日用品卸大手3社が物流連携、コンテナ統一でトラック3割減へ
はじめに
日用品卸業界を代表する大手3社が、物流改革に向けた大きな一歩を踏み出しました。花王グループカスタマーマーケティング、PALTAC、あらたの3社は、小売店への納品に使用するコンテナを統一し、回収トラックの台数を3割削減する計画を進めています。
この取り組みの背景には、深刻化するトラック運転手不足があります。2024年4月から施行された働き方改革関連法により、ドライバーの時間外労働が年960時間に制限され、物流業界は「2024年問題」と呼ばれる構造的な課題に直面しています。国内の日用品卸市場の大半を占める3社が協力することで、業界全体の物流効率化に大きな波及効果が期待されます。
日用品卸業界の現状と課題
寡占化が進む市場構造
日用品卸業界は、現在3社による寡占状態にあります。業界トップのPALTACは2025年3月期に売上高1兆1,880億円を記録し、2位のあらたは売上高9,862億円と、1兆円の大台に迫る勢いです。あらたは2026年3月期に創業以来初となる売上高1兆円突破を見込んでいます。
花王グループカスタマーマーケティングは、花王傘下のメーカー販社として独自のポジションを確立しています。メーカーが卸機能を自前で持つ珍しいビジネスモデルで、小売業と直接取引を行っているのが特徴です。
この3社で市場の約8割を占めており、物流面での協力は業界全体に大きな影響を与えます。
深刻化する物流危機
トラック運転手の人手不足は年々深刻化しています。トラックドライバー数は約88万人といわれていますが、有効求人倍率は2.76倍と、全産業平均の1.28倍を大きく上回っています。
さらに、トラックドライバーの労働時間は全産業平均より17%程度長い一方、年間所得額は4%から12%程度低いという待遇面の課題があります。若年層(29歳以下)の割合は全産業平均の16.4%に対し、運送業では10.0%にとどまり、高齢化も進行しています。
国の試算によると、2024年問題に何も対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力は2030年には34.1%不足する可能性があるとされています。
コンテナ統一による物流効率化
3社共通の納品コンテナを導入
今回の取り組みでは、3社が小売店への納品に使用するコンテナ(オリコン)を共通規格に統一します。オリコンとは折りたたみコンテナの略称で、未使用時には折りたたんで保管し、必要なときに組み立てて使用できる容器です。
従来、各社が独自仕様のコンテナを使用していたため、小売店からの回収作業は各社が個別に行う必要がありました。コンテナを統一することで、1台のトラックが3社分のコンテナをまとめて回収できるようになります。
回収トラック3割削減の効果
コンテナの共同回収により、回収に必要なトラックの台数を約3割削減できる見込みです。日用品卸3社の取扱量は膨大で、PALTACだけでも年間30億個以上の荷物を扱っています。3社合計ではさらに大きな規模となり、トラック削減による環境負荷軽減効果も期待されます。
また、オリコンはダンボールと比較して繰り返し使用できるため、廃棄物削減にも貢献します。耐久性が高く、縦積み保管に適している点も物流効率向上につながります。
進む日用品卸業界の連携
商品情報の一元管理でも協力
PALTACとあらたは、物流以外の分野でも連携を強化しています。2025年10月には、両社とプラネットの3社が商品情報を一元管理する新会社「プロダクト・レジストリ・サービス」の設立に合意しました。
現在、卸や小売企業が扱う商品情報はバラバラで、登録や管理に大きな負担がかかっています。新会社による一元管理の仕組みを構築することで、業界全体で年間18億円のコスト削減を目指しています。サービス開始は2026年4月を予定しています。
共同配送の先行事例
PALTACとあらたは2025年7月より、西関東エリアで共同配送を開始しています。これは両社が「非競争領域」と位置づける物流分野での協働の第一段として実施されたもので、「競争から、協働、そして共創へ」をコンセプトに掲げています。
今回のコンテナ統一は、この流れをさらに発展させる取り組みといえます。
注意点と今後の展望
導入に伴う課題
コンテナ統一にはいくつかの課題もあります。まず、既存コンテナから新規格への切り替えに伴う初期投資が必要です。また、オリコンの組み立てや折りたたみには一定の力が必要で、自動化装置は高価なため、人手作業への依存が続く可能性があります。
3社間での運用ルールの調整や、小売店側の対応体制整備も重要な課題です。統一規格のメリットを最大限に活かすには、サプライチェーン全体での協力が不可欠となります。
物流効率化法への対応
全日本トラック協会の調査によると、荷主の物流効率化法に対する認知度は56%にとどまっています。2026年からは荷主企業に対する物流効率化の義務化が予定されており、今回の3社連携のような取り組みは、法規制対応の観点からも重要性を増しています。
荷主企業全体の3割が「運賃・料金の値上げや物流コストの可視化」に取り組んでおり、「荷待ち時間・荷役作業等の把握・削減」や「配送ルート、納品スケジュールの見直し」も進んでいます。
まとめ
日用品卸大手3社によるコンテナ統一は、深刻化する物流危機への実効性ある対策として注目されます。業界の約8割を占める3社が協力することで、回収トラック3割削減という具体的な成果が見込まれます。
物流分野は競争領域ではないという認識のもと、「協働」から「共創」へと発展する業界の姿は、他業界にとっても参考になるモデルケースとなるでしょう。2024年問題を契機に、日本のサプライチェーン全体が効率化に向けて動き出しています。
参考資料:
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