました。
グリーン・シップの日次世論調査「世論レーダー」では、12月末から1月初旬にかけて73.6%→76.2%→77.2%→77.7%と一貫して上昇基調にあり、発足以来の最高水準を更新しました。
若年層からの圧倒的支持
特筆すべきは若年層からの支持の高さです。FNNの12月調査によると、10〜20代男性で89.4%、10〜20代女性で95.5%、30代男性で90.0%と、若者層に圧倒的な支持を誇っています。
この数字は石破前内閣と比較すると劇的な改善です。若年層の政治離れが指摘される中、高市首相は若い世代の心をつかむことに成功しています。
支持される理由
時事通信の調査では、内閣を支持する理由として「リーダーシップがある」が28.8%で最多となりました。「印象が良い」20.8%、「首相を信頼する」19.9%と続いています。
若者層への人気の理由としては、高市首相の明るさ、わかりやすい言葉、前向きなメッセージが挙げられています。また、「年収の壁」と呼ばれる所得税控除額の引き上げなど、現役世代向けの政策実現も高支持率を支えているとみられます。
自民党支持率との乖離
約25〜47ポイントの差
高市内閣の支持率と自民党の政党支持率には大きな乖離があります。1月調査では内閣支持率67%に対し、自民党支持率は42%でした。一部の調査では、この差が47ポイントにも達するケースがあります。
時事通信調査では、自民党の政党支持率は22.5%にとどまっており、内閣支持率61.0%との差は約38ポイントに達しています。
乖離の意味するもの
この乖離は、有権者が高市首相個人のリーダーシップや政策に期待を寄せる一方で、自民党という政党組織への信頼回復には至っていないことを示しています。
いわゆる「高市内閣は支持するが、自民党は支持しない」という層が一定数存在しているのです。無党派層の多くが高市内閣を支持していると考えられ、この層が衆院選でどのような投票行動をとるかが選挙結果を左右する可能性があります。
過去の衆院選との比較
2024年10月の衆院選直前、石破内閣の支持率は51%、自民党支持率は41%でした。今回、高市内閣は石破内閣より16ポイント以上高い支持率を得ていますが、自民党支持率は同程度にとどまっています。
これは、高市首相個人への期待が自民党全体への支持に波及していないことを示唆しています。
政党間競争の構図変化
新党「中道改革連合」の結成
2026年1月、立憲民主党と公明党が合流し、新党「中道改革連合」(略称・中道)が結成されました。野田佳彦元首相と斉藤鉄夫公明党代表が共同代表を務め、衆院議員160人超の規模でスタートしました。
公明党の斉藤代表は「保守化、右傾化する高市政権への対立軸を作る」として中道勢力の結束を掲げています。
各党の支持率動向
電話調査による政党支持率では、新党「中道改革連合」が12.2%でスタート。これは前月の立憲(7.9%)と公明(5.1%)の単純合算とほぼ同等の数字です。
衆院選の小選挙区投票先調査では、自民党22.6%、中道改革連合8.9%、国民民主党6.9%、日本維新の会4.8%、参政党4.5%という結果になっています。
国民民主党の存在感
国民民主党は与党と新党「中道改革連合」双方に距離を置く方針です。「年収の壁」引き上げで自民党と合意したことが追い風となり、支持率を伸ばしています。
多党化が進む中、選挙後にどの政党が政権を担っても野党の協力が必要となる可能性が高く、国民民主党は「フリーハンド」を確保する戦略をとっています。
高市首相の政策とリーダーシップ
「サナエノミクス」の特徴
高市政権の経済政策は「サナエノミクス」と呼ばれ、大胆な財政支出拡大と金融緩和の組み合わせを特徴としています。短期的な物価高対策として、ガソリン税の暫定税率廃止、医療機関や介護施設への補助金、電気・ガス料金支援などを打ち出しています。
スローガンは「日本列島を、強く豊かに。」で、経済・安全保障・社会制度を一体で捉える「総合的な国力の再構築」が政策の中心に据えられています。
政策の「ドライブ感」
自民党内からは「思っていた以上にいい総理。もう少し頑なな人だと思っていたが、柔軟だ」との評価が聞かれます。
高市政権の特徴として、「政治が動いている」という政策の”ドライブ感”が指摘されています。岸田元首相が「静」、石破前首相が「受」だったのに対し、高市首相は「動」であり、それが国民の支持を集める要因となっています。
右派イデオロギーと左派的経済運営
高市政権の最大の特徴は、安全保障では右派的なスタンスをとりつつ、経済運営では積極財政という左派的な政策を採用している点です。本来は相容れない二つの軸を大胆に同居させた点が注目されています。
衆院選への影響と展望
自民党にとっての課題
高市首相個人への高い支持が、自民党全体への支持に波及していないことは、自民党にとって課題です。衆院選では比例区の得票に政党支持率が直接影響するため、「高市人気」を党全体の支持に転換できるかが勝敗を分ける可能性があります。
小選挙区では候補者個人の魅力や地元での活動が重要ですが、無党派層の動向次第では接戦区での勝敗が変わりうる状況です。
野党側の戦略
新党「中道改革連合」は高市政権との対立軸を明確にし、中道票の結集を狙っています。ただし、世論調査では新党結成について「良くなかったと思う」が47.7%と、「良かったと思う」22.0%を上回っており、国民の評価は分かれています。
国民民主党はキャスティングボートを握る位置を狙い、どの政権とも是々非々で対応する姿勢を示しています。
投票率と無党派層
高市首相への高い支持が投票行動にどう結びつくかが焦点です。「高市内閣は支持するが自民党は支持しない」という層が、実際に投票所に足を運ぶか、そして誰に投票するかが選挙結果を大きく左右する可能性があります。
若年層の投票率向上も注目点です。高市首相への若者の支持が高い一方、若年層の投票率は伝統的に低い傾向にあります。
まとめ
高市内閣の支持率67%と自民党支持率42%という乖離は、有権者が首相個人と政党を明確に区別して評価していることを示しています。高市首相のリーダーシップ、わかりやすいメッセージ、政策の「ドライブ感」が若年層を含む幅広い層から支持を集めています。
一方、自民党への信頼は完全には回復しておらず、「高市人気」が党全体に波及していない状況です。衆院選を前に、この乖離がどのような選挙結果をもたらすかが注目されます。
新党「中道改革連合」の結成や国民民主党の動向など、野党側も新たな構図で選挙に臨みます。多党化が進む中、有権者の選択がこれまで以上に重要な意味を持つ選挙となりそうです。
参考資料:
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