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by nicoxz

中国軍機関紙が張又俠氏らを非難「国家に極めて悪質な影響」

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はじめに

2026年1月24日、中国国防省は軍制服組トップである張又俠・中央軍事委員会副主席と、劉振立・統合参謀部参謀長を「重大な規律・法律違反」の疑いで調査すると発表しました。

翌25日付の解放軍報(人民解放軍の機関紙)は、社説で両氏を「中国共産党や国家、軍隊に極めて悪質な影響を及ぼした」と厳しく非難しました。軍の最高指導機関である中央軍事委員会のメンバーに対する異例の批判です。

この記事では、張又俠氏らの失脚の背景、習近平体制下で続く軍の大粛清、そして中国軍への影響について解説します。

張又俠氏の調査発表

経緯と発表内容

中国国防省は2026年1月24日、中国共産党中央委員会の審議を経て、張又俠・中央政治局委員兼中央軍事委員会副主席と、劉振立・中央軍事委員会委員兼統合参謀部参謀長について、「重大な規律・法律違反」の疑いで立件し、審査・調査を行うと発表しました。

発表に先立ち、両氏は1月20日の省部級高官「専題研討班」開班式を欠席し、23日の結業式も欠席していたことから、失脚の噂が広がっていました。

解放軍報の社説

25日付の解放軍報は、「堅決打贏軍隊反腐敗鬥爭攻堅戰持久戰總體戰」(軍の反腐敗闘争の攻防戦・持久戦・総体戦に断固勝利しよう)と題した社説を一面に掲載しました。

社説は「張又俠、劉振立は党と軍の高級幹部でありながら、党中央・中央軍事委員会の信任を深刻に辜負した」「軍事委員会主席責任制を深刻に践踏・破壊した」「党の軍に対する絶対的指導を危うくする政治・腐敗問題を深刻に助長・影響した」と厳しく批判しました。

張又俠氏の経歴

軍の実力者

張又俠氏は1950年7月生まれで、人民解放軍の上将です。総装備部部長、装備発展部部長などを歴任し、2017年から中央軍事委員会副主席を務めてきました。

習近平国家主席をトップとする中央軍事委員会で、張氏は制服組のナンバー1として軍の実務を取り仕切る立場にありました。軍の装備調達や近代化を担う要職を歴任しており、軍における影響力は極めて大きいものでした。

共産党中央政治局員

張氏は共産党の中央政治局員でもあり、党内でも最高指導層の一角を占めていました。政治局員が汚職の疑いで調査を受けるのは、習近平体制下でも異例のことです。

中央軍事委員会の異常事態

7人から2人へ

習近平国家主席をトップとする中央軍事委員会は本来7人で構成されます。しかし、ナンバー3の何衛東副主席をはじめとする幹部が相次いで解任され、今回の2人の調査対象入りにより、メンバーは習近平主席と張昇民副主席の2人だけとなりました。

これは極めて異例の事態です。軍の最高指導機関がこれほど少人数になったことはなく、軍の指揮統制に影響を及ぼす可能性も指摘されています。

ホームページから名前削除

張又俠氏と劉振立氏の名前は、中央軍事委員会のホームページから既に削除されています。これは事実上の解任を意味しており、復帰の可能性は極めて低いとみられます。

習近平体制下の軍粛清

止まらない反腐敗闘争

習近平政権下では、人民解放軍における大規模な汚職摘発が続いています。2023年から2024年末にかけて、少なくとも30人の軍幹部が突然更迭されました。

特に深刻なのはロケット軍(核ミサイル部隊)です。2015年の創設以来、4代連続で司令官が汚職などにより失脚しています。習主席は2024年10月にロケット軍拠点を視察して規律徹底を訴えましたが、その後任司令官にも汚職が発覚しました。

「福建閥」の失脚

習近平主席の福建省勤務時代からの人脈「福建閥」と呼ばれる軍人たちも、相次いで失脚しています。習主席は彼らを軍の要職に送り込んで改革を進めようとしましたが、側近中の側近でさえ汚職が発覚し、党籍剥奪や失脚に追い込まれています。

中央軍事委員会政治工作部長の苗華氏も2024年11月に「重大な規律違反」で停職となりました。苗氏は習主席とは福建省時代からの腹心とされていた人物です。

国防相も3人連続失脚

国防相(国防部長)についても、魏鳳和氏、李尚福氏に続き、董軍氏も汚職容疑で取り調べを受けているとの報道があります。事実であれば、3人連続での失脚となります。

軍への影響と分析

米情報機関の見方

米国の情報機関は、中国軍における腐敗は非常に広範囲に及んでおり、習主席が向こう数年間に大規模な軍事行動を検討する可能性は低いと分析しています。

特にロケット軍では、腐敗の度合いが深刻で、装備を効果的に発揮することが難しい可能性が指摘されています。武器調達に関わる装備部門での汚職が、軍の近代化を損なっているとみられています。

「三期疊加」の懸念

一部の分析では、中国軍が「三期疊加」(三つの時期が重なる)という困難な局面に入っているとの見方があります。大規模な粛清による人材不足、組織の動揺、そして装備調達の遅れが同時に発生しているという懸念です。

台湾問題への影響

軍の混乱は、台湾をめぐる情勢にも影響を与える可能性があります。軍幹部の大量失脚は、対台湾作戦の計画や準備にも支障をきたす恐れがあるとの指摘もあります。

今後の展望

粛清は続くか

解放軍報の社説は「冰凍三尺非一日之寒、除三尺之冰也非一日之功」(三尺の氷は一日にして成らず、三尺の氷を除くも一日にして成らず)と述べ、反腐敗闘争の長期化を示唆しています。

習主席は軍の近代化を2027年までに実現することを目標としており、それまでに軍の「浄化」を完了させる意向とみられます。今後も高級幹部の摘発が続く可能性があります。

中央軍事委員会の再編

現在2人だけとなった中央軍事委員会の人事がどう再編されるかが注目されます。次期党大会を待たずに臨時の人事が行われるのか、それとも少人数体制が続くのか、今後の動きが焦点となります。

まとめ

張又俠・中央軍事委員会副主席の調査は、習近平体制下で続く軍の大粛清の新たな局面を示しています。軍の最高幹部でさえ例外ではないという強いメッセージが込められています。

解放軍報が「国家に極めて悪質な影響を及ぼした」と厳しく非難したことは、単なる汚職事件を超えた政治的な意味合いがあるとみられます。

中央軍事委員会が2人だけという異常事態の中、中国軍がどう再編されるか、そしてそれが対外政策にどう影響するかが今後の焦点です。

参考資料:

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