GMとフォードがEV関連で4兆円損失、トランプ政策で再編加速
はじめに
米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターが、電気自動車(EV)事業の減損で計4兆円規模の費用を計上することになりました。トランプ政権がEV購入の税額控除を廃止したことで、米国のEV市場は急速に縮小しています。
2026年1月14日に開幕したデトロイト自動車ショーでは、かつてのようにEV一色という雰囲気はなく、大型ガソリン車やハイブリッド車が目立つ展示となりました。水面下では生き残りをかけた再編交渉も進んでいます。
本記事では、米自動車業界が直面する構造転換の実態と今後の見通しについて解説します。
GMが1兆円超の費用を計上
EV販売の急減と巨額減損
GMは2026年1月8日、2025年10〜12月期にEVおよび中国事業の再編に伴い71億ドル(約1兆1000億円)の費用を計上すると発表しました。このうちEV関連では計60億ドルの費用が発生しています。
費用の内訳は、ミシガン州の工場でのEV生産能力削減に伴う18億ドルの減損損失に加え、計画変更に伴う部品メーカーへの支払いや各種手数料など42億ドルが含まれます。GMは2025年7〜9月期にも16億ドルのEV関連減損を計上しており、損失計上は2026年も続く見通しです。
税額控除廃止の直撃
GMのEV販売が急減した最大の要因は、トランプ政権によるEV購入補助金の廃止です。バイデン前政権が導入した最大7500ドルの税額控除は2025年9月30日で終了しました。
駆け込み需要の反動もあり、GMの2025年10〜12月期のEV販売台数は前年同期比43%減と大幅に落ち込みました。一方、GMはトヨタやフォードのように北米で人気を集めるハイブリッド車(HV)のラインナップを持たず、この弱みが経営を圧迫しています。
フォードもEV戦略を抜本転換
195億ドルの巨額費用計上
フォード・モーターも収益化に苦しむEV事業の抜本的な見直しに踏み切り、195億ドル(約3兆円)の費用を計上すると発表しました。損失の大半は2025年10〜12月期に計上されます。
費用の内訳は、計画していたEVモデルのキャンセルで約85億ドル、韓国のSKオンとのバッテリー合弁事業からの撤退で約60億ドル、その他のプログラム関連コストで約50億ドルとなっています。
主力ピックアップトラックのEV化を断念
特に大きな決断となったのが、主力ピックアップトラック「Fシリーズ」の新たなEV開発の中止です。フォードはガソリン車とハイブリッド車への生産シフトを進め、EV電池工場の用途変更も行う方針です。
フォードは2023年以降、EV事業で約130億ドルの損失を出してきました。ジム・ファーリーCEOは、採算の合わない車種を捨てることが生き残りの道だと述べています。
撤退ではなく再構築
モルガン・スタンレーのアナリストらは、フォードの動きを電動化からの「撤退」ではなく「再構築」と評価しています。フォードはEV事業の一部を縮小しつつ、トラック、ハイブリッド車、拡張レンジ電気自動車(EREV)など、より高いリターンが見込める車両に焦点をシフトしています。
デトロイト自動車ショーに見る業界の変化
1月開催に復帰した伝統のショー
2026年デトロイト自動車ショー(北米国際オートショー)は、伝統的な1月開催に戻り、1月14日から25日までミシガン州デトロイトのハンティントンプレイスで開催されています。今回は第119回目の開催となります。
今年は41ブランドが参加しており、昨年の34ブランドから増加しました。フォード、GM、ステランティスといったデトロイトの大手に加え、トヨタ、スバル、キアなど国際ブランドも多数出展しています。
EVからハイブリッド・ガソリン車へのシフト
今回のショーで最も顕著な変化は、EVからハイブリッド車やガソリン車へのシフトです。調査会社Telemetryのサム・アブエルサミド副社長は、「業界は実際の市場需要に適応しており、特に連邦税制優遇措置の廃止や規制環境の変化を受けてのことだ」と分析しています。
展示会場には大型ピックアップトラックやSUVが数多く並び、オフロード体験ができるアトラクションも復活しました。Camp JeepやFord Bronco Built Wild Experienceでは、来場者が実際に車両を体験できます。
今後の展望と注意点
日本メーカーへの追い風
EV市場の縮小は、ハイブリッド車技術に強みを持つ日本メーカーにとって追い風となっています。トヨタ自動車は米国でのEV生産計画を一部見直し、2026年から予定していた2車種のうち1車種の生産開始を2年延期。代わりに人気が高まっているハイブリッド車の生産を増やす方針です。
一方で、日本メーカーもトランプ政権の関税政策の影響は受けています。当初24%の関税が課される見込みでしたが、交渉の結果、乗用車は12.5%、その他は15%まで引き下げられました。
業界再編の行方
米国自動車業界では、生き残りをかけた再編交渉が水面下で進んでいると報じられています。ホンダと日産は2024年末に経営統合の検討を発表しましたが、2025年2月に協議打ち切りが発表されました。ただし、米国での協業連携の動きは続いています。
商用車分野では、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが2025年6月に経営統合で最終合意するなど、再編の波は日本にも及んでいます。
まとめ
トランプ政権のEV補助金廃止を受け、GMとフォードは計4兆円規模の減損を計上することになりました。両社はEV戦略を大幅に見直し、ハイブリッド車やガソリン車へのシフトを進めています。
デトロイト自動車ショーでは、かつてのEV一色の雰囲気は影を潜め、大型ピックアップトラックやSUVが存在感を示しました。ハイブリッド車技術を持つ日本メーカーには追い風となる一方、関税政策の影響も無視できません。
米国自動車業界は大きな構造転換の渦中にあり、今後も再編の動きが加速する可能性があります。
参考資料:
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