世界最大級ファンドが日本国債に注目する理由と今後の展望
はじめに
日本の長期金利が約27年ぶりの水準に達する中、世界最大級の運用会社が日本国債(JGB)に熱い視線を注いでいます。2025年12月の日銀利上げを経て、10年国債利回りは2%を突破し、2026年1月には一時2.2%台まで上昇しました。
かつて「低金利の代名詞」とされた日本国債ですが、利回りの上昇は海外投資家にとって新たな投資機会を生み出しています。本記事では、なぜ今グローバルファンドが日本国債を「ほぼ適正水準」と評価し、買い場と捉えているのか、その背景と今後の見通しを解説します。
海外ファンドが日本国債に注目する背景
利回り上昇がもたらす投資妙味
日本の10年国債利回りは2024年末の1.11%から約1年で2倍以上に上昇しました。この急激な利回り上昇は、債券投資家にとって「買い場」を意味します。債券価格と利回りは逆の関係にあるため、利回りが十分に上昇した局面で購入すれば、将来的な価格上昇(キャピタルゲイン)を期待できます。
英国の大手運用会社ネッドグループのグローバル・ストラテジック・ボンド・ファンドを運用するデビッド・ロバーツ氏は、30年のキャリアで初めて日本国債を購入したと明かしています。同氏は「政治的・財政的不確実性が利回りを押し上げた今こそ、日本国債に投資する好機」と述べています。
為替ヘッジ後の魅力的なリターン
海外投資家にとって、日本国債の魅力は額面上の利回りだけではありません。通貨ベーシススワップを利用した為替ヘッジにより、追加のプレミアムを得られる構造があります。
具体的には、30年物日本国債の利回り約3.1%に、為替ヘッジによるプレミアム約3.5%を加えると、実質的なリターンは約6.6%に達します。これは英国ギルト(長期国債)の約5%を大きく上回る水準です。ドルやユーロを保有する海外投資家にとって、自国の短期債よりも魅力的な投資先となっています。
イールドカーブのスティープ化
JPモルガンは「日本国債のイールドカーブは他の主要先進国の債券市場と比較して非常にスティープ(急勾配)」と指摘しています。10年債と30年債の利回り差が大幅に拡大しており、特に超長期ゾーンでの投資機会が注目されています。
30年物国債利回りは3%を超え、数十年ぶりの高水準に達しました。国内の生命保険会社などの構造的な需要が不足していることや、財政懸念が超長期金利を押し上げている背景があります。
日銀の金融政策と長期金利の行方
0.75%への利上げと今後の見通し
日銀は2025年12月の金融政策決定会合で、政策金利を0.50%から0.75%に引き上げました。これは1995年以来、約30年ぶりの高水準です。続く2026年1月の会合では据え置きを決定しましたが、高田創審議委員が1.00%への引き上げを主張して反対票を投じるなど、利上げへの積極姿勢が示されました。
植田総裁は「経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げていく」との方針を堅持しています。次回の利上げ時期について市場の見方は分かれており、三井住友DSアセットマネジメントは2026年7月、野村総合研究所は2026年9月と予想しています。
展望レポートの上方修正
2026年1月の展望レポートでは、経済見通しが上方修正されました。2025年度の実質GDP成長率は0.7%から0.9%へ、2026年度は0.7%から1.0%へ引き上げられています。コア消費者物価指数の見通しも2026年度は1.8%から1.9%に微調整されました。
これらの数字は、日銀がさらなる利上げに踏み切る環境が整いつつあることを示唆しています。物価上昇率が2%目標を上回る状況が続けば、政策金利の引き上げペースが加速する可能性もあります。
長期金利2%突破の意味
10年国債利回りが2%を突破したことは、日本の債券市場にとって歴史的な転換点です。長年にわたって1%以下で推移してきた長期金利が構造的に上昇局面に入ったことを意味します。
専門家の中には、次の節目として1999年2月につけた2.44%を意識する声があり、さらに3%台への上昇を視野に入れる見方も出ています。ただし、日銀は長期金利が急激に上昇する場合には、国債買入れの増額や指値オペなどで対応する姿勢を示しており、無制限の金利上昇は想定されていません。
財政拡張と国債市場のリスク
高市政権の「責任ある積極財政」
高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」は、国債市場に影響を与える重要な要因です。財政支出の拡大は国債の増発を意味し、需給面から金利上昇圧力となります。
海外投資家は日本の財政状況に対して厳しい目を向けています。超長期国債市場では売買高の約5割を海外勢が占めるまでに存在感が増しており、財政拡張に対してより敏感に反応しやすくなっています。2025年後半から2026年にかけて、外国人投資家は超長期国債を2四半期連続で過去最大の買い越しを記録しました。
国債買入れ減額の影響
日銀は量的引き締め(QT)の一環として、長期国債の月間買入れ額を段階的に減額しています。2026年1〜3月は毎四半期4,000億円程度の減額を計画しています。これにより、国債市場の主たる買い手が日銀から内外の投資家へと移行しつつあります。
この構造変化は、市場がより自由な価格形成メカニズムで動くようになることを意味します。一方で、財政悪化懸念が高まった際には金利が急騰するリスクも孕んでいます。
注意点・展望
「適正水準」の解釈に注意
大手ファンドが現在の金利水準を「ほぼ適正」と評価していますが、これは「金利がこれ以上上がらない」という意味ではありません。日銀のさらなる利上げや財政悪化が進めば、金利は一段と上昇する可能性があります。適正水準とは、現時点でのリスク・リターンのバランスが投資に値するという判断です。
政治リスクへの警戒
2026年2月8日に予定される衆議院解散総選挙は、国債市場にとって重要なイベントです。選挙結果次第では財政政策の方向性が変わる可能性があり、金利に大きな影響を与えます。高市首相率いる自民党の過半数確保が示唆されていますが、政局の不透明感は続いています。
今後の金利シナリオ
短期的には、日銀の追加利上げ観測と財政懸念が金利の上昇圧力として作用し続けるでしょう。一方で、40年国債入札が堅調であったことや、海外投資家の旺盛な需要は金利上昇を抑制する要因となります。中長期的には、政策金利が1.0%〜1.25%程度まで引き上げられる可能性が見込まれ、10年金利も2%台後半を試す展開が想定されます。
まとめ
世界最大級の運用ファンドが日本国債に注目する背景には、約27年ぶりの利回り水準、為替ヘッジ後の魅力的なリターン、そしてスティープなイールドカーブがあります。日銀の利上げ路線が続く中、長期金利は2%を超えて推移しており、海外投資家にとっては歴史的な投資機会と捉えられています。
ただし、高市政権の財政拡張路線や政治的不確実性、日銀の国債買入れ減額といったリスク要因も存在します。個人投資家としては、金利上昇局面における債券投資の基本を理解した上で、変動金利型の個人向け国債(2026年1月時点で適用利率1.39%)なども選択肢として検討する価値があるでしょう。
参考資料:
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