資生堂発「ツバキ」のファイントゥデイ、米ベインが2000億円で買収へ
はじめに
米投資ファンドのベインキャピタルが、ヘアケアブランド「TSUBAKI(ツバキ)」やスキンケアブランド「SENKA(専科)」を展開するファイントゥデイホールディングス(HD)を買収する方針を固めました。買収額は2000億円規模とみられます。
ファイントゥデイHDは、資生堂のパーソナルケア事業が独立して誕生した会社です。IPO(新規株式公開)を目指していましたが断念し、欧州ファンドCVCキャピタル・パートナーズから米ベインへとオーナーが交代する形となります。本記事では、この買収の背景と今後の展望を解説します。
ファイントゥデイHDの成り立ち
資生堂からの分離独立
ファイントゥデイHDは、2021年に資生堂のパーソナルケア事業が分離して設立されました。資生堂が約1,600億円で英投資会社CVCキャピタル・パートナーズに同事業を売却したことがきっかけです。
資生堂は高価格帯の化粧品に経営資源を集中するため、日用品に近いパーソナルケア事業を手放す決断をしました。分離対象となったのは「TSUBAKI」「SENKA」「uno」「MACHERIE」「AQUAIR」など、ドラッグストアやスーパーで販売される馴染み深いブランド群です。
アジア市場でのグローバル展開
独立後のファイントゥデイHDは、日本国内だけでなく中国や東南アジアを中心にグローバル展開を加速させました。特に「TSUBAKI」は日本発のヘアケアブランドとしてアジア各国で高い認知度を持ち、成長ドライバーとなっています。CVC傘下では経営体制の刷新やブランド戦略の再構築が進められました。
IPO断念からベイン買収へ
2度のIPO延期
ファイントゥデイHDは東京証券取引所への上場を目指し、2度にわたりIPOに挑戦しました。しかし、投資家が求めるバリュエーション(企業価値評価)と企業側の想定に乖離があり、いずれも上場手続きを延期する結果となりました。
日用品セクターの企業は安定した売上が見込める一方で、高い成長率を投資家にアピールするのが難しいという構造的な課題があります。市場環境の不透明さも重なり、IPOの実現は見送られました。
ベインキャピタルが競合を制す
IPO断念を受けて、CVCは保有する全株式の売却に方針を転換しました。買収入札にはベインキャピタルのほか、KKR、ブラックストーンといった大手ファンドが参加しましたが、KKRとブラックストーンは途中で撤退。ベインキャピタルが拘束力のある買収提案を行い、CVCとの間で最終合意に至りました。
資生堂も持分を売却済み
資生堂は独立後も約20%のファイントゥデイHD株を保有していましたが、2024年6月にCVCに全株を売却しています。今回のベインによる買収で、資生堂との資本関係は完全に解消されることになります。
注意点・今後の展望
ファンド間売却の意味
CVCからベインへの売却は、いわゆる「セカンダリーバイアウト」と呼ばれるファンド間取引です。CVCが約1,600億円で取得した事業を2,000億円規模で売却するため、CVCにとっては一定のリターンが見込めます。一方、ベインはより長期的な視点で企業価値の向上を図ると見られます。
ベイン傘下での成長戦略
ベインキャピタルは日本市場での投資実績が豊富で、すかいらーくグループやワークスアプリケーションズなどへの投資で知られています。ファイントゥデイHDについても、アジア市場でのブランド拡大やデジタルマーケティングの強化、さらには再度のIPOを視野に入れた成長戦略が予想されます。
日用品業界の再編が加速
資生堂に限らず、大手消費財メーカーが非中核事業を切り離し、投資ファンドの下で再成長を図る動きは増えています。ファイントゥデイHDの事例は、日本の日用品業界におけるM&A再編の流れを象徴するものです。
まとめ
ファイントゥデイHDの米ベインキャピタルへの売却は、資生堂からの分離独立、CVC傘下での再建、IPO断念を経た新たな局面です。「TSUBAKI」をはじめとする知名度の高いブランド群を持つ同社が、ベインの下でどのような成長戦略を描くか注目されます。日本の消費財業界における投資ファンド主導の再編は、今後も続くことが見込まれます。
参考資料:
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