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by nicoxz

海外投資家が日本国債を売り続ける理由と株式への強気

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はじめに

海外投資家の日本市場に対する見方が、国債と株式で大きく分かれています。2026年1月、高市早苗首相が衆院選に向けて消費税減税を掲げたことで財政懸念が急速に高まり、日本国債は海外勢から「100%売り」という状況に陥っています。40年国債利回りは4%を突破し、約30年ぶりの高水準を記録しました。

一方で、同じ海外投資家が日本株式に対しては強気の姿勢を崩していません。これは矛盾しているように見えますが、そこには合理的な理由があります。本記事では、この二極化した見方の背景と、今後の日本市場への影響を詳しく解説します。

日本国債市場で起きていること

「消費減税ショック」と金利急騰

2026年1月20日、日本の40年国債利回りは4.24%に達し、40年債が導入されて以来の最高水準を記録しました。10年国債利回りも2.35%を超え、約27年ぶりの高水準となっています。

この急激な金利上昇の直接的な引き金となったのは、高市首相が衆院選(2月8日投開票)に向けて食料品の消費税率をゼロにする方針を示唆したことです。与野党が消費税減税で足並みをそろえたことで、市場では「消費減税ショック」と呼ばれる債券売りが加速しました。

海外投資家の売り姿勢

海外の国債トレーダーからは「売り」の声しか聞こえてこない状況です。複数の市場関係者によれば、日本国債先物について「100%売り」というポジションを取っているファンドも存在します。

特に懸念されているのは、超長期国債(20年、30年、40年債)における海外投資家の動向です。これまで国内生損保が超長期債の主要な買い手でしたが、2025年度から全生保会社に適用される新たな健全性規制への対応から購入意欲が低下しています。その隙間を埋めていたのが海外投資家でしたが、彼らが売りに転じた場合、「誰が買い手になるのか」という懸念が広がっています。

「高市トレード」の背景

2024年11月に高市政権が発足して以降、「高市トレード」と呼ばれる日本国債の売り・円安のポジションが海外勢の間で広がりました。高市首相が掲げる「責任ある積極財政」政策が、市場では財政規律の喪失と受け止められているためです。

政策金利と長期金利(10年国債利回り)のスプレッドは急拡大しており、通常の利上げ局面では見られない異常な事態となっています。これは市場が日銀の金融政策ではなく、財政リスクを主因として金利上昇を織り込んでいることを示しています。

なぜ財政懸念がこれほど深刻なのか

世界最悪の債務比率

日本の政府債務残高はGDP比で260%を超え、先進国の中で最悪の水準にあります。これまでは日銀の大規模な国債購入と、国内投資家による安定的な保有が金利を低く抑えてきました。

しかし、日銀が量的緩和を縮小し国債購入を減らす中、2026年度の市場へのネット供給額は前年度比約8%増の約65兆円に膨らむ見込みです。これは過去10年余りで最大の供給量となります。

消費税減税の財政インパクト

食料品の消費税をゼロにした場合、その減収分をどう補填するのかが明らかになっていません。第一生命経済研究所の分析では、消費税減税を実施すれば日本国債の格下げも十分にあり得るとしています。

格付けの引き下げは、海外投資家の売りをさらに加速させる可能性があります。2022年の英国「ミニ予算」危機では、減税策への懸念から英国債が暴落し、トラス首相は就任後わずか44日で辞任に追い込まれました。市場関係者の一部は、日本でも類似のシナリオを警戒しています。

超長期債の需給悪化

政府は2026年度の国債発行計画で超長期債の発行額を減らす方針を発表しましたが、これは金利上昇を受けた対応であり、将来的には金利コストの増加につながる可能性があります。

財務省の片山さつき財務相は市場の安定を呼びかけていますが、選挙期間中の政治的不確実性もあり、市場の警戒感は容易には解消されない状況です。

株式市場への強気姿勢が続く理由

割安感と成長期待

国債を売りながらも、海外投資家は日本株式に対しては強気の姿勢を維持しています。2026年の年初、日経平均株価とTOPIXは新年最初の2営業日で過去35年余りで最高の上昇率を記録しました。

この強気姿勢の背景には、米国株と比較した割安感があります。また、高市政権の積極財政が企業収益の改善につながるという期待も支えとなっています。

企業業績への期待

野村證券の分析では、インフレ率のプラス圏定着により2026年度の名目GDP成長率は3%以上が見込まれています。円安による輸出企業の採算改善や、政府の成長投資支援策も追い風です。

専門家106人を対象としたダイヤモンド・ザイの調査では、64%が2026年の日本株について「強気」または「やや強気」の見通しを示しました。

まだ温存されている買い余力

注目すべきは、海外投資家の日本株買いにはまだ余力が残っているという点です。年初から11月末までで3.7兆円を買い越していますが、グローバル株に対する時価総額比ではなお大幅なアンダーウェイトの状況です。

2015年時点の中立水準まで投資意欲が回復すれば、25〜30兆円の追加買い余力があると試算されています。アベノミクス初期に約3年で25兆円を買い越した実績もあり、本格的な買いはこれからという見方もあります。

債券売り・株買いは矛盾しないのか

財政懸念と成長期待の共存

一見矛盾するようですが、海外投資家の見方には一貫性があります。積極財政は国の借金を増やすため国債にはマイナスですが、短期的には景気刺激効果があり企業収益にはプラスに働きます。

つまり、「政府の財政は悪化するが、企業は儲かる」という見立てです。特にインフレ環境下では、実質債務負担が軽減される一方で名目売上高は増加するため、企業にとっては追い風となります。

リスクシナリオへの警戒

ただし、このシナリオには重要な前提条件があります。金利上昇が緩やかなペースにとどまり、企業の資金調達コストや住宅ローン金利への影響が限定的であること、そして円安が過度に進行しないことです。

金利急騰が企業や家計に波及すれば、成長期待は剥落し、株式市場も調整を余儀なくされる可能性があります。2月の衆院選の結果次第では、市場の見通しが大きく変わる可能性もあります。

今後の注目点

衆院選の結果と政策の行方

2月8日の衆院選の結果が最大の焦点です。与野党ともに消費税減税を掲げている現状では、選挙後に財政拡張路線が本格化する可能性が高く、市場はその規模と財源確保策を注視しています。

日銀の対応

日銀が金利上昇を抑制するために国債購入を再拡大するかどうかも重要です。ただし、インフレ対応のために利上げ継続が求められる中、国債購入との両立は難しい課題です。

格付け機関の動向

ムーディーズやS&Pなど主要格付け機関が日本国債の格付けを見直すかどうかも、海外投資家の動向に大きな影響を与えます。

まとめ

海外投資家の日本市場への見方は、国債と株式で明暗が分かれています。消費税減税による財政懸念から国債は売り圧力が続く一方、成長期待から株式には強気姿勢が維持されています。

この二極化した見方は、「財政は悪化するが企業は儲かる」という判断に基づいています。ただし、金利急騰が実体経済に波及するリスクや、2月の衆院選後の政策動向次第では、この構図が崩れる可能性もあります。

投資家は、国債市場の動向と選挙結果を注視しながら、リスク管理を怠らないことが重要です。日本市場は今、財政と成長のバランスを問う重要な局面を迎えています。

参考資料:

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