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by nicoxz

ドルの信認揺らぐ、トランプ政権のFRB介入と金高騰

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はじめに

基軸通貨ドルの値動きが不安定になっています。2026年1月、金価格が1オンス5,500ドルを超え史上最高値を連日更新する一方、ドルは4年ぶりの安値圏に沈んでいます。この異常事態の根本にあるのは、トランプ米大統領によるFRB(連邦準備制度理事会)の独立性への攻撃です。

司法省によるパウエルFRB議長への捜査、利下げ圧力、そして後任人事をめぐる思惑。市場では「セル・アメリカ(米国売り)」の動きが広がり、通貨の信認そのものが問われる事態に発展しています。本記事では、ドル不安定化の背景と影響を詳しく解説します。

トランプ政権によるFRBへの政治介入

司法省がFRB議長を捜査する異例の事態

2026年1月、米司法省(DoJ)がFRBに対し召喚状を発行しました。パウエル議長が25億ドル規模のFRB本部ビル改修工事に関して行った議会証言をめぐる刑事捜査で、現職のFRB議長が捜査対象となるのは前例のない事態です。

パウエル議長はこの捜査を「金融政策に影響を与えようとする試み」と公然と批判しました。市場関係者の多くも、この捜査をトランプ大統領がFRBの政治的独立性を剥奪しようとする動きの一環と見ています。投資顧問会社エバーコアISIは「明白にリスクオフの事態」と警告し、グローバル投資家が米国資産にリスクプレミアムを上乗せすると分析しました。

利下げ圧力と後任人事

トランプ大統領はFRBに対し繰り返し利下げを要求してきました。1月28日のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が3.50〜3.75%に据え置かれましたが、2名の委員が即時利下げを支持する非全会一致の決定となりました。

パウエル議長の任期は2026年5月に満了を迎えます。トランプ大統領は近日中に後任を指名するとみられていますが、パウエル氏が理事として残留するかは不透明です。後任人事次第では、FRBの独立性がさらに損なわれるリスクがあります。

ドル安と金高騰が示す市場の不信

「セル・アメリカ」の動き

1月12日、司法省のFRB捜査が報じられると、ドルと米株価指数先物は急落しました。CNBCは「セル・アメリカ(米国売り)」トレードと表現し、投資家が米国資産全般を敬遠する動きが広がっていると報じました。

トランプ大統領はドルの4年ぶり安値への下落を問題視しない姿勢を示し、通貨安を容認するシグナルを市場に送りました。このことがドル売りに拍車をかけています。ドル円相場も1月に155円台まで急落し、約6カ月ぶりの大幅下落を記録しました。

金価格の記録的高騰

金価格は2025年に年間65%上昇し、1979年以来最大のパフォーマンスを記録しました。2026年に入ってからも上昇が加速し、1月中旬に4,620ドル、1月28日に5,300ドル、そして1月29〜30日には5,500ドルを超える水準まで駆け上がっています。

国内でも田中貴金属工業の小売価格が1グラム2万6,000円を初めて超えました。金の高騰は単なる投機ではなく、ドルという通貨そのものへの不信感の表れです。

世界の中央銀行の「脱ドル化」

金価格の構造的な上昇を支えているのが、世界の中央銀行による「脱米ドル化」の動きです。2022年のウクライナ侵攻を受けた対ロシア制裁でロシアの外貨準備が凍結されたことが転機となり、各国中央銀行が米ドル資産への依存を減らし、金の保有を増やす動きが加速しました。

メタルズ・フォーカスは「FRBの独立性への懸念と米国の財政政策の課題がドルへの信頼を侵食している」と分析しています。ゴールドマン・サックスは、トランプ大統領がFRBへの攻撃を続ければ金価格が5,000ドルに到達する可能性があると予測していましたが、その水準はすでに突破されています。

注意点・展望

米国債格付けへの影響

フィッチ・レーティングスはFRBの独立性を米国ソブリン格付け「AA+」の重要な支持要因と位置づけています。FRBの独立性が実質的に損なわれた場合、米国債のさらなる格下げリスクが浮上します。格下げは世界の金融市場に広範な影響を及ぼす可能性があります。

ドル基軸通貨体制の行方

短期的にはドルが基軸通貨の地位を失うことは考えにくいですが、信認の低下は長期的なリスクを蓄積させます。市場のテーマが「目先の金利差」から「米ドルという通貨そのものへの不信感」に移行している点は、構造的な変化の兆候です。

FRBの次期議長人事が通貨の信認を左右する重要なポイントとなります。金融政策の独立性を尊重する人物が選ばれるか、政治的に従順な人物が選ばれるかによって、市場の反応は大きく分かれるでしょう。

まとめ

トランプ政権によるFRBへの前例のない政治介入が、基軸通貨ドルの信認を揺るがしています。金価格の5,500ドル超えという歴史的高騰は、市場が米国の制度的安定性に疑念を抱いていることの明確なシグナルです。

通貨の信認は一度失われると回復に長い時間がかかります。FRBの独立性を守ることは、米国経済だけでなく、ドルに依存する世界経済全体の安定にとって不可欠です。投資家にとっては、資産の分散と為替リスクへの備えが従来以上に重要な局面です。

参考資料:

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