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by nicoxz

金5000ドル突破の背景—グリーンランド問題とドル離れ

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はじめに

金(ゴールド)の国際価格が2026年1月26日、ついに1トロイオンス5000ドルという歴史的な大台を突破しました。さらに翌27日には5100ドルを超え、記録的な上昇を続けています。この急騰の背景には、米国トランプ政権によるグリーンランド領有権問題をめぐる西側同盟国との対立、そして世界的なインフレ圧力によるドル建て資産への不信感があります。

本記事では、金価格高騰の要因を多角的に分析し、投資家や一般読者が知っておくべきポイントを解説します。従来の「安全資産」の概念が大きく変化しつつある現在、金への資金逃避が何を意味するのかを考察します。

金価格5000ドル突破の衝撃

歴史的な価格上昇

金価格は2026年に入ってからわずか3週間で15%も上昇し、2025年の年間上昇率65%に続く驚異的なパフォーマンスを見せています。1月26日に5000ドルを突破した後も上昇を続け、27日には5100ドル台に到達しました。

J.P.モルガンは2026年第4四半期の金価格を平均5055ドルと予測しており、ゴールドマン・サックスも年末目標を従来の4900ドルから5400ドルに引き上げています。バンク・オブ・アメリカに至っては、2026年春までに6000ドルに達する可能性も示唆しています。

2年間で150%の上昇

この価格水準は、わずか2年前と比較して150%もの上昇となります。この急激な価格変動は、単なる投機的な動きではなく、世界の政治・経済両面における構造的な変化を反映していると専門家は分析しています。

グリーンランド問題と西側同盟の亀裂

トランプ政権の領有権主張

金価格急騰の直接的なきっかけとなったのは、トランプ米大統領によるグリーンランド領有権の主張です。デンマーク自治領であるグリーンランドの「取得」を目指す米国は、NATO同盟国である欧州諸国との間で深刻な対立を引き起こしました。

米政権は、イギリス、デンマーク、ドイツなどの主要同盟国に対し、10%から25%の関税を課すと威嚇しました。これは「領土的解決」を得るための圧力とされ、従来の同盟関係を根底から揺るがす事態となりました。

市場の動揺と不確実性

トランプ大統領は1月22日に突如として態度を軟化させ、「合意に達した」と主張しましたが、この一連の展開が市場に与えた不安は解消されていません。ホワイトハウスの予測不可能な政策運営は、投資家のリスク回避姿勢を一段と強めています。

Forex.comのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「ここ数日の金の値動きは、まさに教科書的な安全資産への逃避行動です」と指摘しています。

ドル離れと安全資産の再定義

ドルへの信認低下

グリーンランド問題に加え、金価格上昇のもう一つの大きな要因がドル安の進行です。米ドルは対ユーロで4か月ぶりの安値まで下落しました。トランプ政権の一連の政策は、従来「安全資産」とされてきたドルや米国債への信認を揺るがしています。

ラザクザダ氏は「ドルと国債への信頼がやや揺らいでいるように見える」と述べ、投資家が従来の安全資産から金へとシフトしている現状を指摘しています。

中央銀行の金買い増し

世界各国の中央銀行も金の購入を積極化しています。2022年以降、3年連続で年間1000トンを超える中央銀行による金購入が続いており、この傾向は2026年も続く見通しです。ゴールドマン・サックスの推計によると、中央銀行の月間購入量は約60トンで、2022年以前の平均17トンを大きく上回っています。

特に新興国の中央銀行が外貨準備に占める金の比率を引き上げており、これはドルへの過度な依存を見直す動きの一環と見られています。

インフレ懸念と実物資産への回帰

構造的なインフレ圧力

世界的なインフレ圧力も金価格を押し上げる要因となっています。表面上のインフレ率は落ち着きつつあるものの、サービス、賃金、エネルギー分野での構造的なインフレは依然として続いています。

こうした環境下では、購買力の目減りを懸念する投資家が実物資産である金への投資を増やす傾向があります。金は歴史的にインフレヘッジとして機能してきた資産であり、現在その役割が改めて注目されています。

金利低下と機会費用の減少

FRBが景気減速を防ぐために利下げを実施していることも、金にとっては追い風となっています。金利が低下すると、利回りのない金を保有することの機会費用が減少し、相対的に金の魅力が高まります。実質金利の低下は、機関投資家の金への資金シフトを加速させています。

今後の見通しと注意点

専門家の予測

大手金融機関は金価格についてさらなる上昇を予測しています。地政学的なシフトの「恒久的な性質」と、ドルからの外貨準備分散の継続的な傾向を理由に、年末には6000ドルに達する可能性を指摘するアナリストもいます。

著名ヘッジファンドマネージャーのレイ・ダリオ氏は、米国の財政状況の悪化を踏まえ、従来の5%という金への配分推奨を15%に引き上げることを提案しています。

リスク要因

一方で、急激な価格上昇には調整リスクも伴います。地政学的緊張が緩和した場合や、FRBの金融政策が予想外に引き締め方向に転じた場合には、価格の急落も考えられます。また、金はインカムを生まない資産であるため、長期的な資産形成においては債券や株式との適切なバランスが重要です。

まとめ

金価格の5000ドル突破は、単なる相場の変動ではなく、世界の政治・経済秩序の大きな転換を象徴しています。米国のグリーンランド問題は西側同盟の亀裂を露呈させ、ドル建て資産への信認を揺るがしました。インフレ圧力と中央銀行の買い増しも、金価格を構造的に押し上げています。

投資家にとっては、ポートフォリオにおける金の位置づけを再考する良い機会かもしれません。ただし、価格の急騰局面では冷静な判断が求められます。自身のリスク許容度と投資目的を踏まえ、適切な資産配分を検討することをお勧めします。

参考資料:

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