柏崎刈羽原発6号機、再稼働延期へ 制御棒設定ミスが発覚
はじめに
東京電力ホールディングスは2026年1月19日、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)6号機の再稼働を延期する方針を固めました。当初は1月20日に再稼働し、2月26日に営業運転を開始する予定でした。
延期の原因は、1月17日の試験中に発覚した制御棒関連のトラブルです。制御棒を引き抜く際に本来鳴るべき警報が作動しない不具合が見つかり、調査の結果、1996年の運転開始前から続く設定ミスが判明しました。
同様のミスが88カ所で確認され、全ての設定を確認するのに数日を要する見込みです。本記事では、トラブルの詳細と原因、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる経緯、そして東電の安全管理体制への課題を解説します。
制御棒トラブルの詳細
1月17日に発覚した不具合
2026年1月17日午後0時36分、柏崎刈羽原発6号機で実施していた制御棒の引き抜き試験中に不具合が確認されました。
原子炉には燃料の核分裂反応を抑える制御棒が205本あります。試験では、1本の制御棒を引き抜いた状態で別の制御棒を引き抜こうとすると、誤操作を防ぐための警報が鳴る仕組みになっています。しかし、この警報が作動しませんでした。
2本以上の制御棒が同時に抜けた状態になると、原子炉温度が想定以上に上昇する恐れがあります。東電は引き抜いた制御棒を元に戻して試験を中止し、原発の安全管理ルールである「運転上の制限」を逸脱したと判断して原子力規制委員会に報告しました。
30年前からの設定ミス
東電は1月18日、トラブルの原因が設定ミスであったと発表しました。驚くべきことに、このミスは1996年の6号機運転開始前にメーカーによって誤入力されたもので、約30年間にわたり発見されていませんでした。
さらに調査を進めたところ、同様の設定ミスが88カ所で確認されました。6号機にある205本全ての制御棒について、約4万通りの設定パターンを確認する必要があり、作業に数日かかる見込みです。
東電は正しい設定に修正した上で警報が正常に作動することを確認し、1月18日午後8時半前に「運転上の制限」からの復帰を宣言しました。
再稼働日程への影響
東電は再発防止策の確認に1〜2日かかるとしており、新しい再稼働日は原子力規制庁との協議を経て決定されます。
ただし、東電は2月26日に予定している営業運転開始については「大きくずれ込むことはない」との見通しを示しています。再稼働そのものの方針に変更はないとしています。
柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる経緯
14年ぶりの稼働を目指す
柏崎刈羽原発6号機は2012年3月に定期検査で停止して以来、約14年間稼働していません。東日本大震災後の原発停止を経て、東電は経営再建の柱として柏崎刈羽原発の再稼働を目指してきました。
2024年3月には政府が新潟県、柏崎市、刈羽村に対して再稼働への同意を求めました。技術的には2024年6月に7号機の原子炉に核燃料を装填し、再稼働できる状態が整いました。しかし、法律上の根拠はないものの「地元同意」が再稼働の条件とされており、その取得が課題となっていました。
2025年の動き:地元同意の取得
2025年6月、東電は6号機の原子炉への核燃料装填を完了しました。同年11月21日、花角英世・新潟県知事が再稼働を容認する方針を表明。県民への丁寧な説明や安全性向上への取り組みなど7項目について国の対応が確約されれば「了解する」との条件を付けました。
12月22日、新潟県議会は花角知事の再稼働容認方針を賛成多数で信任しました。自民党などは「県民の多様な意見を把握・分析した上での結論」と支持した一方、野党系会派は避難路の改修や複合災害対策の課題、テロ対策施設の未完成を理由に反対しました。
東電は12月24日に原子力規制委員会へ「使用前確認」を申請し、2026年1月20日の再稼働を発表していました。
東電と柏崎刈羽原発の不祥事の歴史
2002年「東電トラブル隠し事件」
今回のトラブルが注目される背景には、東電と柏崎刈羽原発をめぐる不祥事の歴史があります。
2002年、柏崎刈羽原発を含む東電の原発13基で、ひび割れや故障を長年にわたり意図的に隠蔽し、記録を改ざんしていたことが内部告発をきっかけに発覚しました。この「東電トラブル隠し事件」では南直哉社長ら5人が引責辞任し、プルサーマル計画も無期限凍結されました。
2007年には追加のデータ改ざんも判明。原子炉緊急停止事故の隠蔽や蒸気タービン性能検査のデータ改ざんなど6件が報告されました。
2020〜2021年 核セキュリティ問題
2020年から2021年にかけては、核セキュリティ(核物質防護)をめぐる深刻な問題が発覚しました。
社員が同僚のIDカードを無断使用して中央制御室に入室し、警備員がそのデータを書き換えていたこと、外部からの不正侵入を検知する設備の故障を長期間放置していたことなどが明らかになりました。
原子力規制委員会は2021年3月、柏崎刈羽原発の核セキュリティ体制を最も深刻な「赤」と判定しました。これは日本初であり、同様の検査制度を20年運用している米国でも近年例がない厳しい評価でした。
2024年にも新たな不祥事
2024年11月には、原子力規制委員会の非公開会議でテロ対策の不備に関する3つの事案が報告されました。特に深刻だったのは、東電社員が2020年から2024年まで長期にわたり不適切な行為を続けていたことです。
柏崎市の桜井雅浩市長は2023年に「東電が本当に原発の再稼働を担える会社なのか考え始めている」と不信感を表明。地元住民からは「体質は変わらない」との声も上がっています。
注意点・今後の展望
安全管理体制の再点検が必要
今回発覚した設定ミスは30年間見過ごされてきたものであり、東電の品質管理体制の問題を浮き彫りにしています。6号機は約14年間停止していたため、機器の不具合や設定の問題が潜在していた可能性があります。
原子力規制委員会は使用前確認の過程でこうした問題を洗い出す役割を担っていますが、今回のように試験中に偶然発覚するケースもあります。東電には全ての設定を網羅的に確認する作業が求められます。
地元の信頼回復は道半ば
再稼働の地元同意は取得したものの、今回のトラブルは東電への信頼を再び揺るがす可能性があります。東電は36項目にわたる改善措置計画を策定して信頼回復に取り組んでいますが、不祥事が続く限り地元の不安は解消されません。
花角知事は再稼働容認の条件として「県民への丁寧な説明」を挙げており、今回のトラブルについても住民への説明責任が問われます。
7号機の再稼働も控える
6号機に続き、7号機の再稼働も予定されています。ただし、7号機はテロ対策施設(特定重大事故等対処施設)の完成が遅れており、2025年10月以降は3〜4年程度運転できなくなる見通しです。
東電の経営再建にとって柏崎刈羽原発の稼働は重要ですが、安全性の確保と地元の信頼なくしては持続的な運転は困難です。
まとめ
柏崎刈羽原発6号機の再稼働は、制御棒関連のトラブル発覚により延期されました。原因は1996年の運転開始前から続いていた設定ミスで、88カ所で同様の問題が確認されています。
東電は再発防止策の確認後に新しい再稼働日を決定する予定で、2月26日の営業運転開始への影響は限定的としています。しかし、30年間見過ごされてきた設定ミスの発覚は、東電の安全管理体制に改めて疑問を投げかけるものです。
福島第一原発事故から15年近くが経過し、柏崎刈羽原発は14年ぶりの稼働を目指しています。今回のトラブルを教訓に、東電が安全最優先の姿勢を徹底できるかが、今後の再稼働と地元の信頼回復の鍵となります。
参考資料:
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