東京23区の分譲マンション賃料が初の5000円台に到達
はじめに
不動産調査会社の東京カンテイが発表した2026年1月の分譲マンション賃料データが、不動産市場に衝撃を与えています。東京23区の分譲マンション賃料が1平方メートルあたり5,041円に達し、前月比1.8%の上昇を記録しました。上昇は4カ月連続で、2004年1月の調査開始以来、初めて5,000円の大台を突破しています。
分譲マンションの賃料とは、マンションの持ち主が住戸を貸し出す際に設定する家賃のことです。本記事では、この過去最高水準に達した賃料の背景にある要因と、今後の見通しについて解説します。
賃料上昇の推移と現状
4カ月連続上昇で大台突破
東京23区の分譲マンション賃料は、2025年後半から加速度的な上昇を続けてきました。2025年11月には1平方メートルあたり4,900円に達し、12月は4,952円と過去最高値を更新しました。そして2026年1月、前月比1.8%の上昇でついに5,041円と5,000円の大台を超えました。
東京カンテイの調査は、専有面積30平方メートル未満の住戸や事務所・店舗用途を除く、ファミリータイプの分譲マンションを対象としています。つまり、一般的な家族向けの物件で記録的な賃料水準に達しているということです。
都心部では5,000円超えが常態化
都心3区(千代田区・中央区・港区)や渋谷区では、すでに1平方メートルあたり5,000円超えの賃料水準が定着しています。2025年10月時点で、平均坪単価17,000円(1平方メートルあたり約5,150円)を超える高単価エリアが、従来の2区(港区・渋谷区)から5区に拡大し、新宿区、目黒区、千代田区が新たに加わりました。
この高単価エリアの拡大が23区全体の平均値を押し上げ、今回の大台突破につながったと考えられます。
首都圏全体と近畿圏との比較
首都圏全体で見ると、2025年12月のデータでは1平方メートルあたり3,926円でした。東京都単独では4,749円ですが、神奈川県(2,717円)、埼玉県(2,140円)、千葉県(2,080円)が平均を引き下げています。
近畿圏は同時期で2,279円と、首都圏の約6割弱の水準です。東京23区の5,041円と比較すると2倍以上の差があり、東京の賃料水準がいかに突出しているかが分かります。
賃料上昇の背景にある要因
マンション価格の高騰と「購入断念層」の増加
賃料上昇の最大の要因は、分譲マンション価格の急激な高騰です。東京23区の新築マンション平均価格は2025年5月に1億4,049万円という記録的な水準に達しました。世帯年収2,000万円から3,000万円がないと都心部のマンションを購入できない状況が生まれており、従来であれば購入していた所得層が賃貸に流れるという構図が固定化しつつあります。
この「購入断念層」が増えることで賃貸需要が高まり、賃料の上昇圧力が持続しています。かつてのパワーカップルと呼ばれた世帯年収1,500万円の層でも、都心マンションの購入が難しくなっている現実があります。
都心回帰の加速
コロナ禍で一時的に進んだ郊外移住の流れは、すでに逆転しています。リモートワークから出社に回帰する企業が増加し、通勤利便性の高い都心部への需要が再び強まりました。東京23区への人口流入は継続しており、限られた賃貸物件に対する需要が集中する状態が続いています。
固定資産税の評価替えによるコスト転嫁
2024年に実施された固定資産税の評価替えも、賃料上昇を後押ししている要因のひとつです。借地借家法では「租税の負担増」が家賃値上げの正当な事由として認められており、評価替えによる固定資産税の増加分をオーナーが賃料に転嫁する動きが広がっています。
物価高による物件の維持管理費の上昇も、オーナーが賃料を引き上げる要因となっています。修繕費用や管理委託費が上昇する中、収益性を維持するために賃料の引き上げを判断するオーナーが増えています。
不動産投資需要の旺盛さ
円安を背景に、海外の富裕層や投資家による東京の不動産への投資意欲が引き続き旺盛です。投資用マンションの取得コストが上昇する中、投資利回りを確保するために賃料を高く設定する傾向が強まっています。特に都心の高級マンションでは、このメカニズムが賃料上昇を加速させています。
注意点・展望
2026年は上昇ペース鈍化の可能性
5,000円台突破というインパクトのある数字ですが、専門家の間では2026年の賃料上昇ペースは2025年ほどにはならないとの見方が出ています。所得や賞与の上昇、人口流入の勢いが弱まる兆候が見られるためです。
また、都心部ではマンション価格が「急激に上がり過ぎた」ことで、資金力のある層でも購入が追いつかない状況が生じています。分譲マンション市場に価格調整の局面が訪れれば、賃貸への需要シフトが緩和し、賃料上昇に歯止めがかかる可能性があります。
金利上昇の影響にも注意
日本銀行の金融政策の正常化に伴い、住宅ローン金利の上昇が続いています。金利上昇はマンション購入のハードルを一段と高め、短期的には賃貸需要を増加させる方向に作用します。しかし、中長期的には不動産投資の収益性に影響を与え、新規供給の減少を通じて市場全体に調整圧力がかかる可能性もあります。
入居者にとっての対策
現在の高賃料環境への対策として、東京23区内でも比較的賃料の低い城東エリア(葛飾区、足立区、江戸川区など)への注目が集まっています。また、交通アクセスの良い神奈川県や埼玉県の物件も、コストパフォーマンスの観点から選択肢として検討する価値があります。
まとめ
東京23区の分譲マンション賃料が初めて1平方メートルあたり5,000円台に到達したことは、東京の住宅市場が新たな段階に入ったことを示しています。マンション価格の高騰による「購入断念層」の増加、都心回帰の加速、固定資産税の評価替えなど複合的な要因が、この記録的な水準を生み出しています。
2026年は上昇ペースの鈍化が予想されるものの、賃料が大きく下がる見通しは立っていません。住まい探しをしている方は、エリアの選択肢を広げることや、長期的な住宅コストの計画を見直すことが重要です。
参考資料:
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