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by nicoxz

金価格が乱高下、ペーパーゴールドが市場をかく乱する構造

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はじめに

金(ゴールド)価格が2026年2月に入り、激しい乱高下を見せています。2月2日には急落局面でサーキットブレーカーが発動され、翌3日には一転して急騰局面で再び発動されるという異例の事態となりました。

この相場の乱高下の背景には、上場投資信託(ETF)など証券化された「ペーパーゴールド」による取引の拡大があります。安全資産とされる金ですが、現物を伴わない金融商品を通じた投機的な取引が増えたことで、価格変動が激しくなっているのです。

この記事では、金価格の急変動の要因、ペーパーゴールドの仕組みとリスク、そして投資家が注意すべきポイントについて解説します。

金価格の急変動:連日のサーキットブレーカー発動

46年ぶりの急落

2026年1月30日、ニューヨーク商品市場で金価格が急落しました。下落率は10%を超え、46年ぶりの大幅安を記録しました。1月30日には史上最高値の5,590ドル前後を記録していた金価格は、わずか数日で5,000ドル台を割り込む急落となりました。

田中貴金属工業が発表した金の1グラムあたりの店頭小売価格(税込み)は、2月2日夕に前営業日比4,341円(14.6%)安の2万5,287円に急落しました。史上最高値の更新が続いていた矢先の急変でした。

急落の引き金となったFRB人事

金価格急落の直接的な引き金となったのは、トランプ大統領によるFRB次期議長の指名です。1月30日、トランプ大統領はケビン・ウォーシュ元FRB理事を次期議長に指名しました。

ウォーシュ氏は「タカ派」として知られ、金融緩和には慎重な姿勢をとってきた人物です。トランプ大統領が繰り返し要求してきた大幅利下げとは距離を置くとみられ、市場ではドルの価値が維持されるとの期待が広がりました。

金は通常、金利が低いときに買われやすい資産です。利下げ期待が後退したことで、金を売ってドルを買う動きが加速しました。また、史上最高値圏で積み上がっていた買いポジションからの利益確定売りも重なり、売りが売りを呼ぶ展開となりました。

連日のサーキットブレーカー発動

大阪取引所では、2月2日に金先物の売買を一時中断するサーキットブレーカーが発動されました。前営業日比の下げが制限値幅の10%に達したためです。

翌3日には一転して、金価格が急反発しました。前日までの2営業日で記録した歴史的な急落が押し目買いを誘い、金の現物価格は一時6.2%上昇しました。今度は上げが制限値幅の10%に達し、再びサーキットブレーカーが発動される事態となりました。

連日のサーキットブレーカー発動は、金市場の価格変動がいかに激しいものになっているかを象徴しています。

ペーパーゴールドとは何か

現物なしで取引される金

ペーパーゴールドとは、実際の金の現物を保有せずに、金の価格と連動する金融商品を通じて取引することを指します。代表的なものには、金ETF(上場投資信託)、金先物、金鉱株ファンドなどがあります。

投資家にとっては、現物の金を購入・保管する手間やコストをかけずに、金への投資効果を得られるというメリットがあります。少額から投資でき、売買も容易なため、個人投資家を中心に人気を集めてきました。

現物の何倍もの取引量

しかし、ペーパーゴールドには構造的な問題があります。実際の金保有量に対して、金の裏付けのない取引額は約85倍に達するとも言われています。ロンドン市場では、1オンスの金に対して10〜20倍の取引が重なっているという指摘もあります。

これは、同じ金を複数の投資家に「裏付け」として使い回している構造です。通常時は問題なく機能しますが、すべての投資家が「現物で引き出したい」と考えた瞬間に、取り付け騒ぎのように市場が混乱する可能性があります。

専門家の警告

著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏は、金を裏付けとするETFに殺到する投資家に対し、「金現物に交換できるとは考えるな」と警鐘を鳴らしています。大手運用会社のステート・ストリートが運用する500億ドル規模の金ETF「SPDRゴールド・シェア」は人気を集めていますが、すべての投資家が同時に現物を要求した場合、対応は困難です。

金ETFのリスクと市場構造

現物価格との乖離

金や貴金属のETFでは、市場での取引価格が1口当たりの純資産額を上回る異常事態が発生することがあります。三菱UFJ信託銀行が運用する「純金上場信託」では、取引価格が基準価格を16%上回り、乖離率が過去最大を記録したケースがあります。

個人投資家の旺盛な需要が相場の過熱を招く一方で、これまでの動きが逆回転するリスクには警戒が必要です。金価格が下落に転じた場合、プレミアム(上乗せ分)が急速に剥げ落ちる可能性があります。

投機マネーの流入

安全資産の筆頭とされる金ですが、近年は投機マネーの流入先としての側面が強まっています。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表は、「安全資産だからというよりは投機的な買いによるもの」であり、利益確定売りが出やすい状況だと指摘しています。

特に中国の投機マネーの影響は大きく、1月末の金・銀価格の急落では、中国勢の売りが連鎖的に広がったと報じられています。金から銅、スズに至るあらゆる金属価格の急騰の背景には、中国の投機筋から流れ込んだホットマネーの波がありました。

CMEの証拠金引き上げ

2月2日、米デリバティブ取引所運営会社CMEグループは、金先物の証拠金要件を6%から8%へ引き上げることを発表しました。価格変動リスクの高まりに対応した措置ですが、これにより一部の投機筋がポジションを縮小せざるを得なくなり、さらなる価格変動を招く可能性もあります。

投資家が注意すべきポイント

「安全資産」の両面性

金は伝統的に「安全資産」として認識されてきました。インフレヘッジ、地政学的リスクへの備え、分散投資の手段として、多くの投資家がポートフォリオに組み入れています。

しかし、今回の乱高下が示すように、金もまたリスク資産としての一面を持っています。専門家が指摘するように、4,000ドルから5,000ドル台という価格水準は歴史的な高値圏であり、調整のリスクは常に存在します。

「地政学的リスクをはやす金買いには要注意だ。陳腐化しやすい材料ゆえ、噂で買ってニュースで売るというような手口に利用されがち」という警告は、投資家が心に留めておくべきでしょう。

ボラティリティへの備え

金市場のボラティリティ(価格変動の大きさ)が高まっている現状では、リスク管理がより重要になります。高ボラティリティ時は「ハイリスク・ハイリターン」相場となり、損失も利益も大きく出る可能性があります。

投資家は自分のリスク許容度に応じて、ボラティリティの高い資産に投資する際はポジションサイズを小さくするなどの対策が必要です。分散投資の一環として金を保有している場合でも、過度な集中は避けるべきでしょう。

現物とペーパーゴールドの違いを理解する

金への投資を検討する際は、現物の金とペーパーゴールド(ETFなど)の違いを理解することが重要です。ETFは流動性が高く取引が容易ですが、現物との交換が保証されているわけではありません。

一方、現物の金地金や金貨は保管コストがかかりますが、発行体リスクがなく、極端な経済危機においても価値を保持する可能性があります。自分の投資目的に合った形態を選ぶことが大切です。

まとめ

2026年2月の金価格の乱高下は、現代の金市場が抱える構造的な問題を浮き彫りにしました。ペーパーゴールドの取引拡大により、金市場は以前よりも価格変動が激しくなっています。

FRB新議長の指名という単一のイベントが、46年ぶりの急落と翌日の急反発という劇的な値動きを引き起こしたことは、投機マネーがいかに金市場に流入しているかを示しています。

金は依然として分散投資の有力な選択肢ですが、「安全資産」という言葉を過信することは危険です。投資家は、ペーパーゴールドのリスクを理解した上で、自身のリスク許容度に合った投資判断を行うことが求められます。

市場環境の変化に応じて、冷静にポートフォリオを見直す姿勢が、今後ますます重要になるでしょう。

参考資料:

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