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by nicoxz

アンナミラーズ南青山に復活、井村屋の飲食戦略を読む

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はじめに

2026年2月13日、米国料理店「アンナミラーズ」が東京・南青山にオープンしました。2022年8月に国内最後の店舗だった高輪店が閉店して以来、約3年半ぶりの常設店舗の復活です。

運営する井村屋グループは「あずきバー」で知られる食品メーカーですが、今回の出店は単なるノスタルジーにとどまりません。食品事業と飲食事業の2本柱戦略の中核ブランドとしてアンナミラーズを位置づけ、関西などへの多店舗展開を視野に入れています。

アンナミラーズ南青山店の全容

外苑前駅から徒歩1分、32席の新店舗

アンナミラーズ南青山店は、東京メトロ銀座線外苑前駅から徒歩約1分のビルの1・2階に入っています。1970年代の米国郊外をイメージした店内に32席を配し、1階にはショーケースを設置してパイのテイクアウトにも対応しています。

この場所は特別な意味を持っています。アンナミラーズは1973年に東京・青山に日本国内1号店を開店しており、南青山への出店はまさに「原点回帰」です。

看板メニューのアメリカンパイ

アンナミラーズの代名詞であるアメリカンパイは、7種類が店内で焼きたてで提供されます。バナナ、チョコレート、フルーツクリーム、マロンのカスタードクリーム系パイに加え、アップルパイ、チェリーパイ、ニューヨークスタイルのチーズケーキが楽しめます。価格は1個税込み880〜935円です。

「ペンシルベニア・ダッチ」と呼ばれるアメリカ東部ペンシルベニアに住む人々の素朴で温かい家庭料理を原点としており、パイのほかにハンバーガーなどの食事メニューも提供しています。

変わらない制服のデザイン

アンナミラーズを語る上で欠かせないのが、ウェイトレスの制服です。ドイツの民族衣装「ディアンドル」をモチーフにしたチロル風のデザインは、アンナミラーズの象徴として長年親しまれてきました。

南青山店では制服のデザインは一切変更されず、現時点では落ち着いた色味の「えんじ色」で統一されています。このデザイン性の高い制服は、日本のアニメやファッション文化にも影響を与えたとされ、ブランドの核心的な価値の一つです。

アンナミラーズの歩みと閉店の経緯

1973年から続くブランドの歴史

アンナミラーズはアメリカ発祥のレストランチェーンで、1973年に東京・青山に日本1号店がオープンしました。その後、関東地区を中心に店舗展開を進め、ピーク時には複数の店舗を運営していました。

井村屋グループの外食・スイーツ事業の一環として運営されてきましたが、外食産業の競争激化や消費者の嗜好の変化もあり、徐々に店舗数を減らしていきました。

2022年の全店閉店と惜しまれた声

2022年8月31日、国内最後の店舗である高輪店が閉店しました。閉店が発表されると、多くのファンがSNSで惜別の声を投稿し、最終営業日には長蛇の列ができるほどの反響がありました。

閉店後もファンからの「復活してほしい」という要望は途切れることがありませんでした。イベント出店やオンラインショップでの限定商品販売など、ブランドの火を消さない取り組みが続けられていました。

井村屋グループの飲食2本柱戦略

食品メーカーから飲食複合企業へ

井村屋グループは、あずきバーや肉まんなどの食品製造で知られる企業です。しかし今回のアンナミラーズ復活は、同社が「食品と飲食の収益2本柱」を目指す戦略の一環として位置づけられています。

2025年12月には三重県津市に「Imuraya Sweets Marché Russelia」をオープンするなど、自社ブランドを活用した飲食事業の展開を加速させています。アンナミラーズは、その中でも中核となるブランドです。

関西への多店舗展開を視野

井村屋グループはアンナミラーズの関西などへの多店舗展開を視野に入れています。これまで関東中心だった店舗展開を全国に広げることで、ブランドの認知度向上と飲食事業の収益拡大を狙います。

南青山店の成功が、今後の出店計画を左右する試金石になるでしょう。テイクアウト対応やオンライン販売との連携など、新しい収益モデルの構築も課題です。

昭和レトロブームとの相乗効果

若者が求める「懐かしさ」

アンナミラーズの復活には、昭和レトロブームという追い風があります。井村屋フードサービスは、復活の理由として「閉店後に多くのお客様から店舗再開を要望する声をいただいたことや、若者を中心に昭和レトロブームが起きたこと」を挙げています。

純喫茶やクリームソーダ、昭和の雰囲気を残す飲食店が若い世代を中心に人気を集めており、アンナミラーズの1970年代アメリカを彷彿とさせる空間は、このトレンドと見事に合致しています。

ノスタルジーだけでは続かない

一方で、ブームに乗るだけでは飲食事業の持続的な成長は難しいことも事実です。高輪店の閉店に至った背景には、外食産業全体の構造的な課題がありました。人件費の上昇、原材料費の高騰、消費者のニーズの多様化といった問題は今も変わっていません。

南青山店では、27年間勤務したベテランスタッフが教育係として配置されるなど、サービス品質の維持にも注力しています。ブランドの伝統を守りながら、現代の消費者に受け入れられる形に進化させることが求められています。

注意点・今後の展望

アンナミラーズの復活が成功するかどうかは、オープン直後の話題性だけでは判断できません。ファンの期待に応えつつ、新規顧客を継続的に獲得できるかが鍵です。

32席という限られた席数で南青山という一等地の家賃を賄うには、客単価と回転率のバランスが重要になります。テイクアウトやオンライン販売との組み合わせが、収益構造を支える要素になるでしょう。

多店舗展開を目指すにあたっては、制服やパイといったブランドの核心を維持しながらスケールさせることの難しさもあります。画一的なチェーン展開ではなく、各店舗の個性を持たせる工夫が必要になるかもしれません。

まとめ

アンナミラーズの南青山復活は、単なる人気ブランドの再開にとどまらず、井村屋グループの飲食事業戦略における重要な一歩です。約3年半ぶりの常設店舗は、昭和レトロブームという時代の追い風も受けながら、食品メーカーが飲食事業で新たな収益の柱を築けるかを試す挑戦となっています。

変わらない制服と焼きたてパイという伝統を守りつつ、関西への多店舗展開を視野に入れた新たなアンナミラーズの展開に注目です。

参考資料:

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