オリエンタルランド株5年5カ月ぶり安値の背景を解説
はじめに
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(OLC)の株価が、2026年1月28日に5年5カ月ぶりの安値を記録しました。株式分割を考慮したベースで2020年8月以来の水準まで下落しており、投資家の間で懸念が広がっています。
この株価下落の背景には、日中関係の悪化によるインバウンド(訪日外国人客)減少への懸念、テーマパーク事業の収益性悪化、そしてアクティビスト(物言う株主)による大株主への圧力など、複合的な要因が絡み合っています。本記事では、これらの要因を詳しく分析し、今後の見通しについて解説します。
日中関係悪化とインバウンド減少の影響
中国政府の渡航自粛要請
2025年11月、高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁をきっかけに、日中関係が急速に悪化しました。中国外務省は11月14日、国民に対し日本への渡航を控えるよう呼び掛ける通知を出し、大手航空会社6社も12月末までの予約について手数料なしでのキャンセル対応を発表しました。
この影響は数字にも表れています。11月単月の中国(香港・マカオ含む)からの訪日客数は77万200人と、前年同月比1.7%減に転じました。特に深刻なのは北京・大連などの華北エリアや成都・重慶などの西南エリアで、一部の旅行会社では9割減という報告もあります。
経済的損失の試算
野村総合研究所の木内登英氏は、中国・香港からの日本旅行が1年間で25%減少した場合、経済損失は合計1.79兆円、名目GDPを0.29%押し下げると試算しています。また、日本総研は中国政府が長期にわたって渡航を禁止する場合、向こう3年間での訪日消費額の損失総額は2.3兆円にのぼると推計しています。
東京ディズニーリゾートへの影響
オリエンタルランドは「訪日外国人関連銘柄」として認識されており、日中対立のニュースが報じられた2025年11月17日には株価が5.8%下落しました。東京ディズニーリゾートの外国人入場者比率は2024年3月期の12.7%から2025年3月期には15.3%へと上昇しており、インバウンド依存度が高まっている中での中国人観光客減少は大きな打撃となります。
テーマパーク事業の収益性悪化
2026年3月期の業績見通し
オリエンタルランドは2026年3月期の通期業績予想として、売上高6,933億円(前期比2.1%増)を見込む一方、営業利益は1,600億円(同7.0%減)と「増収減益」を予想しています。売上高は伸びるものの、利益率は悪化する見通しです。
2025年10月の決算発表では、テーマパーク事業の営業利益が前年同期比0.4%減とわずかながらマイナスに転じたことが明らかになり、株価は一時10%を超える急落を見せました。
ゲスト単価の伸び悩み
2026年3月期のゲスト1人当たり売上高は1万7,792円と、前期比41円の減少が見込まれています。2023年のファンタジースプリングス開業を機に客単価向上戦略を推進してきましたが、その効果に陰りが見え始めています。
入園者数については、ファンタジースプリングスの通年稼働や海外ゲストの増加により2,800万人(前期比44万人増)を見込んでいますが、単価の伸び悩みが収益性を圧迫しています。
アクティビストによる大株主への圧力
京成電鉄への揺さぶり
オリエンタルランドの大株主である京成電鉄は、2021年から英アクティビストファンドのパリサー・キャピタルに株式約2%を保有され、オリエンタルランド株の保有比率を15%未満に引き下げるよう要求されています。
2024年11月、京成電鉄はこの圧力に一部応じる形で、オリエンタルランドが実施する自社株買いに1,800万株を売却しました。売却総額は618億円で、出資比率は21.04%から20.17%に低下しました。さらに、旧村上ファンド系の投資会社も京成株を買い増しており、今後も売却圧力が続く可能性があります。
三井不動産への要求
もう一つの大株主である三井不動産に対しては、世界最大級のアクティビストとして知られる米エリオット・マネジメントが株式2%超を取得し、約1兆円の自社株買いとオリエンタルランド株の売却を要求しています。
エリオットは「オリエンタルランド株は本業と相乗効果が乏しく、売却して資本効率向上に使うべき」と主張しています。三井不動産は現在、オリエンタルランド株を約1億株(時価約5,200億円超)保有していますが、歴史的に両社の関係は薄れてきており、売却に応じるのではないかとの観測も出ています。
需給悪化への懸念
これらの大株主による売却が実現すれば、市場に大量の株式が供給されることになり、需給バランスの悪化が株価の重しとなります。投資家はこうした潜在的な売り圧力を警戒しており、それが現在の株価低迷の一因となっています。
注意点と今後の展望
バリュエーションの視点
オリエンタルランドの株価は下落が続いていますが、2026年1月時点でもPER(株価収益率)は約41倍と、市場平均と比較して依然として割高な水準にあります。収益性の改善が見られなければ、さらなる株価調整の可能性も否定できません。
長期成長戦略との整合性
オリエンタルランドは2035年までの長期経営戦略として、売上高1兆円以上、2029年度時点で営業キャッシュ・フロー3,000億円レベルを目標に掲げています。この野心的な目標の達成には、インバウンド需要の回復と客単価向上の両立が不可欠です。
日中関係の行方
春節(旧正月)を控え、中国からの観光客動向が注目されます。京都・嵐山などの観光地からは「春節に訪れる中国人は多い。自粛の影響が長引いたら…」と心配する声が上がっています。日中関係の改善が見られなければ、インバウンド関連銘柄全体への影響が長期化する可能性があります。
まとめ
オリエンタルランドの株価が5年5カ月ぶりの安値を記録した背景には、日中関係悪化によるインバウンド減少懸念、テーマパーク事業の収益性悪化、アクティビストによる大株主への売却圧力という三重苦があります。
短期的には日中関係の動向やインバウンド回復の兆しに注目が集まります。また、1月29日に予定されている決算発表で、会社側がどのような見通しを示すかも重要なポイントです。長期投資家にとっては、2035年の売上高1兆円という目標に向けた戦略の実行力を見極めることが求められます。
参考資料:
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