米ベネズエラ攻撃で中ロ反発、国際秩序揺らぐ懸念

by nicoxz

はじめに

2026年1月3日、トランプ米大統領はベネズエラに対する大規模な軍事攻撃を実施し、マドゥロ大統領夫妻を拘束したと発表しました。この作戦は1989年のパナマ侵攻以来、最大規模の米国による中南米への軍事行動とされています。

米国は「麻薬テロ組織」への法執行措置と主張していますが、中国とロシアは「主権国家への武力侵略」として強く非難。国連安保理でも激しい応酬が繰り広げられました。

この事態は、世界最大の石油埋蔵量を持つベネズエラの地政学的重要性、そして米国の「力による解決」がもたらす国際秩序への影響を浮き彫りにしています。本記事では、攻撃の背景と各国の反応、今後の展望を解説します。

軍事作戦の経緯と背景

「絶対的決意作戦」の概要

「Operation Absolute Resolve(絶対的決意作戦)」と名付けられた今回の軍事作戦は、2026年1月3日午前2時(現地時間)頃に開始されました。米軍はベネズエラ北部のインフラ施設を空爆し、防空網を制圧。その後、特殊部隊がカラカスにあるマドゥロ大統領の公邸を急襲しました。

作戦は約5時間で完了し、マドゥロ大統領と妻のシリア・フローレス氏は拘束後、米軍の強襲揚陸艦「イオー・ジマ」に移送されました。その後ニューヨークへ空輸され、ブルックリンの拘置所に収容されています。

軍事行動に至る背景

トランプ政権は2025年9月以降、ベネズエラへの軍事的圧力を段階的に強化してきました。「麻薬流入阻止」を名目にベネズエラ近海で活動し、同年11月には空母「ジェラルド・フォード」を展開。マドゥロ政権を「外国テロ組織」に指定するなど、法的根拠の構築も進めていました。

作戦の1週間前、トランプ氏はマドゥロ氏に電話で退陣と投降を求める「最後通牒」を突きつけましたが、マドゥロ氏が交渉を求めて拒否したため、軍事作戦に踏み切ったとされています。

石油利権と地政学的思惑

世界最大の石油埋蔵量

ベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を誇る国です。確認埋蔵量は約3,000億バレルで、サウジアラビアの約2,660億バレルを上回ります。これは世界全体の約17.5%に相当し、オリノコ川流域には「オリノコタール」と呼ばれる超重質油が膨大に存在しています。

しかし、反米のマドゥロ政権下では中国やロシアとの関係が深まり、米国は石油利権から事実上排除されていました。米国の経済制裁やインフラの老朽化により、ベネズエラの石油生産量は2000年の日量320万バレルから2023年には日量約74万バレルへと大幅に減少しています。

「西半球支配」構想

トランプ政権が2025年12月に発表した「国家安全保障戦略(NSS)」では、中南米を含む「西半球」への対応を重視する外交方針が示されていました。米国にカナダ、ベネズエラ、メキシコなど中南米諸国の石油生産を加えると、世界の石油産出量の約40%を占めることになります。

トランプ氏は記者会見で「ベネズエラの石油事業に米国企業が強く関与することになる」と述べ、石油利権の確保が今回の軍事行動の重要な動機であることを事実上認めています。

中国・ロシアの反応と国際社会の対応

中国の強い反発

中国外務省は1月3日夜に声明を発表し、米国の行動を「主権国家に対する蛮行」「覇権行為」と強く非難しました。翌4日には「明らかな国際法違反であり、マドゥロ大統領夫妻の安全確保と即時釈放を求める」との報道官談話を発表しています。

国連安保理の緊急会合では、中国の孫磊国連次席大使が「米国は安保理常任理事国でありながら、国際社会の深刻な懸念を無視し、ベネズエラの主権を恣意的に踏みにじった」と批判しました。

ただし、中国は以前からトランプ政権の「内政干渉」に反対を表明していたものの、軍事面での具体的支援には踏み込んでいませんでした。

ロシアの慎重な対応

ロシア外務省は「武力侵略行為」として米国を非難し、ベネズエラが「外部介入なしに自らの運命を決定する権利」を主張しました。国連安保理ではネベンジャ大使がマドゥロ大統領と妻の即時解放を要求しています。

しかし、ロシアの反応は比較的慎重です。プーチン大統領からの公式声明は発表されておらず、重要な地域同盟国を失うリスクと、地政学的な機会の両面を慎重に見極めているとの分析があります。

国連安保理での応酬

1月5日、ベネズエラとコロンビアの要請により、中国・ロシアの支持を得て国連安保理が緊急会合を開催しました。グテレス国連事務総長は「国際法の規則が尊重されなかった」と懸念を表明し、「危険な前例」と警告しました。

これに対し米国代表は「戦争ではなく、起訴された逃亡者に対する法執行措置」と反論。軍事侵略との指摘を否定しました。

国際秩序への影響と今後の展望

「力による現状変更」の前例

専門家からは、今回の軍事行動がロシアや中国による「一方的な現状変更」を増長させるリスクが指摘されています。米国自身が国際法を無視した武力行使を行うことで、ウクライナ問題や台湾問題における米国の批判の正当性が弱まるとの見方です。

「中国も台湾に対して同様の『斬首作戦』を正当化できるのではないか」との懸念も報じられています。

ベネズエラの今後

マドゥロ大統領の拘束を受け、ベネズエラ最高裁はロドリゲス副大統領を暫定大統領に任命しました。当初は米国への対抗姿勢を示していましたが、トランプ氏の「再攻撃」警告を受けて「米国と協力する」との姿勢に転換したと報じられています。

しかし、ベネズエラの石油産業復活には課題が山積しています。オリノコベルトの重質原油は採掘・精製に特殊な設備と高コストが必要であり、老朽化したインフラの再建には長期間を要します。

中南米地域への影響

中南米諸国の多くは米国の軍事行動に反発しています。欧州諸国も賛否が分かれており、日本政府は中立的な立場を維持しています。地域の安定化には程遠い状況であり、新たな火種となる可能性が指摘されています。

まとめ

トランプ政権によるベネズエラへの軍事攻撃とマドゥロ大統領の拘束は、国際秩序に大きな波紋を広げています。米国は「法執行措置」と主張していますが、中国・ロシアは「主権侵害」「国際法違反」と強く非難し、国連安保理でも対立が続いています。

背景には、世界最大の石油埋蔵量を持つベネズエラの戦略的価値と、中南米における米中ロの勢力争いがあります。トランプ政権の「西半球支配」構想が、国際的な緊張を高めるリスクは否めません。

今後は、ベネズエラ国内の安定化、石油産業の再建、そして国際社会の分断がどのように推移するかが焦点となります。中東、ウクライナに続く「第三の火種」とならないよう、国際社会の冷静な対応が求められています。

参考資料:

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