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by nicoxz

訪日客4270万人で過去最多、消費額9.5兆円の背景

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はじめに

2026年1月20日、金子恭之国土交通大臣は閣議後の記者会見で、2025年の訪日外国人観光客数が約4270万人に達し、史上初めて4000万人を突破したと発表しました。消費額も9.5兆円と過去最高を更新し、日本の観光産業が人口減少時代における重要な成長産業として存在感を増しています。

一方で、日中関係の悪化を受けて12月の中国人観光客が前年同月比45%減少するなど、インバウンド市場には新たな課題も浮上しています。本記事では、2025年のインバウンド動向を詳しく分析し、今後の展望と課題について解説します。

2025年インバウンド市場の概況

過去最多を更新した訪日客数

2025年の訪日外国人旅行者数は約4270万人となり、2024年の3687万人から約580万人増加しました。これは2019年のコロナ前水準(3188万人)を大きく上回る数字です。

1〜11月の累計では3906万人を記録し、11月単月でも351万8000人(前年同月比10.4%増)と好調を維持しました。特に10月・11月の紅葉シーズンには、欧米豪を中心に多くの旅行者が日本を訪れています。

消費額9.5兆円の内訳

訪日外国人の消費額は約9.5兆円に達し、2024年の8兆1257億円を大きく上回りました。2025年上半期(1〜6月)だけで4兆8053億円を記録しており、年間では10兆円規模に迫る勢いでした。

消費の内訳を見ると、サービス消費(宿泊・交通・体験)の比率が全体の約7割を占めるようになっています。10年前はサービス消費が6割程度だったことから、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトが鮮明になっています。

国・地域別の動向分析

成長が著しい欧米豪市場

2025年のインバウンド市場を牽引したのは、欧米豪からの旅行者です。アメリカからの訪日客数は年間300万人を初めて突破し、航空座席数の増加やクルーズ需要の高まりが追い風となりました。

11月の国別データでは、メキシコが前年同月比53.0%増の2万700人、イタリアが同45.8%増の3万400人と大幅な伸びを記録。カナダやオーストラリアなども過去最高を更新しています。

欧米豪からの訪問者は、アジア圏と比較して宿泊費や体験型サービスへの支出割合が高いことが特徴です。観光列車や地域のガストロノミーツアー、自然体験などに対する関心が強く、滞在日数も長い傾向にあります。

急減した中国市場の背景

一方で、中国からの訪日客数は複雑な状況にあります。2025年通年では約910万人(前年比約30%増)と増加しましたが、12月には前年同月比約45%減の33万人程度に落ち込みました。

この急減の背景には、日中関係の悪化があります。2025年11月7日、高市早苗首相が衆議院予算委員会で台湾有事をめぐる「存立危機事態」に言及したことを契機に、中国政府の対応が硬化しました。

中国外務省は11月14日に「日本の治安悪化」を理由に訪日自粛を呼びかけ、11月26日には在日中国大使館が日本への渡航自粛と注意喚起を再度発出しました。中国国内では大手旅行プラットフォーム「携程(Ctrip)」などが日本旅行の販売を停止する事態となっています。

さらに、中国政府が国内旅行会社に対し、日本への旅行者を従来の6割に減らすよう指示したとの報道もあります。2025年は中国にとって抗日戦争勝利80周年にあたり、夏には旧日本軍の侵略を描いた映画が相次いで公開されるなど、反日感情が高まりやすい環境にありました。

経済的影響と地方への波及

インバウンド消費の経済効果

訪日外国人の消費は日本経済に大きな恩恵をもたらしています。2025年7〜9月期の中国からの観光客の消費額は5901億円で、同期のインバウンド需要全体(2兆1310億円)の27.7%を占めていました。

日本総研の試算によれば、中国政府が長期にわたって渡航を制限した場合、向こう1年間の訪日消費額は1.2兆円減少し、3年間での損失総額は2.3兆円に上る可能性があります。ただし、台湾・韓国・欧米豪からの観光客増加や日本人の国内旅行需要がある程度カバーするとの見方もあります。

地方分散の進展と課題

インバウンド需要を地方に分散させる取り組みも進んでいます。北海道富良野市では、夏のラベンダーシーズン以外にも冬のスキーやアイスビレッジなど四季を通じた観光コンテンツを開発し、年間を通じた観光客の分散化に成功しています。

政府は2026年度予算で観光庁関連予算を前年度比約2.4倍の1383億円に拡大し、「地方誘客の推進による需要分散」を重点施策として掲げています。

オーバーツーリズム対策の現状

政府の取り組み

観光客の急増に伴い、オーバーツーリズム(観光公害)への対応も急務となっています。2026年度予算では「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の受入環境整備」に前年度比8.34倍となる100億円が計上されました。

2025年度補正予算でも、オーバーツーリズム対策等観光交通確保に67.7億円、地方誘客促進に向けた安全・安心対策に8.8億円が配分されています。

具体的な対策

観光庁は「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」として、観光客の集中による混雑やマナー違反への対応、地方部への誘客推進、地域住民と協働した観光振興の3点を柱に掲げています。

具体策としては、観光DXによる混雑状況の可視化、時間帯別・季節別の料金設定、多言語での情報発信強化などが進められています。

今後の展望と課題

2030年目標への道筋

政府は2030年までに訪日客6000万人、消費額15兆円という目標を掲げています。この目標達成には、1人当たり約25万円の支出が必要となる計算です。

現状の消費単価を維持しながら人数を増やすだけでは、オーバーツーリズムの問題がさらに深刻化する恐れがあります。今後は「訪れる人数」だけでなく「訪れて何をするか」を重視し、一人ひとりの消費単価を引き上げる戦略が求められます。

中国市場の見通し

中国からの訪日客減少がいつまで続くかは不透明です。専門家の間では、「日本に行きたいという中国人は多く、日本が安全だということも多くの中国人は分かっている。政府への不満を抑えるため、微妙にコントロールしているのでは」との見方もあります。

日中関係の改善なしには中国市場の完全回復は難しいとみられますが、欧米豪や東南アジアからの訪日客増加で一定程度は補える可能性があります。

まとめ

2025年の訪日外国人観光客数は4270万人、消費額は9.5兆円といずれも過去最高を記録しました。欧米豪からの旅行者が増加し、「コト消費」へのシフトが進む一方、日中関係の悪化により中国市場には不透明感が漂っています。

政府は2030年の目標達成に向けて、オーバーツーリズム対策と地方分散を両立させながら、持続可能な観光立国を目指しています。観光産業は人口減少下の日本において貴重な成長セクターであり、その動向は今後も注目されます。

参考資料:

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