NYダウ一進一退、金価格回復で投資家に安堵感広がる
はじめに
2026年2月3日の米国株式市場は一進一退の展開となりました。ダウ工業株30種平均は前日比166.67ポイント(0.34%)安の49,240.99ドルで取引を終えました。一時は0.5%上昇して49,653.13ドルの新記録を付ける場面もありましたが、その後反落しました。
注目すべきは貴金属市場の動きです。前週末に歴史的な急落を記録した金と銀の価格が反発し、投資家心理を下支えしました。一方で、ハイテク株への売りが続き、ナスダック総合指数は1.4%下落しました。この記事では、貴金属市場の乱高下の背景、ハイテク株安の要因、そして投資家が注目すべきポイントを解説します。
金・銀市場の劇的な変動
記録的な高値から急落へ
金相場は1月後半に歴史的な高騰を見せ、1オンスあたり5,550ドル以上という過去最高値を記録しました。これはトランプ大統領の就任から1月末までの期間で、金価格がほぼ2倍になったことを意味します。同期間に銀価格は約4倍に上昇し、一時120ドル/オンスを超え、100ドルの大台を突破しました。
しかし、1月30日には金価格が1日で約10〜11%下落するという歴史的な急落が発生しました。これは近年まれに見る大幅な下げ幅でした。
急落の引き金
この急落の主な要因は、トランプ大統領がケビン・ウォーシュ氏をジェローム・パウエル氏の後任としてFRB議長に指名すると発表したことでした。この発表を受けてドル高が進行し、4年ぶりの安値圏にあったドルが反発しました。ドル高は通常、ドル建てで取引される金にとってマイナス要因となります。
また、レバレッジをかけた短期取引を行っていた投資家による利益確定売りも下落を加速させました。
2月3日の反発
2月3日、貴金属市場は前週の急落から回復しました。金スポット価格は約5.6%上昇して4,930.97ドル/オンス、金先物は約6.4%上昇して約4,949ドルとなりました。銀スポット価格は6%以上上昇して約84.29ドル/オンス、銀先物は約10%上昇して84.12ドルとなりました。
バンク・オブ・アメリカのストラテジスト、マイケル・ウィドマー氏は、金相場には今後数カ月で6,000ドルを超える上昇余力があると述べています。JPモルガンのアナリストも、2026年末までに金価格が6,300ドル(現在の水準から約30%上昇)に達すると予想しています。
金価格上昇の構造的要因
地政学リスクと安全資産需要
金価格を押し上げている最大の要因は、地政学的不確実性の高まりです。金は2025年に64%上昇し、1979年以来最大の年間上昇率を記録しました。この上昇は、安全資産需要、米国の金融緩和政策、中央銀行による堅調な購入、そしてETFへの記録的な資金流入によって支えられました。
世界経済フォーラム(WEF)は、「地経学的対立」が2026年の最大のリスクであると強調しています。関税の脅威、外交的緊張、そしてより広範な貿易紛争のリスクの組み合わせが不確実性を高め、金価格が新高値を更新し続ける環境を支えています。
トランプ関税政策の影響
トランプ大統領が発動した貿易戦争は、1930年代以来最も破壊的なものとなっており、サプライチェーンを混乱させ、企業コストを上昇させています。この関税政策が生み出す不確実性は、国際貿易と成長への影響だけでなく、グローバル金融システムへの影響という点でも、金価格を下支えしています。
中央銀行の金購入
中央銀行による金購入は構造的な支援要因として機能しています。各国の中央銀行は脱ドル化戦略の一環として、年間の世界生産量の25〜30%に相当する金を購入し続けています。この動きは2026年以降も続くと予想されており、金価格に上昇圧力をかけ続けるでしょう。
ハイテク株安の背景
テクノロジーセクターの下落
2月3日の米国株式市場では、ハイテクセクターが大きく売られました。ナスダック総合指数は1.4%下落し、S&P500も0.8%下落しました。
個別銘柄では、セールスフォースが6.97%、IBMが6.28%、マイクロソフトが2.86%それぞれ下落しました。半導体やAI関連企業も売り込まれ、マイクロン、ブロードコム、オラクル、インテュイットは4〜8%の下落を記録しました。
AI関連への懸念
上場しているソフトウェア株は、AIが将来の成長と利益率を侵食するという懸念から、投資家の売りを浴びています。iシェアーズ・ソフトウェアETFは年初来20%下落しており、2月3日だけでさらに5%下落しました。
決算発表と個別材料
決算発表が変動を増幅させました。インテュイットは10.9%下落、ペイパルは決算内容と経営陣の交代を受けて20.3%急落しました。投資家は成長株やテクノロジー株から、より防御的でバリュー志向のセクターへと資金を移動させています。
投資家心理とマーケット動向
リスク回避と安全資産
2025年前半から続く投資家のリスク回避姿勢は、金価格の上昇を支える大きな要因となっています。特に第二期トランプ政権の政策によりスタグフレーション懸念が高まり、米中関係の急速な悪化から世界経済の先行き不透明感が増しています。
この影響で米国市場は一時、株式・債券・ドルのトリプル安となる場面もあり、安全資産としての金への需要が高まりました。
心理の変化
ただし、最近の急変動を受けて、市場参加者の心理は「押し目買い」から「戻り売り」へと変化しつつあります。金スポット相場は最高値5,597ドルから最安値4,401ドルまで急落しており、これまでの強力な上昇トレンドが明確に終了したように見えるという見方もあります。
注意点と今後の見通し
金相場の短期的リスク
金価格の長期的な上昇トレンドは維持される可能性が高いものの、短期的には需給の変化による大幅な調整リスクが存在します。レバレッジ取引による過熱感や利益確定売りが、突発的な下落を引き起こす可能性があります。
多くのアナリストは金を慎重に扱うべきだと警告しており、ラリーを突然終わらせる可能性のある信頼できる下振れリスクがあると主張しています。一方で、金利引き下げ、関税、需要増加を主要な短期的触媒として、金価格がまだ天井を見つけていないと主張する見方もあります。
ハイテク株の今後
AI技術の急速な発展は、一部のソフトウェア企業にとって脅威となる一方、半導体やAIインフラ企業には恩恵をもたらす可能性があります。投資家はAI関連銘柄のバリュエーションを精査し、勝者と敗者を見極める必要があります。
JPモルガンの見通し
JPモルガン・グローバル・リサーチは、金需要が2026年末までに価格を5,000ドル/オンスに押し上げると予想しています。2026年第4四半期の平均価格を5,055ドル/オンス、2027年末には5,400ドル/オンスに向かうと予測しています。
まとめ
2月3日のNY市場は、貴金属価格の回復がもたらす安堵感と、ハイテク株への継続的な売り圧力という相反する力の中で一進一退の展開となりました。
金相場は前週の歴史的な急落から反発しましたが、今後も高いボラティリティが続く可能性があります。地政学リスク、トランプ政権の関税政策、そして中央銀行の金購入という構造的要因は金価格を下支えし続けるでしょうが、短期的な調整には注意が必要です。
ハイテクセクターについては、AI技術の発展がもたらす影響を見極めながら、慎重な投資判断が求められます。市場の不確実性が高まる中、分散投資とリスク管理の重要性がこれまで以上に高まっています。
参考資料:
- Stock market news for Feb. 3, 2026 | CNBC
- Gold and silver rebound, pulling global mining stocks higher | CNBC
- Gold scales record peak as uncertainty fuels safe-haven bids | CNBC
- A new high? Gold price predictions from J.P. Morgan Global Research
- Gold and silver prices soared, then plummeted. What’s going on? | Al Jazeera
- Gold Outlook 2026 | World Gold Council
- 2026年の金価格見通しと2つの構造的金需要 | ピクテ
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