ビットコイン急落で問われる「デジタルゴールド」の実力
はじめに
代表的な暗号資産であるビットコインが急落しています。2026年1月中旬には一時9万7000ドル台と2カ月ぶりの高値をつけましたが、1月22日までに大きく下落し、年初来の上昇がほぼ帳消しになりました。
トランプ米大統領がグリーンランドの領有権を巡って欧州に追加関税を示唆した際、株式市場と連動してビットコインも売りが広がりました。「デジタルゴールド」として金と同様の安全資産としての地位を期待されてきたビットコインですが、その実力が問われる局面を迎えています。
ビットコイン急落の経緯
トランプ関税ショックによる下落
2026年1月19日、ビットコインは大幅に下落しました。きっかけはトランプ大統領による欧州8カ国への追加関税の表明です。グリーンランドを「完全かつ全面的に購入する」まで関税をかけ続けると宣言したことで、リスク資産全般に売りが広がりました。
同日の米国株式市場も大幅下落し、ダウ工業株30種平均は870ドル安と10月以来の最悪の日となりました。ビットコインは株式市場と連動して下落し、「安全資産」としてではなく「リスク資産」としての性格を露呈しました。
2025年後半からの調整局面
ビットコインは2025年10月6日に史上最高値の12万6223ドルを記録しましたが、その後年末にかけて約30%下落しました。2025年の終値は前年比マイナス6.34%の8万7535ドルで着地し、2026年は重要な岐路に立っています。
2025年10月から11月にかけての暴落は、トランプ大統領による対中追加関税の発表や米中貿易紛争の激化懸念が主因でした。10月10〜11日には史上最大となる約190億ドル、11月初旬にも約20億ドルの清算(ロスカット)が記録されました。
「デジタルゴールド」としての評価
金との類似点
ビットコインが「デジタルゴールド」と呼ばれる理由は、金との類似点にあります。ビットコインは2100万BTCという発行上限が設定されており、埋蔵量に限りがある金と同様の希少性を持っています。
また、国や中央銀行が発行するものではなく、政府の金融政策から独立した資産であるという点も共通しています。インフレヘッジや地政学リスクへの備えとして購入する投資家も少なくありません。
金との決定的な違い
しかし今回の急落は、ビットコインと金の決定的な違いを浮き彫りにしました。同じ1月19日、金価格はトランプ関税を受けて史上最高値を更新しています。ビットコインが株と連動して下落する中、金は「有事の安全資産」として買われたのです。
専門家は、ビットコインは「リスク資産とデジタルゴールドの両方の性質を持っている」と指摘します。景気後退や地政学リスクが意識される局面では金との正相関が高まる傾向がある一方、市場の急落局面ではリスク資産として売られやすいという二面性があります。
金とビットコインの明暗
2025年の対照的なパフォーマンス
2025年のマーケットでは金とビットコインの明暗が分かれました。金は年間を通じて大幅に上昇し、中央銀行の継続的な購入や地政学リスクの高まりを背景に史上最高値を更新し続けました。
一方、ビットコインは10月の史上最高値から年末にかけて下落基調を強めました。トランプ政権の関税政策がリスク選好を低下させ、暗号資産市場全体の調整を促したとされています。
なぜ金は買われ、ビットコインは売られたのか
金には数千年の歴史があり、価値保存手段としての実績が確立しています。中央銀行が外貨準備として大量に保有しており、機関投資家にとって「安全資産」としての信頼性が高いといえます。
ビットコインは誕生から約17年と歴史が浅く、価格変動(ボラティリティ)も金と比較して極めて大きいです。機関投資家の参入は進んでいますが、まだ「投機的資産」としての側面が強く、不確実性が高まると売られやすい傾向があります。
機関投資家の動向
ブラックロックの大量購入
一方で、機関投資家によるビットコインへの関心は継続しています。2026年1月9日、世界最大級の資産運用会社であるブラックロックが、1月第1週に約1300億円相当のビットコインを購入したことが明らかになりました。
これは機関投資家が価格調整局面を購入機会と捉える姿勢を示しています。長期的な視点では、ビットコインを「デジタルゴールド」として位置づける見方は依然として根強いといえます。
ETFを通じた資金流入
2024年に承認されたビットコイン現物ETFを通じて、伝統的な金融プレイヤーの参入が進んでいます。中長期では機関投資家による需給の安定化が価格の下支えになると予想されています。
SBIホールディングスは金(51%以上)と暗号資産(49%以下)を組み入れた新たな投資信託を準備中で、2026年以降とされる規制緩和の解禁を見据えています。
2026年の見通しと注意点
価格予想レンジ
2026年のビットコイン価格予想レンジは、上値20万ドル(約3100万円)、下値7万5000ドル(約1162万円)と見込まれています。幅が広いのは、マクロ環境や規制動向など不確実性が大きいためです。
機関流入と供給ショックが噛み合えば50〜60万ドルに到達する可能性があるとする強気予想もある一方、金利動向やAI半導体株の調整リスク、暗号資産トレジャリー企業の財務リスクへの警戒も残ります。
混沌は2030年まで続く可能性
鴻海でEV事業を担う関潤CSOは「長ければ2030年までEV業界の混沌は続く」と述べていますが、暗号資産市場も同様の見方があります。規制の明確化や機関投資家の本格参入が進むまで、価格の乱高下は続く可能性があります。
投資における注意点
ビットコインへの投資を検討する際は、その価格変動リスクを十分に認識する必要があります。株式市場や為替市場が急落した際にビットコインも連動して下落するリスクがあり、「安全資産」としての機能は金と比較して限定的です。
また、金利が上昇する環境下では利息を生じないビットコインは相対的に不利になります。米国の金融政策の動向は引き続き重要な価格変動要因となります。
まとめ
トランプ関税ショックでビットコインが急落し、「デジタルゴールド」としての実力が試される局面となりました。同じ局面で金が最高値を更新したことと対照的に、ビットコインは株式市場と連動して売られ、リスク資産としての性格を露呈しました。
しかし、ブラックロックなど機関投資家による購入は続いており、長期的な「デジタルゴールド」としての地位確立に向けた動きは継続しています。投資家はビットコインが持つ二面性を理解した上で、ポートフォリオにおける位置づけを慎重に検討する必要があるでしょう。
参考資料:
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