東京電力、外部資本活用の新再建計画を発表 非公開化も視野
はじめに
東京電力ホールディングスは2026年1月26日、外部企業との資本提携を柱とする新たな再建計画「第5次総合特別事業計画」を発表しました。この計画は同日、国の認定を受けています。
東電は福島第一原子力発電所事故以降、巨額の賠償・廃炉費用を抱えており、その総額は17兆円規模にまで膨らむ見通しです。従来の返済計画を維持しながらも、抜本的な経営改革を進めるため、国内外の投資ファンドや事業会社から広く提携先を募る「公募」形式を採用します。
本記事では、新再建計画の詳細、東電の財務状況、そして柏崎刈羽原発の再稼働を含めた今後の展望について解説します。
新再建計画の概要
外部資本を活用した提携戦略
東電と筆頭株主である原子力損害賠償・廃炉等支援機構が策定した第5次総合特別事業計画の最大の特徴は、外部企業との資本関係を含めた提携の拡大です。
具体的には、「期限を切って、パートナー候補から広く提案を募集する」という公募形式をとります。国内投資ファンドのほか、米KKRや米ベインキャピタルなどの海外ファンドもすでに関心を示していると報じられています。
小早川智明社長は「抜本的改革なくして、福島への責任の貫徹は難しい。大胆な改革で企業価値を向上させる」と述べ、従来の延長線上にない経営改革の必要性を強調しました。
非公開化も選択肢に
新計画では、株式の非公開化も選択肢として明記されています。「制約を設けず」幅広い提案を受け付けるとしており、上場維持にこだわらない姿勢を示しています。
非公開化が実現すれば、短期的な株価変動に左右されることなく、長期的な視点での経営改革が可能になります。一方で、市場からの監視機能が弱まるという懸念もあります。
返済計画は維持
計画では、東電が毎年の純利益から年5000億円程度を国に返済するという従来の計画を維持しました。福島原発事故による賠償や廃炉費用は現時点で11兆円を超えており、今後17兆円規模まで膨らむ見通しです。
収支計画では、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を織り込み、2035年3月期に純損益で2998億円の黒字を見込んでいます。
福島原発事故の費用負担
総額23兆円超の事故処理費用
政府は2023年末、福島第一原発事故の賠償などにかかる費用の想定を約2兆円引き上げ、計約23兆4000億円としました。当初は約11兆円と見込んでいましたが、2016年に21.5兆円と試算され、その後も増加が続いています。
費用の内訳は以下の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 廃炉 | 8兆円 |
| 賠償 | 9.2兆円 |
| 除染 | 4兆円 |
| 中間貯蔵施設 | 1.6兆円 |
特に賠償費用は、処理水の海洋放出に伴う風評被害への支払いとして3000億円を見込んでおり、今後も増加する可能性があります。
廃炉費用は東電が全額負担
廃炉に必要な8兆円は全て東電が負担することになっています。2025年度の廃炉費用は前年度比64億円増の2605億円で、その内訳は使用済み核燃料の取り出し作業に312億円、汚染水対策に300億円、廃棄物対策に198億円、溶融燃料(デブリ)の取り出し作業に187億円となっています。
2026年度は2872億円、2027年度は2740億円と、今後も年間数千億円規模の廃炉費用が必要です。
費用回収の仕組み
賠償・除染・中間貯蔵施設費用については、国が交付国債を発行し、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて東電に資金援助する仕組みです。後年に電力会社による負担金や国費等により回収されます。
賠償費用は電力各社の負担金で返済していますが、まだ3分の1しか回収できていない状況です。2020年度からは原発を保有しない新電力の利用者も電気料金を通じて負担するようになりました。
柏崎刈羽原発の再稼働
福島事故後初の東電原発再稼働
2026年1月21日、東電は柏崎刈羽原子力発電所6号機を再稼働させました。東電の原発が再稼働するのは、2011年の福島第一原発事故以降、初めてのことです。
2025年11月に新潟県の花角英世知事が再稼働を容認する意向を表明し、約14年間にわたる信頼回復への取り組みが実を結びました。
再稼働の経済効果
東電によると、柏崎刈羽原発1基の再稼働による燃料費削減効果は年約1000億円です。再建計画にも6、7号機の再稼働が織り込まれており、収益改善の大きな柱となっています。
また、原発が再稼働していない東日本では、西日本に比べて電気料金が2〜3割程度高くなっており、再稼働により電気料金の低減も期待されています。
エネルギー安全保障と脱炭素
東日本は電力供給の約8割を火力に依存しており、約9割の火力電源が東京湾岸や太平洋沿岸に集中しています。自然災害等に対して脆弱な構造を抱える中、大規模かつ安定的に脱炭素電気を供給できる原発の再稼働は、エネルギー安全保障と脱炭素の両立において重要な役割を果たします。
特に、AI活用拡大によるデータセンター需要増で電力需要が増加すると想定される中、安定した電力供給源の確保は喫緊の課題です。
注意点・展望
7号機の再稼働には課題
柏崎刈羽原発7号機については、特定重大事故等対処施設(テロ等発生時対処施設)の完成が遅れており、設置期限を迎える2025年10月以降、3〜4年程度運転できない状況です。
6号機についても2029年9月に特重施設の設置期限を迎え、工事完了は2031年度半ばを予定しているため、設置期限まで運転した後に長期間停止する見通しです。
提携先選定の行方
月内にも始まる提携先の公募には、国内外の複数の投資ファンドが関心を示しています。どのような提携形態が選択されるかは、東電の経営自由度や福島への責任貫徹の両面から注目されます。
非公開化を含む大胆な選択肢が採用されれば、日本のエネルギー業界に大きな影響を与える可能性があります。
まとめ
東電の新再建計画は、外部資本を活用した抜本的な経営改革を目指すものです。17兆円規模に膨らむ福島原発の賠償・廃炉費用を捻出しながら、電力の安定供給と脱炭素を両立させるという難しい課題に取り組みます。
柏崎刈羽原発6号機の再稼働は収益改善の第一歩ですが、7号機の遅延や廃炉費用の継続的な負担など、課題は山積しています。今後の提携先選定の行方と、それが東電の経営にどのような影響を与えるかを注視する必要があります。
参考資料:
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