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by nicoxz

金が46年ぶり大暴落、FRB新議長指名が引き金に

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はじめに

2026年1月30日、金の先物市場で歴史的な暴落が発生しました。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物価格は1日で10%超の下落を記録し、これは1980年以来、実に46年ぶりの大幅安です。銀に至っては30%以上の暴落となり、市場参加者に衝撃を与えました。

暴落の引き金となったのは、トランプ大統領がFRB(米連邦準備理事会)の次期議長にケビン・ウォーシュ氏を指名したことです。タカ派として知られるウォーシュ氏の指名は「イエスマン」を排除する姿勢と受け止められ、金の先高観が急速に後退しました。本記事では、この歴史的暴落の背景と今後の展望を解説します。

ウォーシュ氏指名の衝撃

「タカ派」の経歴と実績

ケビン・ウォーシュ氏は2006年から2011年にかけてFRB理事を務めた経験を持ちます。2006年の就任時は35歳で、FRB史上最年少の理事でした。スタンフォード大学で公共政策を学び、ハーバード大学で法学の学位を取得後、モルガン・スタンレーで副社長を務めた経歴の持ち主です。

FRB理事時代には、2008年のリーマン・ショックでバーナンキ議長の側近としてウォール街との連絡役を担いました。第1弾の量的緩和(QE1)は支持したものの、その後の追加緩和策には強く反対し、第2弾QEの開始直後の2011年にFRBを辞任しています。ウォーシュ氏はQEを「逆ロビンフッド」と呼び、資産保有者を利するだけで格差を拡大させると批判してきました。

市場の予想を裏切った人選

金融市場では、トランプ大統領が大幅な利下げに従順な人物を指名するとの観測が強まっていました。この「イエスマン」予想が金や銀への投機資金を呼び込む一因となっていたのです。FRBが緩和的な姿勢を強めればドル安が進み、金の価値は相対的に高まるという読みです。

しかし、ウォーシュ氏の指名はこの思惑を根本から覆しました。エバコアISIのクリシュナ・グハ氏は「タカ派としての評判があり、独立性があると見られているため」と評しています。市場はFRBのバランスシート縮小と金利の長期的な高止まりを織り込み始め、ドル高・金安の急激な巻き戻しが始まりました。

暴落のメカニズム

投機ポジションの巻き戻し

金価格は2026年1月だけで29%上昇し、一時5600ドルに迫る水準まで急騰していました。銀も1トロイオンス120ドルの史上最高値をつけていました。この急騰の裏側では、レバレッジを効かせた投機的なポジションが大量に積み上がっていました。

1月中旬には銀市場で2万5000枚もの大口ブロック取引が成立し、1週間で20%もの急騰を引き起こす場面もありました。こうした投機的な買いが価格を押し上げる一方、相場の脆弱性を高めていたのです。

CMEの証拠金引き上げ

CMEグループは暴落に先立ち、貴金属先物の証拠金率を段階的に引き上げていました。銀・プラチナ・パラジウムは9%から11%へ、金は5%から6%に引き上げられていました。暴落後にはさらに引き上げが行われ、金は6%から8%へ、銀は11%から15%へと設定されました。

証拠金の引き上げは、レバレッジ取引を行う投機筋に追加の担保差し入れを求めるものです。資金が足りない投機筋はポジションを強制的に解消せざるを得ず、これが大量の売り注文を生みます。高頻度取引(HFT)のアルゴリズムが自動的に売り注文を出す中、数時間で10億ドル以上のレバレッジポジションが解消されました。

「フラッシュ・クラッシュ」の様相

今回の暴落は、ファンダメンタルズの変化というよりも、ポジション解消の連鎖による「フラッシュ・クラッシュ」の側面が強いものでした。証拠金引き上げによる自動売りが新たな売りを誘発し、価格が急落すると更なるマージンコールが発生するという悪循環が生まれました。金は一時5600ドルから4718ドルまで急落し、銀は120ドルから75ドルへと38%近くも下落しました。

1980年との比較

ハント兄弟事件との類似点

今回の暴落は、1980年の金暴落や「ハント兄弟事件」として知られる銀の暴落と比較されています。1980年にはハント兄弟が銀を買い占めた結果、価格が急騰しましたが、取引所が証拠金を大幅に引き上げたことで暴落に転じました。

2026年の暴落も、投機的な買いの膨張と取引所の証拠金引き上げという構図は類似しています。ただし、2026年のケースは産業需要や地政学リスクなど複数の要因が絡み合っており、1980年のような単純な投機の崩壊とは異なる面もあります。

構造的な違い

1980年当時と比べて、現在の市場は電子取引とアルゴリズム取引が主流です。これが暴落のスピードを加速させる一方、流動性の回復も速くなる可能性があります。また、中央銀行の金保有やETFを通じた投資など、金の保有構造も大きく変化しています。

注意点・展望

短期的なリスク

アナリストのアミット・ゴエル氏は、COMEX金が4900ドルの水準を回復できなければ、2026年10月までに3800ドルまで下落する可能性を指摘しています。証拠金引き上げの影響が続く中、投機ポジションの整理にはなお時間がかかる可能性があります。

一方で、流動性危機がFRBのレポ市場介入を迫る事態になれば、年末までに6000ドルへの回復も視野に入るとの見方もあります。

ウォーシュ氏の承認動向

ウォーシュ氏のFRB議長就任には上院の承認が必要です。共和党のトム・ティリス上院議員は、司法省によるパウエル議長への調査が解決するまで承認に応じない姿勢を示しており、プロセスは順調とは言えません。承認が遅れれば、市場の不確実性が長期化する可能性があります。

長期的な見通し

多くの金融機関は、貴金属の長期的な強気見通しは維持されるとの立場です。ドル安基調の再開、中央銀行による金の買い増し、地政学リスクの持続など、金価格を支える構造的な要因は健在です。今回の暴落は、急激な値上がりの後に起きた調整局面であり、トレンドの転換ではないとする見方が大勢です。

まとめ

金価格の46年ぶりの大暴落は、FRB議長人事という政策要因と、証拠金引き上げという市場構造の要因が重なって生じました。ウォーシュ氏のタカ派的な経歴が「緩和期待」を打ち消し、レバレッジの巻き戻しが暴落を増幅させた構図です。

投資家にとっての重要なポイントは、価格急騰の裏にはレバレッジの積み上がりがあり、そのポジション解消は急激かつ大規模になり得るということです。今後はウォーシュ氏の上院承認プロセス、2月の米経済指標、そしてFRBの金融政策の方向性が、金市場の行方を左右する鍵となります。

参考資料:

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