日経平均5日続落、銀行株急落の背景にある「悪い金利上昇」とは
はじめに
2026年1月21日、日経平均株価は5日続落となり、前日比216円安の5万2774円で取引を終えました。特に注目すべきは、通常であれば金利上昇の恩恵を受けるはずの銀行株や保険株が軒並み売られたことです。
この背景には、グリーンランドを巡る米欧対立による地政学リスクの高まりと、国内長期金利の急騰に伴う「悪い金利上昇」への懸念があります。本記事では、なぜ金利上昇にもかかわらず金融株が売られるのか、そのメカニズムと今後の見通しについて解説します。
「悪い金利上昇」とは何か
通常の金利上昇と銀行株の関係
一般的に、金利上昇は銀行にとってプラス材料とされています。銀行は預金で集めた資金を貸し出すことで利益を得ており、金利が上昇すれば貸出金利と預金金利の差である「利ざや」が拡大し、収益が向上するためです。
実際、日銀の金融正常化が進む中、2025年後半から銀行株は上昇基調にありました。10年国債利回りの上昇に連動して、TOPIX銀行指数も堅調に推移してきた経緯があります。
「悪い金利上昇」のメカニズム
しかし、すべての金利上昇が銀行にとってプラスとは限りません。「悪い金利上昇」とは、景気拡大や金融引き締めによる健全な金利上昇ではなく、財政リスクや地政学リスクへの懸念から投資家が国債を売却することで発生する金利上昇を指します。
このケースでは、金利上昇のスピードが急激であることが多く、銀行が保有する大量の国債に含み損が発生します。日本の銀行は伝統的に多額の日本国債を保有しているため、金利が急上昇すれば債券価格は下落し、バランスシートが毀損されるリスクがあります。
国内金融機関の含み損が拡大
日銀の含み損は過去最大に
日銀が発表した2025年9月中間決算によると、保有する国債の含み損は9月末時点で32兆8258億円に達し、過去最大を更新しました。これは3月末の28兆6246億円から約4兆円増加した計算になります。
日銀が金融正常化に向けて国債買い入れを減額する中、長期金利の上昇で保有国債の評価額が下落したことが主因です。さらに、2025年1月に政策金利を0.5%に引き上げたことで、当座預金への利払い負担も増加し、比較可能な2008年10月以降で初めて「逆ざや」が発生しました。
地方銀行も含み損が倍増
地方銀行の状況も深刻です。2025年4〜9月期決算では、約8割の銀行が増益・黒字転換となる一方、保有する国内債の含み損は前年同期比2倍の3兆円に膨らみました。
金利上昇で利ざやが改善する恩恵を受けつつも、保有債券の評価損拡大というジレンマに直面しています。特に中小規模の地銀では、含み損が経営の重荷となる可能性が指摘されています。
グリーンランド問題が市場に与えた影響
米欧対立の激化
今回の株安のきっかけとなったのは、トランプ米大統領によるグリーンランド領有を巡る発言です。トランプ大統領はデンマーク自治領グリーンランドの取得に意欲を示し、反対する欧州8カ国に対して10%の輸入関税を課すと発表しました。
対象となったのはデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランドの8カ国です。2月1日から10%、6月からは25%の関税を課すとSNSで表明し、NATO同盟国に対して露骨な経済的圧力をかける姿勢を示しました。
EUの対抗措置と市場の動揺
これに対しEUは、930億ユーロ(約17兆900億円)相当の米国製品に関税を課す可能性を協議しています。米欧間の貿易摩擦が激化すれば、世界経済への悪影響は避けられません。
この地政学リスクの高まりを受けて、20日の米国株式市場が下落し、その流れが21日の東京市場にも波及しました。日経平均の下げ幅は一時800円に迫る場面もあり、投資家のリスク回避姿勢が鮮明になりました。
2026年の国債市場と銀行株の見通し
国債供給量の増加が重荷に
2026年度の日本国債市場は、引き続き厳しい環境が予想されています。高市首相の「責任ある積極財政」政策と日銀の買い入れ縮小により、市場へのネット供給額は前年度比約8%増の約65兆円に膨らむ見込みです。これは過去10年余りで最大の規模となります。
2025年のパフォーマンスが世界の主要債券市場で最悪だった日本は、2026年も苦難が続く可能性があります。
銀行株の投資判断
銀行株については、見方が分かれています。日銀の利上げ継続が見込まれる中、利ざや拡大への期待は根強くあります。野村證券の2026年見通しでは、脱デフレの継続というシナリオのもと、銀行セクターをポジティブに評価しています。
一方で、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る銀行が依然として8割を占めており、市場は含み損リスクを織り込んでいるとも言えます。金利上昇のペースと質を見極めながら、慎重な投資判断が求められます。
注意点・今後の展望
投資家が注視すべきポイント
今後、投資家が注目すべきは金利上昇の「質」です。日銀の金融政策正常化に伴う緩やかな金利上昇であれば、銀行の収益改善が期待できます。しかし、財政懸念や地政学リスクによる急激な金利上昇は、含み損拡大を通じて金融システムにストレスを与える可能性があります。
また、米欧間のグリーンランド問題がどのように決着するかも重要です。関税合戦がエスカレートすれば、世界経済の減速を通じて日本企業の業績にも影響が及びます。
中長期的な視点
日銀のシミュレーションによると、短期金利が2%に達した場合、2027年度と2028年度には最大2兆円規模の最終赤字が発生する可能性があるとされています。中央銀行の財務健全性への懸念が高まれば、それ自体が市場の不安定要因となりかねません。
まとめ
日経平均の5日続落と銀行株の急落は、単なる一時的な調整ではなく、「悪い金利上昇」という構造的なリスクを反映しています。金利上昇が銀行にとって必ずしもプラスではないという教訓は、今後の投資判断において重要な視点となります。
グリーンランド問題に端を発する米欧対立の行方、そして国内金利の上昇ペースを注視しながら、リスク管理を徹底することが求められます。
参考資料:
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