衆院解散で激変する日本政治、新党結成と政界再編の全容
はじめに
2026年1月23日、高市早苗首相は通常国会の召集日に衆議院を解散しました。1月27日公示、2月8日投開票という日程は、解散から投開票まで16日間と戦後最短の短期決戦となります。
この解散の背景には、高市内閣の高い支持率だけでなく、日本政治を根底から揺るがす政界再編の動きがあります。公明党が約26年続いた自民党との連立を解消し、立憲民主党と新党「中道改革連合」を結成。一方、自民党は日本維新の会と新たな連立政権を樹立しました。
本記事では、この歴史的な政界再編の経緯と各党の動向、そして衆院選の争点について詳しく解説します。
高市首相が「未来投資解散」を決断した背景
高い内閣支持率と政権選択への意欲
高市首相が通常国会冒頭での解散に踏み切った最大の理由は、高い内閣支持率にあります。日本経済新聞社の世論調査によると、高市内閣の支持率は2025年12月時点で75%に達し、10月の内閣発足以来70%台を維持しています。
高市首相は1月19日の記者会見で、「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、今、主権者たる国民の皆様に決めていただく」と述べ、解散の決断を表明しました。2025年10月の総裁選勝利後、公明党の連立離脱により衆参で過半数を持たない少数与党として政権運営を余儀なくされてきたことが、早期の「政権選択選挙」実施への強い意欲につながりました。
「未来投資解散」の意味
自民党はこの解散を「未来投資解散」と名付けました。高市首相は「挑戦で未来をつくり上げる」というメッセージを掲げ、日本経済の再生と安全保障の強化を訴えています。
一方、野党からは厳しい批判の声が上がっています。国民民主党の玉木雄一郎代表は「経済後回し解散」、立憲民主党系の安住淳氏は「税金の無駄遣い解散」、社民党の福島瑞穂党首は「自分勝手暴走解散」とそれぞれ命名し、通常国会での2026年度予算案審議を経ずに解散に踏み切ったことを批判しています。
通常国会冒頭解散は60年ぶり
通常国会での冒頭解散は、1966年末のいわゆる「黒い霧解散」以来、実に60年ぶりの出来事です。また、投開票日が2月となるのは1990年の第39回衆議院議員総選挙以来36年ぶりであり、1994年に現行の小選挙区比例代表並立制が導入されて以降では初めてとなります。
政界再編の震源地:公明党の連立離脱
26年続いた自公連立の終焉
2025年10月、日本政治史に大きな転換点が訪れました。公明党が野党時代を含め26年間続いた自民党との連立政権を解消したのです。
この決断の背景には、2025年の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利したことがあります。公明党は自民党の右傾化を懸念し、連立解消という重大な決断に至りました。創価学会は、公明党の創設者である池田大作名誉会長(2023年11月死去)の3回忌に合わせて、「自民党が民衆からかい離したため、民衆の利益を重視する立党の原点に立ち返り、連立を解消した」と総括しています。
「中道改革」の旗印を掲げる
連立離脱後の2025年11月、公明党は「中道改革」を掲げ、5本柱の政策を打ち出しました。その内容は、現実的な外交・防衛政策と憲法改正、政治改革と選挙制度改革などを含むものでした。
公明党は「今後は、中道改革勢力の結集の『軸』の役割を果たす」という方針を明確にし、新たな政治勢力の形成に向けて動き出しました。
新党「中道改革連合」の誕生
立憲民主党との電撃合流
2026年1月15日、立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表が国会内で会談し、新党結成で合意しました。高市首相による解散表明の直前というタイミングでの電撃的な合流発表は、政界に大きな衝撃を与えました。
西田幹事長は、公明党が掲げてきた「中道改革の5つの政策の柱」について、立憲民主党との間で「考え方がほぼ一致していることを確認できた」と説明。「突然の解散を契機に、新党『中道改革連合』の結成へ一気に進んだ」と経緯を明かしました。
新党の枠組みと所属議員
新党結成にあたっては、いくつかの重要な取り決めがなされました。立憲民主党と公明党は解党せず、中道改革の理念に賛同した衆議院議員が離党して新党に参加する形式が採られます。参議院議員および地方議員は引き続き従来の党に所属します。
1月22日に開催された結党大会では、野田・斉藤両氏が共同代表に正式就任しました。同日時点の所属国会議員は、立憲民主党から144人、公明党から21人の計165人となっています。
選挙協力の形態
衆院選の比例代表では新党の下で統一名簿を作成し、小選挙区では旧公明党側が候補擁立を見送り、旧立憲民主党側の候補を支援する形での選挙協力が行われます。時事通信の試算によると、各選挙区で公明支持層の1万票が自民党候補から立民候補に流れたと仮定した場合、35選挙区で当落が入れ替わる可能性があるとされています。
自民党と日本維新の会の連立政権
新たな連立の枠組み
公明党の連立離脱を受け、自民党は日本維新の会と新たな連立政権を樹立しました。2025年10月20日に署名された連立政権合意書には、両党の政策協調に関する様々な内容が盛り込まれています。
食料品消費税ゼロの検討
連立合意の目玉政策の一つが、食料品の消費税に関する検討です。合意書には「飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行う」と明記されました。
維新は連立協議で12項目の政策要望を提示し、物価高対策として「食品消費税の2年間ゼロ」を強く求めました。ただし、年間約5兆円の財源確保が課題となっており、実現には時間がかかる見通しです。
自民党の鈴木俊一幹事長は2026年1月18日、時限的な「食料品の消費税率ゼロ」を衆院選の公約に盛り込むことに前向きな姿勢を示し、「連立合意に書かれたことを誠実に実現するのが基本的な立場だ」と述べています。
衆院選の争点と各党の主張
自民党の公約
自民党は政権公約で5つの重点施策を掲げています。「強い経済で、笑顔あふれる暮らしを。」「地方が日本経済のエンジンに。」「わが国を守る責任。国際秩序を担う日本外交。」「すべての世代の安心と次世代への責任。」「時代にふさわしい新しい憲法を、私たちの手で。」という内容です。
中道改革連合の立場
野田共同代表は「自民党の右傾化を食い止めるため、中道を分厚くする。政権交代に向けた現実的な選択肢を示す」と決意を表明しています。斉藤共同代表も「中道主義という共通の旗印のもとに結集し、包摂主義、共生社会を目指す」と述べ、分断から協調の政治を訴えています。
国民民主党の独自路線
国民民主党は中道改革連合への参加を見送り、独自路線を貫く方針です。玉木代表は「もっと手取りを増やす」をスローガンに、年収の壁の解消や所得制限の撤廃を公約に掲げています。直近の国政選挙で議席を増やしており、今回の衆院選でも躍進が期待されています。
今後の展望と注意点
短期決戦の影響
解散から投開票まで16日間という戦後最短の短期決戦は、各党の選挙準備に大きな影響を与えます。特に、新党「中道改革連合」は結党直後の選挙戦となるため、組織の一体化や候補者調整に課題を抱えています。
予算審議への影響
通常国会で審議予定だった2026年度予算案は、解散により3月末までの成立が困難になりました。選挙後の特別国会で予算審議が行われることになりますが、政権の枠組みによっては予算編成の方針が大きく変わる可能性もあります。
投票における注意点
今回の衆院選では、衆院選と最高裁裁判官の国民審査で期日前投票の実施期間がずれる可能性があります。期日前投票を予定している有権者は、両方の投票ができる期間を事前に確認することが重要です。
まとめ
2026年1月23日の衆院解散は、単なる総選挙の実施にとどまらず、日本政治の構造を大きく変える転換点となっています。公明党の自民党との連立解消、立憲民主党との新党「中道改革連合」結成、そして自民党と日本維新の会の新連立という政界再編は、戦後政治史でも類を見ない大変動です。
2月8日の投開票では、自維連立政権が過半数を維持できるか、それとも中道改革連合を中心とした政権交代が実現するかが最大の焦点となります。有権者一人ひとりが各党の政策や候補者を比較検討し、日本の将来を左右する重要な選択を行うことが求められています。
参考資料:
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