高市トレード「四天王」に待った、為替介入で勢い鈍化か
はじめに
高市早苗首相が掲げる積極財政と金融緩和を前提とした投資戦略「高市トレード」の勢いが鈍る可能性が出てきました。
高市トレードの中心軸は、株価指数先物買い・銀行株買い・円売り・国債売りの「四天王」と呼ばれる持ち高形成です。しかし、2026年1月23日から26日にかけて、日米政府が「レートチェック」を実施したとの観測から円相場が急伸。四天王のうち「円売り」ポジションに日米政府が待ったをかけた形となりました。
本記事では、高市トレードの仕組みと背景、そして為替介入観測が戦略に与える影響について詳しく解説します。
高市トレードとは何か
積極財政×金融緩和を前提とした投資戦略
高市トレードとは、2025年10月に高市早苗氏が自民党総裁に就任して以降、金融市場で広がった投資戦略のことです。高市氏が掲げる「責任ある積極財政」と金融緩和姿勢を前提に、株式・為替・債券市場で一斉にポジションを構築する動きを指します。
具体的には、以下の4つの取引が「四天王」と呼ばれています。
- 株価指数先物買い: 積極財政による景気刺激期待から、日経平均先物などを買い
- 銀行株買い: リフレ政策の恩恵を受けやすい金融セクターを買い
- 円売り: 金融緩和継続で円安が進むと見込み、円を売りドルを買い
- 国債売り: 財政出動による国債増発懸念から、国債を売り(金利上昇に賭ける)
アベノミクス2.0への期待
高市トレードの背景には、「アベノミクス2.0」への期待があります。高市氏は安倍元首相の側近であり、本田悦朗氏や若田部昌澄元日銀副総裁といった金融緩和積極派の経済学者との関係が指摘されています。
「サナエノミクス」とも呼ばれるこの経済政策は、財政・金融政策を通じて需要超過の状態を維持し、投資による供給力拡大を促す「高圧経済政策」を志向していると考えられています。
高市トレードの実績
日経平均5万円突破に貢献
高市トレードは、2025年10月の総裁選勝利以降、顕著な成果を上げました。10月6日には日経平均株価が一時4万8150円まで上昇し、同月20日には史上初めて4万9000円台に到達しました。
2026年に入ってからも勢いは継続し、1月16日までの1週間でTOPIXは4.1%上昇。週間の上昇率としては2025年7月以来の大きさとなりました。日経平均は5万円台を突破し、史上最高値を更新し続けています。
円安と金利上昇も進行
一方で、為替市場では円安が進行しました。高市氏が金融緩和を維持するとの見方から、円は売られ、2026年1月には一時1ドル=159円台まで下落しました。
債券市場では、積極財政による国債増発懸念から長期金利が上昇。10年物国債の利回りは2008年以来の高水準である2.1%台後半まで上昇しました。
「円売り」に待ったがかかった
日米レートチェックの衝撃
2026年1月23日、高市トレードの構図に変化が生じました。日米両国の通貨当局が「レートチェック」を実施したとの観測が広がり、円相場が急伸したのです。
円は159円台前半から154円台まで約5円も上昇。四天王のうち「円売り」ポジションを持つ投資家は、大きな含み損を抱えることになりました。
為替介入観測が戦略を揺るがす
日米協調介入への警戒感は、高市トレード全体の前提を揺るがしかねません。高市トレードは「円安が続く」という前提のもとで構築された戦略です。円高に転じれば、輸出企業の業績見通しが悪化し、株価上昇期待も後退します。
実際、26日の東京株式市場では日経平均が前日比961円安と大幅に反落しました。円急伸を受けて、株価指数先物にも売りが広がりました。
高市政権の経済政策と市場の評価
17.7兆円の大型経済対策
高市首相は2025年11月、「行き過ぎた緊縮財政により国力を衰退させることではなく、積極財政により国力を強くすることだ」と述べ、大型経済対策を閣議決定しました。
2025年度補正予算案の一般会計からの支出は17.7兆円、特別会計などを合わせた財政支出は21.3兆円に達します。ガソリン税暫定税率廃止、電気・ガス代補助、103万円の壁引き上げなどが盛り込まれました。
成長投資と財政リスクのバランス
高市政権は、半導体・AI・量子・造船など17戦略分野への官民投資(約8兆円)を通じて潜在成長率の引き上げを目指しています。
ただし、大和総研の分析によると、積極財政を続けた場合、今後10年間で純債務残高対GDP比は20〜50%ポイント程度上昇する可能性があります。「強い経済」の実現と財政健全化の両立は、市場の注目点となっています。
注意点・今後の展望
衆議院選挙が最大の不確定要素
2026年2月に実施される衆議院選挙は、高市トレードの命運を左右する最大の不確定要素です。
高市政権が安定多数を獲得できれば、積極財政路線は継続され、高市トレードも再び勢いを取り戻す可能性があります。一方、政権交代が起これば、高市トレードの「逆回転」が発生するリスクがあります。
円安と物価高のジレンマ
高市トレードが前提とする円安は、物価高対策を最優先する高市政権にとってはジレンマとなります。歯止めのかからない円安は、輸入物価の上昇を通じて家計の負担を増やし、政策効果を阻害しかねません。
政府が円安を容認しない姿勢を明確にした以上、159円台での為替介入への警戒は続くでしょう。高市トレードの「円売り」ポジションは、従来よりもリスクが高まったと言えます。
銀行株と国債のポジションは継続か
四天王のうち、「銀行株買い」と「国債売り」のポジションについては、引き続き有効との見方があります。
積極財政による経済成長期待は銀行セクターの収益改善につながり、国債増発懸念は長期金利の上昇要因として働き続けます。ただし、政治情勢の変化には注意が必要です。
まとめ
高市トレードは、積極財政と金融緩和を前提に、株価指数先物買い・銀行株買い・円売り・国債売りの「四天王」で構成される投資戦略です。2025年10月の高市政権誕生以降、日経平均5万円突破に貢献するなど、顕著な成果を上げてきました。
しかし、2026年1月の日米レートチェック観測により、四天王の一角である「円売り」に待ったがかかりました。為替介入への警戒感が高まる中、高市トレードは戦略の修正を迫られる可能性があります。
今後は2月の衆議院選挙の結果が最大の焦点となります。高市政権の安定度と、日銀の金融政策スタンスを注視しながら、投資判断を行う必要があるでしょう。
参考資料:
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