2026年衆院選で変わるSNS選挙戦略の潮流を読む
はじめに
2026年2月8日に投開票を迎える第51回衆議院議員総選挙では、SNS戦略が選挙の行方を左右する重要な要素となっています。
自民党候補が高市早苗首相の名前を前面に出して発信する場面が目立つ一方、2025年の参議院選挙で躍進した参政党も存在感を示しています。しかし、SNS上では参政党よりも「高市」の関連ワードが広がっており、2025年の参院選から風向きが変化している様子がうかがえます。
本記事では、宮城2区を具体例として取り上げながら、2026年衆院選におけるSNS選挙戦略の潮流と、高市内閣の高支持率が選挙戦に与える影響を詳しく解説します。
高市内閣の高支持率と選挙戦略
内閣支持率70%台を維持
高市早苗内閣は2025年10月の発足以来、一貫して高い支持率を維持しています。2025年12月の日本経済新聞社の世論調査では支持率75%を記録し、2026年1月第1週時点でも77.7%という高水準を保っています。
これは1年前の石破茂内閣と比較してほぼ2倍の数字であり、特に20代から40代の若い世代からの支持が厚いのが特徴です。岸田文雄・石破茂の両内閣で離れていった層を引き戻すことに成功したと分析されています。
「高市人気」に乗る自民党候補
今回の衆院選では、自民党候補が選挙活動の中で高市首相の名前に言及する場面が目立っています。高い内閣支持率を追い風にしようという戦略です。
宮城2区に立候補した自民党新人の渡辺勝幸氏も、選挙カーで仙台市泉区の住宅地を回りながら「高市首相とともに日本をしっかり立て直していく」と声を上げています。選挙公約にはトランプ米大統領と握手する高市首相の写真が多用されるなど、党を挙げて「高市人気」を選挙戦に活かす姿勢が鮮明です。
党支持率との乖離
一方で、自民党の政党支持率は30%前後にとどまっており、内閣の人気が与党の支持率に直結していない状況も見られます。
高市首相は勝敗ラインを「与党で過半数」と設定し、届かなかった場合は「即刻、退陣することになる」と進退を明言しました。就任からわずか3カ月での解散総選挙は、高い支持率を背景に政治基盤の強化を図る賭けといえます。
参政党のSNS戦略と2025年参院選の躍進
参院選で14議席を獲得
2025年の参議院選挙で、参政党は「日本人ファースト」を掲げて選挙区7、比例7の計14議席を獲得する大躍進を遂げました。改選前の1議席から一気に勢力を拡大し、単独で法案を提出できる規模にまで成長しています。
東京、埼玉、神奈川、愛知、大阪といった大選挙区に加え、既成政党の「指定席」とされていた福岡や茨城でも議席を獲得。比例では立憲民主党、国民民主党と並ぶ7議席を得ています。
YouTube・TikTokの戦略的活用
参政党躍進の原動力となったのが、動画系SNSの戦略的な活用です。
YouTubeでは選挙期間中だけで登録者数を約9万7000人増やしました。特に60秒の短尺動画「YouTubeショート」の活用が効果的で、TikTokに親しんだ若年層やビジネス層への訴求に成功しています。TikTokでも他党を圧倒する再生数を記録しました。
注目すべきは、テレビや新聞報道の「切り抜き動画」が多くの再生数を獲得した点です。参政党関連の切り抜き動画は再生数が1億回を超えるなど、オンラインでの影響力が際立っていました。
組織づくりとSNSの融合
参政党の神谷宗幣代表は「私が一番やっているのは組織作り」と語っています。同党は最初にSNSでの情報発信で党員を獲得し、その党員から集めた党費を地上戦に回すという手法を採用しました。
これは欧米では一般的な「近代政党」の運営手法であり、「風が吹いたときに乗るための組織の足腰が強い」と評価されています。
2026年衆院選における変化
SNSでの「高市」ワードの広がり
興味深いのは、2025年の参院選で大きな存在感を示した参政党に対し、2026年の衆院選ではSNS上で「高市」の関連ワードがより広く拡散している点です。
高市首相の政治スタイルやストレートな発言は、SNSとの親和性が高いと考えられます。国民民主党や参政党の支持者の間でも高市内閣を支持する層が存在することが確認されており、従来の政党支持の枠を超えた「高市人気」が形成されています。
各党のSNS戦略の差
各党の小選挙区候補のSNSアカウント所有率を分析すると、FacebookやX(旧Twitter)は頭打ちの傾向にある一方、Instagramは前回より17%増加し、活用が伸びています。
特に国民民主党、参政党、れいわ新選組はショート動画とライブ配信の視聴が好調で、これが躍進の原動力になった可能性があります。一方、自民党は長尺の動画CMに重きを置くなど、保守的なSNS戦略にとどまったとの指摘もあります。
宮城2区の構図
宮城2区には5人が立候補しています。自民党新人の渡辺勝幸氏(50歳)、参政党新人の和田政宗氏(51歳、元自民党参院議員)、中道改革連合前職の鎌田さゆり氏(61歳)、日本維新の会元職の早坂敦氏(54歳)、国民民主党新人の佐藤理々香氏(25歳)という顔ぶれです。
注目されるのは、元自民党参院議員の和田政宗氏が参政党から出馬している点です。2021年、2024年と自民党が敗れてきた宮城2区で、自民党と参政党がどのように支持を分け合うかが焦点となっています。
SNS選挙の光と影
投票率の向上
2025年の参院選では投票率が58.51%と前回を上回り、期日前投票も過去最高を記録しました。SNSを通じた政治への関心の高まりが、投票行動に結びついている可能性があります。
ネット選挙は数%の得票を得る「補助的な手段」から、数十%の支持を積み上げる「中心的な戦略」へと進化しています。
世代間の情報格差
一方で、TV・新聞など従来のメディアから情報を得る高齢者層と、SNSを中心としたインターネットメディアから情報を得る若年層の間で、支持政党に違いが生じる傾向も見られます。
また、SNS上での短いフレーズやキャッチコピーが政策議論を単純化してしまう懸念もあります。「日本人ファースト」「減税・手取りアップ」といったメッセージは有権者の関心を瞬時に捉える一方で、複雑な政策課題の本質が見えにくくなるリスクも指摘されています。
今後の展望と注意点
選挙予測
共同通信の終盤情勢調査では、自民党が単独過半数の勢いとされています。一方、週刊文春の予測では「参政党が議席7倍増」という分析も出ており、小選挙区で160人を擁立する参政党は30議席の獲得を目指しています。
高市首相の高い支持率が自民党全体の議席にどこまで波及するか、そして参政党がSNS戦略を活かして勢力を拡大できるかが、今回の選挙の焦点といえるでしょう。
有権者に求められる視点
SNS時代の選挙では、印象的なフレーズや切り抜き動画だけでなく、各候補者・各党の政策を比較検討することが重要です。
2月8日の投開票に向けて、多様な情報源から政策を吟味し、自らの判断で一票を投じることが、民主主義を支える有権者の役割といえます。
まとめ
2026年衆院選では、高市早苗首相の高い内閣支持率を活かした自民党と、2025年参院選で躍進した参政党のSNS戦略が注目されています。
SNS上では「高市」関連ワードが参政党よりも広がりを見せており、宮城県知事選から風向きが変化したとの見方もあります。宮城2区では自民党新人と参政党新人(元自民党参院議員)が競合する構図となっており、保守票の行方が焦点です。
投票率の向上というプラスの効果がある一方、政策議論の単純化という課題も指摘されるSNS選挙。有権者には、多様な情報源から各党・各候補者の政策を比較検討する姿勢が求められています。
参考資料:
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