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by nicoxz

INPEX急伸と住石HD高騰 中東混乱で買われる資源株の見分け方

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はじめに

2026年3月27日の東京株式市場は、相場全体が弱いのに一部の資源株だけが強い、典型的な「地政学相場」でした。日経平均株価は5万3373円07銭と前日比230円58銭安で引けましたが、INPEXは前日比213円高の4900円、住石ホールディングスは150円高の1009円まで買われました。指数と個別株の方向がこれほど分かれた日は、単なるセクター物色ではなく、投資家が景気悪化と資源高を同時に織り込んでいるときに起きやすい動きです。

背景にあるのは、中東情勢の長期化懸念と、それに伴う原油・LNG価格の上振れです。IEAとEIAはいずれも、ホルムズ海峡の混乱やLNG供給への打撃がエネルギー市場を不安定化させていると指摘しています。その結果、輸入コスト上昇が重い業種は売られ、逆に資源価格上昇の恩恵を受けやすい銘柄へ資金が逃げ込む構図が鮮明になりました。

本記事では、なぜINPEXが買われやすいのか、なぜ住石HDの値動きはさらに荒くなりやすいのか、そして3月27日の相場をどう読むべきかを整理します。資源株が強い日に「全部同じ理由で上がる」と考えると、値動きの質を見誤りやすいためです。

資源株だけが買われた理由

INPEXの年初来高値更新と収益期待

INPEXの3月27日終値は4900円で、年初来高値を更新しました。Yahoo!ファイナンスの時系列では、3月26日の4687円から1日で4.54%上昇しています。日経平均が下がる一方で、鉱業セクターの代表格に資金が集まったのは、市場が「原油高は日本株全体には逆風だが、INPEXには追い風」と判断したからです。

その見方を裏づけるのが、会社側の業績前提とのギャップです。INPEXの2025年12月期決算資料では、2026年12月期の通期業績見通しを、ブレント原油の前提価格を通期平均75ドルとして作っています。一方、米EIAは2026年3月10日時点で、ブレント価格が今後2カ月は95ドル超で推移する可能性を示しました。市場は、会社計画より高い油価が続けば、収益に上振れ余地が出ると先回りしているわけです。

INPEXが単なる「原油連動株」ではない点も重要です。同社の主力資産である豪州イクシスLNGプロジェクトは、年間LNG生産能力930万トン、LPG約165万トン、コンデンセート日量約10万バレルという大規模案件です。日本向けの販売比率も高く、同社は日本最大規模のエネルギー開発企業として、中東ショック時に「日本のエネルギー安保の受け皿」としても評価されやすい面があります。

住石HDに集まりやすいテーマ資金

住石HDの3月27日終値は1009円で、前日859円から17.46%上昇しました。上昇率だけ見ればINPEXよりはるかに大きく、資源高局面で短期資金がどこへ向かいやすいかを示しています。ただし、住石HDはINPEXのような大型の上流開発企業ではありません。ここを混同すると、値動きの意味を取り違えます。

会社紹介ページによると、住石グループの事業は石炭の輸入販売、人工ダイヤなど先端素材の製造販売、採石、そして海外炭鉱会社等への投資です。つまり、住石HDは石炭関連の顔を持つ一方で、新素材テーマも併せ持っています。原油やLNGが逼迫する局面では、石炭代替への思惑から買われやすく、同時に新素材株としても物色されるため、値動きが一方向に加速しやすい構造です。

加えて、豪州ワンボ炭鉱からの配当実績が投資家の連想を強めます。住石HDは2025年3月28日に22.4億円、同年9月26日に11.9億円の配当金受領を開示しました。資源価格や炭鉱収益が改善すれば、この種の受取配当金が利益面で効いてくるとの期待が乗りやすいのです。実際の業績寄与は配当時期や市況、為替の影響を受けますが、相場では「石炭市況のオプション価値」を持つ銘柄として扱われやすいといえます。

相場全体を押し下げた要因

原油高が指数に効く経路

では、なぜ資源株が上がっても日経平均は下がったのでしょうか。理由は単純で、日本株全体で見れば原油高の悪影響の方が広いからです。IEAは中東情勢に関する特設ページで、ホルムズ海峡の混乱が石油だけでなくLNG市場も大きく揺らしていると説明しています。カタールのラスラファン施設の停止が長引けば、アジア市場のLNG需給はさらに締まりやすくなります。

日本の多くの上場企業にとって、エネルギー高はコスト増要因です。運輸、化学、素材、消費関連に加え、金利低下期待に支えられてきたグロース株にも逆風になります。原油高はインフレ再燃を通じて金融緩和期待を後退させるため、ハイテク株のバリュエーションにもマイナスです。3月27日の相場で起きたのは、「資源株が強いから安心」ではなく、「資源株しか逃げ場がない」に近い動きでした。

権利付き最終売買日という下支え

3月27日が3月末決算銘柄の権利付き最終売買日だった点も見逃せません。GMOクリック証券の案内では、2026年3月31日権利確定銘柄の権利付き最終売買日は3月27日、権利落ち日は3月30日です。このため、配当や優待を狙う買いが相場全体の下値をある程度支えたと考えられます。

ただし、この下支えは市場全体を強気に転換させる材料ではありません。配当取りの買いは短期の需給要因であり、中東情勢や原油価格のトレンドを変えるものではないからです。むしろ、権利取り需要があったにもかかわらず日経平均が下落している事実は、地合いの弱さを示しています。

注意点・展望

今後の見極めで重要なのは、INPEXと住石HDを同じ「資源株」として一括りにしないことです。INPEXは大型の上流・LNG資産を持ち、会社計画の油価前提とのズレが株価評価に直結しやすい銘柄です。一方、住石HDは石炭事業と豪州炭鉱投資、新素材テーマが混ざるため、業績期待よりもテーマ性と需給で振れやすい側面があります。

特に住石HDは、3月27日の終値1009円が前日比150円高であり、短期資金の集中が強かったことがうかがえます。こうした局面では、原油価格が落ち着いただけでなく、テーマ物色が一巡しただけでも反動が大きくなり得ます。資源高の恩恵という説明だけで飛び乗ると、想定以上に値幅を取られるリスクがあります。

一方で、INPEXも「上がって当然」とは言い切れません。原油価格が高止まりしても、会社の業績は為替、設備メンテナンス、販売価格フォーミュラなど複数要因で決まります。見るべきポイントは、スポット油価そのものより、会社計画との乖離がどれだけ続くか、そしてそれが次の業績修正や株主還元にどうつながるかです。

まとめ

3月27日の東京市場は、中東混乱が長引くほど「指数には逆風、資源株には追い風」という非対称性が強まることを示しました。日経平均は下落した一方で、INPEXは業績前提を超える油価を織り込む形で買われ、住石HDは石炭・豪州炭鉱配当・新素材の複合テーマで急騰しました。

次に見るべきは、原油とLNGの価格が一時的なヘッドライン相場で終わるのか、それとも企業の業績前提を修正させるほど長引くのかです。その判断がつけば、INPEXは「実需に近い資源株」、住石HDは「テーマ性の強い資源株」として、分けて評価しやすくなります。地政学相場では、この切り分けが投資判断の精度を大きく左右します。

参考資料:

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