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by nicoxz

2026年衆院選で問われる日本の政党システムの行方

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はじめに

2026年1月19日、高市早苗首相が通常国会開会直後に衆議院解散を表明しました。投開票は2月8日に行われ、1月解散・2月投開票という異例の冬季選挙となります。現行憲法下で1月解散は1955年の鳩山一郎内閣、1990年の海部俊樹内閣に続いて3回目という極めて珍しいケースです。

今回の衆院選が注目される理由は、単なる政権選択にとどまりません。立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」の結成、自民党と日本維新の会の連立政権など、政界再編が大きく進む中での選挙となります。有権者は政策や政権だけでなく、日本の「政党システム」そのものを選択することになるのです。

この記事では、多党化が進む日本政治の現状と、今回の衆院選が持つ意味について解説します。

政党システムとは何か

政治学における定義と類型

政党システムとは、政党間の競争のあり方や力関係の構図を指す政治学の概念です。フランスの政治学者モーリス・デュヴェルジェは「小選挙区制は二党制を、比例代表制は多党制を生む」という法則を提唱しました。

この法則によると、小選挙区制では当選者が1人のため、第3党以下は議席獲得が困難になります。有権者も「死票」を避けるため有力な2党に投票が集中する心理的要因が働きます。一方、比例代表制では得票率に応じて議席が配分されるため、少数政党でも議席を獲得しやすくなります。

日本は1994年から小選挙区比例代表並立制を導入しています。小選挙区制と比例代表制を組み合わせたこの制度は、両制度の長所を取り入れる狙いがありました。しかし、混合選挙制度では「デュヴェルジェの法則」の働きが弱まるとされ、実際に日本では二大政党化と多党化の両方の傾向が見られます。

有効政党数で見る日本政治の変化

政党システムを分析する指標として「有効政党数」があります。これは各党の議席占有率の2乗を足した値の逆数で算出され、実質的に影響力を持つ政党の数を示します。

例えば4党が各25%ずつの議席を持てば有効政党数は4となりますが、1党が60%、他の3党が合計40%なら約2.5になります。日本では中選挙区制下では3〜4程度、小選挙区制導入後は2に近づく傾向がありましたが、近年は再び上昇しています。

2024年の衆院選以降、有効政党数は歴代の自民党政権で最も高い水準となりました。与党と野党第1党がともに勢力を落とし、新興政党が伸長したことで、欧州型の多党制に近づいているのです。

政界再編の動き

立憲民主党と公明党の新党結成

今回の衆院選に向けた最大の政界再編は、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」の結成です。2026年1月15日に両党は党首会談を行い、中道路線の政策に賛同する勢力の結集を目指して新党を立ち上げることで合意しました。

この動きの背景には、公明党の約26年にわたる自民党との連立解消があります。2025年10月の高市政権発足直前、企業・団体献金の規制強化で自民党と折り合えなかった公明党は連立を離脱しました。斉藤代表は「保守化、右傾化する高市政権への対立軸を作る」として中道勢力の結束を掲げています。

新党の綱領には「極端主義に立ち向かい、責任ある中道勢力として立ち上がる」と記され、「専守防衛を基本に現実的な外交防衛政策を進める」方針が示されています。非核三原則の堅持や選択的夫婦別姓の導入では両党の政策が一致しますが、安全保障やエネルギー政策では違いも残ります。

選挙協力としては、公明党が比例代表での戦いに注力し、立憲民主党は比例で公明党候補を上位に優遇する一方、公明党は小選挙区で立憲候補を応援するという枠組みが想定されています。

自民党と日本維新の会の連立

高市政権は公明党に代わり日本維新の会と連立を組んでいます。2025年10月21日に成立したこの連立は、閣外協力という形態をとり、維新は「いつでも離脱可」の構えを維持しています。

連立政権合意には、食料品への2年間の消費税免除の法制化検討、給付付き税額控除の制度設計推進などが含まれています。また、維新が条件とした「副首都構想」については2026年通常国会での法案成立を目指すことで合意しました。物価高対策として、ガソリンの暫定税率は2025年末に廃止され、1リットルあたり約25円の値下げが実現しています。

ただし、自民と維新は選挙協力ができる関係にはなく、連携が長期的に続くかは不透明です。維新としては閣外協力で半身の姿勢を保ちながら、独自の改革路線をアピールする戦略と見られます。

国民民主党と新興政党の動向

国民民主党の玉木雄一郎代表は、立憲・公明の新党から参加を打診されましたが、「選挙のために政策や基本理念を変えることはしない」として独自路線の堅持を表明しました。

一方、れいわ新選組、参政党、日本保守党などの新興政党も存在感を示しています。2024年衆院選ではこれらの新興勢力が伸長し、日本保守党は初議席を獲得しました。れいわ新選組は2026年1月18日に31名の公認候補予定者を発表しています。

これらの多様な政党の存在が、日本政治の多党化傾向を象徴しています。

今回の衆院選の論点

高市首相の解散判断

高市首相が通常国会早期に解散に踏み切った背景には、70%を超える高い内閣支持率があります。自民党内では「支持率が高いうちに議席回復を目指すべき」との声があり、首相は「抜本的な政策転換の是非について堂々と審判を仰ぐ」と強調しました。

首相は「未来投資解散」と名付け、危機管理や成長を後押しする積極投資を進めるとしています。また、維新との新たな連立に対しても国民の信任を得たいとし、首相としての進退を懸けると断言しました。

一方で、通常国会で審議予定だった2026年度予算案は、解散により3月末までの成立が難しくなりました。野党からは「国民生活を政局の犠牲にしている」との批判が出ていますが、首相は補正予算での物価高対策を挙げ「万全の態勢を整えた上での解散」と反論しています。

有権者に問われる選択

今回の選挙で有権者が選ぶのは、単に政権や個々の政策だけではありません。多党化の流れが続くのか、それとも二大政党ブロック化や自民優位体制への回帰に向かうのか、政党システムそのものの選択が問われています。

自民・維新連立と立憲・公明連合という二つのブロックが対峙する構図は、ある種の「二大政党ブロック制」とも言えます。しかし、国民民主党や新興政党の動向次第では、従来の多党化傾向が継続する可能性もあります。

注意点・展望

選挙制度と政党システムの関係

選挙結果が政党システムをどう変えるかは、選挙制度との関係で考える必要があります。日本の小選挙区比例代表並立制は、小選挙区部分で二大政党化を促す力と、比例代表部分で多党化を許容する力が併存しています。

政治学者の分析では、日本は社会的亀裂が少なく二大政党制に適合的な面がある一方、公明党や共産党など特定の支持基盤を持つ政党の持続的存在により、穏健な多党制の側面も大きいとされています。今回の選挙で立憲・公明が合流したことで、この構図がどう変化するか注目されます。

今後の政局展望

選挙結果次第で複数のシナリオが想定されます。自民・維新が議席を伸ばせば高市政権の基盤は強化されますが、「中道改革連合」が躍進すれば政権交代の可能性も出てきます。いずれの陣営も過半数に届かなければ、さらなる政界再編や連立交渉が必要になるでしょう。

高市首相の総裁任期は2027年9月末までです。今回の選挙で十分な議席を確保できれば長期政権への道が開けますが、議席を減らせば求心力低下は避けられません。一方、野党側も政権担当能力を示せるかどうかが問われることになります。

まとめ

2026年2月8日投開票の衆院選は、単なる政権選択を超えた意味を持っています。立憲・公明の新党結成、自民・維新の連立という政界再編の中で、日本の政党システムそのものが問われる選挙となります。

多党化が進むのか、二大政党ブロック化に向かうのか。有権者一人ひとりの投票が、今後の日本政治の方向性を決めることになります。各党の政策や候補者をよく比較検討し、自分なりの判断で投票に臨むことが重要です。

参考資料:

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