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by nicoxz

高市相場はまだ序章か、海外マネーの条件を読む

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はじめに

2026年2月8日に投開票された衆議院選挙で、自民党が戦後最多となる316議席を獲得し圧勝しました。翌9日の東京株式市場では、高市早苗政権の政策実行力への期待が高まり、日経平均株価は前日比2,110円高の5万6,363円で取引を終え、終値として初めて5万6,000円台に到達しました。取引時間中には一時5万7,000円を突破する場面もあり、歴代5位の上げ幅を記録しています。

市場関係者の間では「高市相場はまだ3合目」との見方が広がっています。過去の自民党大勝後には海外投資家が1年以上にわたって買い越す傾向があり、2005〜2007年や2012〜2015年に匹敵する長期株高の入り口になる可能性が指摘されています。本記事では、海外マネーが日本株を本格的に買い増すための条件を整理します。

「高市トレード」とは何か

円安・株高・金利上昇のセット

「高市トレード」とは、高市首相の政策方針を織り込んだ市場の動きを指す言葉です。具体的には、円安・株高・長期金利上昇がセットで進行するパターンを意味します。高市首相が掲げる「責任ある積極財政」は、大規模な財政出動を通じて名目経済成長率を引き上げることを目指しており、企業収益の拡大を通じた株高と、財政拡張に伴う金利上昇が同時に進むと見込まれています。

2025年10月の自民党総裁選で高市氏が選出された直後にも、海外投資家は1週間で1兆586億円の日本株を買い越しており、市場は「高市トレード」を強く意識してきました。今回の衆院選圧勝は、政策の実行力が格段に高まることを意味し、トレードの第2幕が始まったと位置づけられています。

自民大勝後の海外投資家の行動パターン

過去の経験則を振り返ると、自民党が大勝した選挙の後には海外投資家の買い越しが長期化する傾向があります。2005年の郵政解散選挙後には小泉政権下で海外投資家が2007年まで約2年間にわたって買い越しを続け、日経平均は1万8,000円台まで上昇しました。

さらに顕著だったのが2012年末の第2次安倍政権発足後の動きです。「アベノミクス」への期待から海外投資家は2013年に約15兆円を買い越し、この流れは2015年まで3年以上継続しました。逆に、2006年から2012年にかけての短命政権が相次いだ時期には、海外投資家の買い越しは限定的で、日経平均は低迷を続けました。

6万円に向けた条件と課題

政策の実行スピード

海外投資家が最も注目するのは、高市首相が掲げる政策が実際に形になるスピードです。自民党が衆議院で3分の2以上の議席を確保したことで、参議院で否決された法案でも再可決が可能となり、政策の推進力は大幅に強まりました。高市首相は選挙後の記者会見で「速やかに特別国会を召集し、2026年度予算や予算関連法案を一日でも早く成立させる」と明言しています。

野村証券のストラテジストは、2026年の日経平均のメインシナリオとして年末5万5,000円を想定していましたが、衆院選の結果を受けて上振れシナリオの5万9,000円が現実味を帯びてきたと分析しています。野村総研の木内登英氏は「数カ月内に6万円」の可能性にも言及しており、市場の期待は高まっています。

注目される成長分野

海外投資家が日本株に長期的な資金を振り向けるには、具体的な成長ストーリーが不可欠です。高市政権下で注目される投資テーマは主に3つあります。

第一にAI・半導体関連です。高市首相は経済安全保障の観点から半導体産業への投資を重視しており、TSMC熊本工場をはじめとする国内半導体サプライチェーンの強化が進んでいます。

第二に防衛関連です。安全保障関連3文書の前倒し改定を掲げており、防衛費のGDP比2%超への引き上げが見込まれています。3月19日に予定されるトランプ大統領との日米首脳会談では、防衛協力の具体化が議論される見通しです。

第三にエネルギー関連です。原子力発電所の再稼働を推進する方針を明確にしており、エネルギーコストの低減を通じた産業競争力の強化が期待されています。

消費税減税の影響

市場が注視する政策の一つが、飲食料品の消費税率を2年間ゼロにするという公約です。高市首相は「超党派の国民会議でスケジュールや財源を検討し、夏前には中間取りまとめを行いたい」と述べています。消費減税は個人消費の押し上げ効果が期待される一方、財政規律への懸念から債券市場では長期金利の上昇圧力となります。海外投資家は、減税が一時的な財政悪化にとどまるのか、名目GDP成長を通じた税収増で回収可能なのかを見極めようとしています。

注意点・リスク要因

高市相場を楽観一辺倒で捉えるのは危険です。いくつかのリスク要因を押さえておく必要があります。

まず円安の行き過ぎです。2月9日時点で1ドル159円台まで円安が進行しており、160円を超える水準になれば輸入物価の上昇を通じて消費者心理を冷やす可能性があります。日銀の金融政策との整合性も問われることになります。

次に米国との通商リスクです。トランプ大統領は各国に対して関税強化の姿勢を示しており、日本も例外ではありません。3月の日米首脳会談の結果次第では、自動車や半導体をめぐる貿易摩擦が再燃するリスクがあります。

さらに中国リスクも存在します。高市首相の台湾有事に関する国会答弁に中国が反発し、日本への経済的威圧を強めています。対中関係の緊張が長期化すれば、レアアースや電子部品のサプライチェーンに影響を与える可能性があります。

まとめ

自民党の歴史的大勝により、高市政権は極めて強い政策推進力を手にしました。過去の小泉相場やアベノミクス相場との類似点を考えれば、海外投資家の買い越しが長期化する条件は整いつつあります。ただし、円安の行き過ぎや対外リスクなど不確定要素も残っており、「3合目」から頂上に至るには、積極財政の成果が企業収益や実体経済に反映されることが不可欠です。

投資家にとって重要なのは、夏前の消費税議論の中間取りまとめ、3月の日米首脳会談、そして安保関連3文書の改定スケジュールの3つの政策マイルストーンです。これらが着実に進めば、日経平均6万円台も視野に入る展開となるでしょう。

参考資料:

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