金価格4700ドル突破|グリーンランド問題で米欧対立激化
はじめに
金(ゴールド)相場が一段と上昇し、史上初めて1トロイオンス4700ドルを突破しました。2026年1月20日、ニューヨーク先物は前営業日比約3%高い4720ドル近辺まで上昇しています。
この急騰の直接的な引き金となったのは、トランプ米大統領によるグリーンランド取得要求と、それに反対する欧州諸国への関税措置です。NATO同盟国間での異例の対立は、投資家のリスク回避姿勢を強め、「安全資産」とされる金への資金流入を加速させています。
本記事では、金価格急騰の背景となった米欧対立の詳細と、金投資の今後の見通しを解説します。
グリーンランドをめぐる米欧対立
トランプ大統領のグリーンランド取得要求
トランプ大統領は第1期政権時から、世界最大の島でありデンマークの自治領であるグリーンランドの支配権を握りたいと主張してきました。第2期政権でその圧力はさらに強まっており、軍事力の行使も排除しないとホワイトハウスが明らかにしています。
グリーンランドは北極圏に位置し、豊富なレアアース資源を持つほか、米国本土とロシアの間に位置する戦略的要衝として安全保障上も重要視されています。
欧州8カ国への関税措置
1月17日、トランプ大統領は米国がグリーンランドを取得するまで、欧州8カ国からの輸入品に10%の追加関税を課すと表明しました。対象国はデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドの8カ国です。
2月に発動し、6月1日には25%に引き上げるとしています。NATO同盟国に対する関税措置という異例の事態に、欧州各国は強く反発しています。
欧州諸国の反応
デンマークのフレデリクセン首相は「米国にはデンマーク王国を構成するいずれの国をも併合する権利はない」と、これまでで最も強い反発を示しました。ラスムセン外相も「越えてはならない一線がある」と警告しています。
フランスのマクロン大統領は「受け入れられない」とし、関税が確認されれば欧州は協調して対応するとしました。英国のスターマー首相も「NATO同盟国に関税を課すのは完全に誤りだ」と批判しています。
EUのコスタ首脳会議常任議長は「大西洋横断関係」に関する臨時首脳会合の開催を要請し、1月22日にブリュッセルで開催される予定です。
グリーンランド自治政府の立場
グリーンランド自治政府のニールセン首相は「我々は圧力に屈しない。対話、尊重、国際法を堅持する」とSNSに投稿しました。グリーンランドとデンマークでは、トランプ氏の脅しに抗議するデモが行われ、住民が自らの将来を決める権利を認めるよう求めています。
なぜ金が買われるのか
安全資産としての金の特性
金は伝統的に「無国籍通貨」と呼ばれ、特定の国の通貨や国債のような信用リスクがありません。戦争やテロ、金融危機など「有事」の際には、政治・経済の混乱により世界経済の先行きが不透明になり、安全資産として金が買われる傾向があります。
これが「有事の金」と言われるゆえんであり、今回のグリーンランド問題による米欧対立も、地政学リスクの高まりとして金買いを促しています。
トランプ関税と金価格の関係
1月19日、トランプ大統領がグリーンランド取得に反対する欧州8カ国への関税を示唆したことで、金価格は史上最高値を更新しました。国際価格は1トロイオンス4676.22ドル、国内店頭小売価格(税込)は1グラム2万6158円となりました。
投資家は安全資産に資金を振り向け、翌20日には4700ドル台に突入しています。
金価格上昇を支える構造的要因
中央銀行による金購入の拡大
金価格の上昇を支えているのは、地政学リスクだけではありません。世界各国の中央銀行による金購入の増加が、需要を構造的に押し上げています。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2024年の各国中央銀行による純購入量は3年連続で1000トンを超える過去最高水準となりました。2025年第1四半期もポーランド国立銀行が49トンを追加するなど、購入ペースは加速しています。
新興国の「ドル離れ」
中央銀行の金購入増加の背景には、「ドル離れ」の動きがあります。米国の政策環境への信頼低下を受け、新興国を中心に外貨準備の多様化が進んでいます。
中国人民銀行は2025年5月まで7カ月連続で金を買い越しており、外貨準備に占める金の比率は3年で2倍に増加しました。ポーランドも外貨準備の2割を金が占めるまでになっています。
公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)のレポートでは、「ドルを真に代替できる資産は存在しないが、ユーロや人民元ではなく、金が最も有力な候補」と言及されています。
米利下げ観測
FRBの利下げ観測も金価格を支えています。金は利息を生まない資産のため、金利が下がると相対的な魅力が高まります。2026年にFRBが複数回の利下げを行うとの見方が広がる中、金への投資妙味が増しています。
今後の金価格見通し
5000ドル到達の予測も
金融機関のアナリストは、金価格のさらなる上昇を予測しています。JPモルガン・チェースは2026年に5000ドルを超えると予想しており、ゴールドマン・サックスも2026年末のターゲットを4900ドルに引き上げています。
インフレの粘着性が確認されても現在のトレンドを維持するならば、4700ドル台の攻防を経て4800ドルも視野に入るとの見方があります。
上昇持続の条件
金価格の上昇が持続するかどうかは、いくつかの条件にかかっています。地政学リスクの継続、中央銀行の金購入ペースの維持、そしてFRBの金融政策の方向性が主な要因です。
特に、米欧対立がどこまで深刻化するか、あるいは対話による解決が図られるかは、短期的な金価格の方向性を左右する重要な要素です。
下落リスクにも注意
一方で、地政学リスクが緩和されれば金需要が低下し、価格が下落する可能性もあります。1989年の米ソ冷戦終結時には、国際的な緊張緩和と米国の好景気が重なり、金は10年以上にわたって低迷しました。
グリーンランド問題が外交的に解決した場合、金価格には調整圧力がかかる可能性があります。
まとめ
金価格が4700ドルを突破した背景には、トランプ大統領のグリーンランド取得要求と欧州への関税措置による米欧対立があります。NATO同盟国間での異例の緊張は、投資家のリスク回避姿勢を強め、安全資産としての金への需要を押し上げています。
加えて、新興国の「ドル離れ」を背景とした中央銀行の金購入拡大も、構造的な需要増加要因となっています。専門家の間では2026年に5000ドル到達を予測する声もあり、金相場は当面、高値圏での推移が続く可能性があります。
ただし、地政学リスクの緩和による調整リスクも存在するため、投資判断には慎重さが求められます。
参考資料:
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