東京23区の中古マンション価格が初の1億円突破
はじめに
東京23区の中古マンション市場が、歴史的な転換点を迎えました。不動産調査会社・東京カンテイの調査によると、2025年の東京23区における中古マンションの平均希望売り出し価格が、70平方メートルあたり1億円を超えたことが明らかになりました。これは1997年以降のデータ確認可能な期間で初めての出来事です。
なぜ中古マンション価格がこれほど急激に上昇したのでしょうか。本記事では、価格高騰の背景にある複合的な要因を分析し、今後の不動産市場の見通しについて解説します。マンション購入を検討している方や、不動産投資に関心のある方にとって、重要な判断材料となる情報をお届けします。
価格上昇の実態と推移
19カ月連続の上昇を記録
東京23区の中古マンション価格は、2025年を通じて一貫した上昇トレンドを示しました。2025年5月には70平方メートルあたり1億88万円となり、初めて1億円の大台を突破。その後も上昇は続き、2025年11月には1億1485万円と最高値を更新しています。
この上昇は19カ月連続で続いており、前年同月比では30%以上も高い水準での推移が続いています。特に2024年の年間平均7720万円と比較すると、わずか1年で約35%もの上昇となり、過去最大の上昇率を記録しました。
築年数別に見る「億ション」の拡大
価格上昇は新しい物件だけの現象ではありません。2025年のデータでは、築20年以上25年未満の物件でさえ、平均価格が1億201万円に達しています。かつては「築古」とされた物件までもが億ションの仲間入りを果たしているのです。
具体的には、築10年以上の物件が約1.3億円、築15年以上で約1.25億円、築20年以上でも約1億円という状況です。5年前の2020年と比較すると、築10年から15年未満の物件では217.6%もの上昇率を示しており、実に2倍以上の価格となっています。
都心6区は1億7550万円に
価格上昇をけん引しているのは都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)です。70平方メートルあたりの平均価格は1億7550万円に達し、32カ月連続の上昇を記録しています。
最も高額なのは千代田区で、2億5103万円という水準です。次いで港区が1200万円/坪を超え、千代田区も953万円/坪と1千万円の大台に迫っています。前期比の上昇率では千代田区の14.7%増が最も大きくなっています。
価格高騰の背景にある複合的要因
円安がもたらす「半額セール」効果
価格上昇の大きな要因の一つが、円安の進行です。2012年頃は1ドル80円台だった為替レートが、2025年には150円近くまで円安が進んでいます。海外の投資家、特に中国の富裕層にとっては、東京のマンションが実質的に半額セールに見える状態となっています。
もともと日本の不動産価格は、香港やシンガポール、ニューヨークなど他の国際都市と比較すると割安とされてきました。そこに円安が加わったことで、海外からの投資マネーが流入しやすい環境が整いました。
外国人投資家の購入増加
東京23区の新築マンションに関する調査では、2025年1月から6月の間に海外在住者が取得した割合は3.5%でした。都心6区に限ると7.5%と、都心ほど比率が高い傾向にあります。晴海フラッグでは外国籍所有が2割を超えたとの報告もあります。
中国富裕層の購入パターンには特徴があります。日本の金融機関からローンを借りることが難しいため、現金で一括購入するケースが多く、取引がスピーディーに成立します。港区・千代田区・渋谷区のタワーマンションやブランドマンションが特に人気を集めています。
新築供給減少と中古への需要シフト
新築マンションの供給が細っていることも、中古マンション価格を押し上げる要因となっています。建築資材の高騰と建設現場の人手不足による人件費上昇で、デベロッパーは安価な供給が困難な状況にあります。
2025年上半期の東京23区新築マンション平均価格は1億3064万円と、前年同期比20.4%増を記録しました。新築が手の届きにくい価格帯になったことで、相対的に割安感のある中古マンションへ需要がシフトしています。
富裕層・パワーカップルの購買力
株高による資産効果も見逃せません。世帯年収1500万円以上の「パワーカップル」と呼ばれる層が、根強い購買意欲を示しています。実需層として「住みやすく便利だから、このエリアで暮らしたい」と考える人々の存在が、価格を下支えしています。
一方で、都心マンションは世帯年収2000万から3000万円ないと購入が難しい状況となり、一般の実需層には手が届きにくくなっているという二極化も進んでいます。
注意点と今後の見通し
エリアによる格差の拡大
価格上昇は東京23区全体で一様に起きているわけではありません。明確に「東京23区」の一強となっており、郊外では価格調整局面に入りつつあります。現に、郊外ではマンションや一戸建ての購入申込みの重複が明らかに減少しています。
専門家の見解では、8割から9割の不動産は今後なだらかに下落を続けるか、価値が大きく低下していく可能性があるとされています。立地が良くても、災害リスクが高いエリアや管理状態が悪いマンションは特に注意が必要です。
金利上昇の影響は限定的か
日銀は2025年12月に0.25%の利上げを決定し、政策金利は0.75%程度と30年ぶりの水準に達しました。しかし、都心部のマンション価格への影響は限定的とみられています。
その理由は、都心マンションの主な購入層である国内外の投資家や富裕層は、金利上昇が予算に大きく影響しないためです。現金取引や海外投資家による資金流入が、安定した需要を支えています。
2026年以降の見通し
2026年も都心部の不動産価格は上昇余地があるとの見方が有力です。一方で、人口減少や空き家の増加が進む地方との格差は拡大する見込みです。
資産価値を維持しやすい物件の条件としては、駅徒歩10分以内、再開発エリア、管理の行き届いたマンションなどが挙げられます。中長期的にはマンション管理や災害リスクが資産価値に与える影響も大きくなるため、立地を含めた持続可能性を総合的に見極めることが重要になります。
まとめ
東京23区の中古マンション価格が1億円を突破した背景には、円安による海外投資家の需要増、新築供給の減少、富裕層の購買力向上など、複合的な要因が絡み合っています。都心部の価格上昇は当面続く可能性が高い一方、エリアによる格差は今後さらに拡大するでしょう。
マンション購入を検討する際は、価格の高さだけでなく、立地の将来性、管理状態、災害リスクなどを総合的に判断することが重要です。また、住宅ローンを利用する場合は、金利変動リスクに備えた資金計画を立てることをお勧めします。
参考資料:
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