東京オートサロン2026、トヨタがカムリ改造で対決企画
はじめに
カスタムカーの祭典「東京オートサロン2026」が、2026年1月9日から11日の3日間、幕張メッセで開催されました。今年で44回目を迎えたこのイベントには、前年を上回る27万2,383人が来場し、熱気に包まれました。
中でも注目を集めたのがトヨタ自動車のブースです。豊田章男会長が「売られた喧嘩は買いますよ」と不敵に笑いながら発表した「喧嘩三番勝負」企画や、米国から逆輸入予定のカムリを使ったカスタマイズ対決が話題を呼びました。
本記事では、東京オートサロン2026のハイライトと、トヨタの戦略的な取り組みについて解説します。
東京オートサロン2026の概要
過去最高水準の来場者数
東京オートサロン2026は、389社が856台もの車両を出品する「世界最大のカスタムカーショー」として開催されました。3日間の来場者数は27万2,383人で、前年を約1万4,000人上回りました。
各日の来場者数は以下の通りです。
- 1月9日(金曜日):7万3,027人
- 1月10日(土曜日):10万5,034人
- 1月11日(日曜日):9万4,322人
コロナ禍以降で最多の来場者数を記録し、カスタムカー文化の根強い人気が改めて証明されました。
多彩な出展内容
会場には、国内外の自動車メーカーやパーツメーカー、チューニングショップなどが集結しました。日産はフェアレディZのマイナーチェンジモデルを初公開し、スバルはWRX STI Sport# PROTOTYPEを発表。ダイハツはド派手なデコドラ仕様の軽トラックで注目を集めました。
また、「東京国際カスタムカーコンテスト」では、来場者とインターネット投票により栄光の24台が選出されました。
トヨタの「喧嘩三番勝負」企画
ユニークな展示テーマ
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のブースは、「喧嘩三番勝負」をテーマに展開されました。「親子喧嘩」「社内抗争勃発」「カスタム対決」という3つの対決企画が、来場者の大きな反響を呼びました。
豊田章男会長は「売られた喧嘩なら買いますよ」と不敵な笑みを浮かべながら、各対決の概要を発表しました。2025年は体調不良で欠席した豊田会長でしたが、2026年は元気な姿で登場し、ファンを喜ばせました。
カムリを使ったカスタマイズ対決
「社内抗争」として企画されたのが、豊田章男会長と中嶋裕樹副社長によるカスタマイズ対決です。お互いがカスタマイズする車両には、トヨタが2026年から日本市場への「逆輸入」を予定している「カムリ」が選ばれました。
サングラスをかけ、ボクシンググローブをはめてポーズを決める両者の姿は、イベントのハイライトとなりました。
中嶋副社長は「モリゾウなしでいい車を作れる、という人は社内にいっぱいいる」と挑発的なコメントで会場を沸かせました。実際のカスタマイズ車両は、2026年のスーパー耐久シリーズで披露される予定です。
豊田会長のメッセージ
豊田章男会長は「仲間とのいい車作りを受け継いでいきたい」と語りました。トヨタの車づくりの原点である「クルマ好き」の精神を、社内外の仲間と共有しながら次世代に伝えていく決意を示したものです。
カムリの日本市場復活
逆輸入という新たな挑戦
カムリは2023年に日本での生産・販売を終了していましたが、2025年12月にトヨタは米国生産車の日本導入を発表しました。2026年から順次、「カムリ」「ハイランダー」「タンドラ」の3車種を逆輸入します。
カムリは米国ケンタッキー工場で生産されており、北米市場では22年連続でベストセラーセダンの座を守る人気車種です。日本での販売終了時には惜しむ声が多く上がっており、復活を待ち望んでいたファンも少なくありません。
新型カムリの特徴
現行の11代目カムリは、洗練された「ハンマーヘッドデザイン」と全車ハイブリッド化による優れた燃費性能が特徴です。2.5リッター4気筒エンジンと第5世代ハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインを搭載しています。
日本導入にあたっては、国土交通省が検討している輸入車審査手続きの簡素化制度も活用される見通しです。
日米関係への配慮
逆輸入の背景には、日米の貿易バランスへの配慮があります。対日貿易赤字を問題視するトランプ政権への対応として、「米国で作り、日本で売る」という流れを作ることで、健全な二国間関係の維持に寄与する狙いがあるとされています。
トヨタは「より良い日米貿易関係に貢献していく」とコメントしています。
GAZOO Racingの新体制とGR GT3
組織再編の発表
東京オートサロン2026では、トヨタのモータースポーツ活動の組織再編も発表されました。これまで「TOYOTA GAZOO Racing」として行ってきた活動を「GAZOO Racing」に変更し、WEC(世界耐久選手権)での活動は「TOYOTA RACING」として行っていくことが明らかにされました。
この再編により、市販車のスポーツブランドとしての「GR」と、プロフェッショナルなレース活動をより明確に区別する体制が整えられます。
GR GTとGR GT3の世界初公開
会場では、新世代フラッグシップモデル「GR GT」と「GR GT3」が一般向けに初公開されました。デモ走行も行われ、トヨタ初採用となるオールアルミニウム骨格、4L V8ツインターボエンジンのカットモデルも展示されました。
GR GT3は、将来のルマン24時間レース参戦も視野に入れた本格的なレーシングカーです。
ルマン24時間への挑戦
中嶋裕樹副社長は「モリゾウの力を借りずにトヨタのエンジニアだけで、必ず今年のルマン24時間で優勝し、トロフィーをここに叩きつける」と宣言しました。TOYOTA RACING会長として、2026年のルマン24時間レースでの必勝を誓う姿は、大きな拍手で迎えられました。
その他の注目展示
各メーカーの出展
東京オートサロン2026では、トヨタ以外のメーカーも注目の車両を出展しました。
日産は、フェアレディZのマイナーチェンジモデルを世界初公開しました。2026年夏に発売予定で、NISMOモデルにはマニュアルトランスミッション(MT)が追加されます。
スバルは「WRX STI Sport# PROTOTYPE」を発表し、2026年春の市販化を予定しています。MT搭載のSTIコンプリート仕様として、スポーツカーファンの期待を集めています。
マッチのマーチ
話題を呼んだのが、近藤真彦氏プロデュースの「マッチのマーチ」です。豊田章男会長とホンダ・レーシングの渡辺康治社長も駆けつけ、メーカーの垣根を越えたクルマ好きの交流が実現しました。
東京国際カスタムカーコンテスト
出展されたカスタムカーの中から、来場者とインターネット投票により24台が選出されました。各部門で最も優れたカスタムカーが表彰され、職人技とクリエイティビティが称えられました。
注意点と今後の展望
カムリ逆輸入への期待と懸念
カムリの日本市場復活には期待の声が多い一方、懸念もあります。米国仕様のカムリは車体サイズが大きく、「日本の道路や駐車場でも大丈夫なのか」という声も上がっています。
販売方法や導入台数、価格設定については検討中とされており、今後の発表が待たれます。
カスタムカー文化の継続
東京オートサロンは、カスタムカー文化を支える重要なイベントとして定着しています。27万人を超える来場者数は、クルマへの情熱が世代を超えて受け継がれていることを示しています。
次回の東京オートサロン2027は、2027年1月15日から17日に開催予定です。
モータースポーツの発展
トヨタの「喧嘩三番勝負」企画は、エンターテインメント性とモータースポーツへの情熱を融合させた新しい試みです。豊田章男会長の存在感と、中嶋裕樹副社長をはじめとする若い世代のリーダーシップが、トヨタのモータースポーツ活動を新たなステージに導いています。
まとめ
東京オートサロン2026は、27万人を超える来場者を集め、カスタムカー文化の盛り上がりを示す場となりました。トヨタは「喧嘩三番勝負」企画で会場を盛り上げ、米国から逆輸入予定のカムリを使ったカスタマイズ対決を発表しました。
豊田章男会長の「仲間とのいい車作りを受け継いでいきたい」というメッセージは、トヨタの車づくりの原点を示すものです。GR GT3の世界初公開やルマン24時間への挑戦宣言など、モータースポーツへの本気度も伝わってきました。
2026年は、カムリの日本市場復活やルマン24時間レースなど、トヨタにとって重要な年になりそうです。クルマ好きにとって目が離せない1年が始まりました。
参考資料:
関連記事
スバル独自HVの正体 縦割りを越えた開発思想とトヨタ活用術
スバルの次世代ハイブリッドは、トヨタTHSを土台にしながら水平対向エンジンと機械式AWDを残した点に独自性があります。2024年以降の組織改編、北本工場の量産準備、米国で伸びるHV需要を重ね、同社がなぜ自前主義を越えたのかを解説します。
日本の水素ステーションはなぜ閑古鳥なのか
1日の来客が10台未満という日本の水素ステーション。巨額の補助金が投じられながら利用が伸びない現状と、水素社会で先行する中国との差、そして今後の課題を解説します。
トヨタ豊田章男会長が米国自動車殿堂入り、創業家4人目の快挙
トヨタ自動車の豊田章男会長が米国自動車殿堂(Automotive Hall of Fame)入りを果たしました。創業家として4人目の殿堂入りの背景や、豊田氏の功績、自動車業界への影響を詳しく解説します。
スバルが自社工場でEV生産開始、トレイルシーカーで新時代へ
スバルが群馬県の矢島工場でEV「トレイルシーカー」の生産を開始しました。トヨタとの20年の協業を経て実現した自社工場でのEV量産は、スバルの電動化戦略における重要な転換点となります。
日本株2月相場展望、衆院選と主力決算で振れやすい展開
2月の日本株は衆院選投開票と為替動向が最大の焦点。トヨタや任天堂の決算も注目される中、相場の見通しと注目ポイントを解説します。
最新ニュース
ブラジルがBYD「奴隷労働」認定を撤回した背景と波紋
ブラジル政府が中国EV大手BYDを「奴隷労働」企業に認定後わずか2日で撤回し、認定を主導した労働監督局長を解任した。カマサリ工場建設現場で163人の中国人労働者がパスポート没収・賃金搾取の被害に遭った事件の経緯と、中国との外交関係を優先する政治判断が労働者保護を揺るがす構造的問題を読み解く。
AI半導体株高が再点火した理由 世界株高を支える成長と危うさの正体
日経平均は4月14日に5万7877円へ反発し、米ナスダックも戦争ショック後の下げをほぼ吸収しました。なぜAI・半導体株に資金が戻るのか。TSMC、ASML、Broadcom、半導体ETF、原油高との綱引きを手掛かりに、世界株高の持続条件と崩れやすさを解説します。
Amazonのグローバルスター買収 通信衛星戦略と競争環境整理
Amazonは2026年4月14日、Globalstarを総額115.7億ドルで買収すると発表しました。狙いは衛星通信網、Band n53の周波数、Apple向けサービス、そしてDirect-to-Device市場です。Starlink先行の構図の中で、Amazon Leoが何を得て何が課題として残るのかを整理します。
ANA人事騒動は何だったのか 1997年対立と統治改革の起点
1997年のANA人事騒動は、若狭得治名誉会長、杉浦喬也会長、普勝清治社長の対立が表面化し、社長候補の差し替えまで起きた統治危機でした。背景には規制緩和下での旧運輸官僚主導と生え抜き経営のねじれがありました。1999年の無配、取締役31人から19人への削減、スターアライアンス参加へつながる改革の意味を読み解きます。
ANAとJALの上級座席競争を需要回復と機材更新戦略から読む
ANAは2026年8月受領の787-9に個室型ビジネスクラス「THE Room FX」を載せ、JALは2027年度から737-8で国内線ファーストクラスを全国展開します。訪日客4268万人、訪日消費9兆4559億円、国内旅行消費26兆7746億円の時代に、航空会社が座席を上質化する収益戦略を読み解きます。