欧州でHVがガソリン車超え、補助金なしでも選ばれる理由
はじめに
欧州自動車工業会(ACEA)が発表した2025年の欧州新車販売統計で、ハイブリッド車(HV)が初めてガソリン車を抜き、動力源別で首位に立ちました。HVは市場全体の約34%を占め、補助金の対象外であるにもかかわらず消費者から強い支持を集めています。
かつてEV(電気自動車)一辺倒だった欧州市場で、なぜ今「ハイブリッドシフト」が起きているのでしょうか。本記事では、欧州のHV人気の背景、EV販売の現状、そして日本メーカーにとっての意味を詳しく解説します。
2025年欧州新車販売の全体像
HVが動力源別で首位に
ACEAの発表によると、2025年の欧州主要31カ国における新車販売台数は、前年比2%増の約1,327万台でした。これで3年連続の前年比プラスを記録しています。
注目すべきは動力源別の構成比です。HVは前年比13.5%増となり、市場全体の34.5%を占めて首位となりました。一方、ガソリン車は26.6%にとどまり、初めてHVに追い抜かれる結果となっています。2024年9月以降、HVはガソリン車を4カ月連続で上回っており、この傾向が通年でも定着した形です。
EVは回復傾向だが課題も
EVの販売台数は前年比30%増と大幅に伸び、市場全体の17.4%を占めました。ドイツではEV補助金が2023年末に終了して以降、販売が落ち込んでいましたが、2025年1月には補助金廃止以前の水準である25%超に回復しています。
一方で、割高な車両価格、充電インフラの不足、航続距離への不安といった課題は依然として残っており、消費者がEVに全面移行するにはハードルが高い状況です。ガソリン車とディーゼル車を合わせた市場シェアは35.5%で、2024年の45.2%から大幅に減少しました。
なぜHVが選ばれるのか
「現実的な選択肢」としての評価
欧州でのHVブームは「予想外の復活」(独経済紙ハンデルスブラット)と評されています。EV一辺倒だった欧州市場で、なぜ今HVが支持を集めているのでしょうか。
最大の理由は、HVが「電動化への移行期における最も現実的で安心な選択肢」として認識されていることです。EVは購入価格がHVより高く、充電インフラも十分とは言えません。特に地方部では充電スタンドが少なく、長距離移動への不安が残ります。
HVであれば、従来のガソリンスタンドで給油できるため、こうした不安なく電動化のメリットを享受できます。燃費性能も向上しており、ガソリン代の節約効果も期待できることから、「エコカーへの最初の一歩」として選ばれているのです。
補助金なしでも浸透
注目すべきは、HVが政府の購入補助金の対象外であるにもかかわらず、これだけの市場シェアを獲得している点です。多くの国でEVには補助金が支給される一方、HVは対象外となっていますが、それでも消費者は実用性や経済性を重視してHVを選んでいます。
これは、消費者が政策に誘導されるのではなく、自らの判断で最適な選択をしていることを示しており、HV市場の持続的な成長を裏付ける材料といえます。
日本メーカーの躍進
トヨタがHV比率67%を達成
欧州におけるHV人気の恩恵を最も受けているのが、日本の自動車メーカーです。特にトヨタは、ハイブリッド技術で長年のノウハウを持ち、欧州市場でも高い評価を得ています。
2024年度第3四半期(2024年4〜12月)の時点で、トヨタ車(レクサスを含む)におけるHV販売比率は世界で42.4%に達しました。地域別では欧州が最も高く、67.1%をHVが占めています。トヨタの欧州における登録台数は前年比17.5%増の約86万台に拡大し、市場シェアは8.1%と前年から順位を1つ上げました。
他の日本メーカーも好調
トヨタだけでなく、スズキ、三菱自動車、ホンダの登録台数も2桁の伸び率を記録しています。日本メーカーはハイブリッド技術において先行してきた強みを活かし、欧州市場でのプレゼンスを高めています。
EU規制緩和の動き
2035年エンジン車禁止を事実上撤回
欧州のHV市場にとってさらなる追い風となりそうなのが、EUの自動車規制緩和です。欧州委員会は2025年12月、2035年までにガソリン車やディーゼル車など内燃機関車の販売を禁止する方針を見直すと発表しました。
新たな案では、2021年比で90%のCO2排出量削減を達成すれば、HVや内燃機関車も2035年以降に販売を継続できるとしています。残り10%の削減については、低炭素鉄鋼の採用や、合成燃料・バイオ燃料の使用などで対応する形です。
日本メーカーに追い風
この規制緩和は、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)に強みを持つ日本メーカーにとって追い風となります。従来の方針では、走行時にCO2を排出するHVやPHVも2035年以降は新車販売が禁止される予定でしたが、規制が緩和されれば、日本メーカーはHV技術を活かしながら、欧州市場での展開を継続できます。
ただし、ドイツ自動車工業会からは、域内製の低炭素鋼やバイオ燃料の使用比率を高めることが条件となっていることへの懸念も示されており、最終的な規制内容は今後の議論次第です。
今後の展望と注意点
「ハイブリッドシフト」は続くのか
短期的には、HVの人気は続くと予想されます。EVのインフラ整備や車両価格の低下には時間がかかるため、当面はHVが「現実的な選択肢」としてのポジションを維持するでしょう。
ただし、中長期的にはEV技術の進化や充電インフラの拡充により、EVへのシフトが進む可能性もあります。自動車メーカーとしては、HVとEVの両方に対応できる柔軟な戦略が求められます。
中国メーカーとの競争
忘れてはならないのが、中国メーカーの存在です。BYDをはじめとする中国EVメーカーは、低価格を武器に欧州市場への進出を加速しています。HV人気が続く一方で、EV市場では中国メーカーとの競争が激化しており、欧州メーカーも日本メーカーも対応を迫られています。
まとめ
2025年の欧州新車販売でHVがガソリン車を初めて上回ったことは、自動車市場の転換点といえます。EV一辺倒だった欧州の方針が現実に即した形で修正され、HVが「電動化への橋渡し」として評価されるようになりました。
日本メーカーにとっては、長年培ってきたハイブリッド技術が再評価される好機です。EU規制の緩和も追い風となる可能性があり、今後の欧州市場での展開に注目が集まります。一方で、中国メーカーとの競争やEV技術の進化にも目を配り、バランスの取れた戦略が求められるでしょう。
参考資料:
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