インテル株17%急落、低調な業績見通しを嫌気
はじめに
米半導体大手インテル(Intel)の株価が、2026年1月23日の米国市場で17%急落しました。前日発表した2025年10-12月期(第4四半期)決算で、2026年1-3月期の業績見通しが市場予想を下回ったことが嫌気されました。
インテルは新CEOのリップブー・タン氏のもとで再建を進めていますが、今回の決算では業績回復が道半ばであることが改めて浮き彫りになりました。NYダウ平均株価にも影響を与えたインテルの現状と課題について解説します。
2025年10-12月期決算の概要
売上高・損益の状況
インテルが1月22日(現地時間)に発表した2025年度第4四半期決算の主要数値は以下の通りです。
- 売上高:136億7,400万ドル(前年同期比4%減)
- GAAPベース純損益:5億9,100万ドルの赤字(1株損失0.12ドル)
- 非GAAPベース純利益:7億6,700万ドル(1株あたり0.15ドル)
GAAPベースでは赤字が続いているものの、事業の基礎的な収益力を示す非GAAPベースでは、市場予想の0.08ドルを大きく上回る0.15ドルの利益を確保しました。
セグメント別の業績
データセンター&AI(DCAI)部門 AI処理向けサーバーCPUの需要を背景に、売上高は前年同期比9%増と堅調でした。AI需要の恩恵を受けているセグメントです。
クライアント・コンピューティング・グループ(CCG) PC向け半導体を主力とするこのセグメントの売上高は81億9,300万ドルで、前年同期比7%減少しました。同社は需要の衰退ではなく、供給不足が主因と説明しています。
株価急落の原因
期待外れの第1四半期見通し
株価急落の直接的な原因は、2026年1-3月期(第1四半期)の業績見通しが市場予想を下回ったことです。
- 売上高見通し:117億〜127億ドル(レンジ中央値122億ドル、市場予想126億ドル)
- 1株当たり利益見通し:0ドル(収支とんとん)、市場予想は0.08ドルの黒字
リップブー・タンCEOが低調な見通しを示し、さらに製造面での問題を警告したことが、投資家心理を冷やしました。
供給制約の問題
インテルの投資家向け広報担当副社長ジョン・ピッツァー氏は、予想より弱いガイダンスについて「現在の最大の課題は、顧客からの需要すべてに対応できないこと」と説明しました。供給制約は第1四半期に最も顕著になるとしています。
デビッド・ジンズナーCFOによれば、2026年第1四半期に供給量が底を打ち、第2四半期以降に改善する見通しです。
NY株式市場への影響
ダウ平均の動向
2026年1月23日のNY株式市場では、インテル株の急落が相場全体の重荷となりました。インテルはダウ平均の構成銘柄ではありませんが、半導体セクター全体への懸念が広がりました。
この日のダウ平均は前日に最高値圏に接近していたこともあり、利益確定売りも出やすい状況でした。結局、ダウ平均は0.58%安で取引を終えました。一方、S&P500は0.03%高、ナスダック総合は0.28%高と、まちまちの展開となりました。
対照的なエヌビディア
同日、中国当局が国内IT大手に対しエヌビディア製「H200」AIチップの発注準備を指示したとの報道を受け、エヌビディア株は上昇しました。AI半導体市場でのエヌビディアとインテルの明暗が際立つ形となりました。
インテルの再建への道
ゲルシンガー前CEOの退任
インテルは2024年12月、業績不振を理由にパット・ゲルシンガーCEOを事実上解任しました。ゲルシンガー氏の在任中は、戦略的な失策やリーダーシップの問題、半導体技術の急速な進化への適応不能が課題とされていました。
2024年のインテルは、売上高531億ドル(前年比2%減)に対して188億ドルの損失を計上し、同社史上最悪の年となりました。
リップブー・タン新CEO
2025年3月、インテル取締役会はリップブー・タン氏を新CEOに任命しました。タン氏は半導体設計自動化ツールメーカーCadence Design Systemsの長年のCEOとして知られ、業界での豊富な経験を持っています。
興味深いことに、タン氏は2022年にインテル取締役に就任しましたが、ゲルシンガー前CEOと経営戦略上の対立があり、2024年8月に依願退任していました。
大規模なコスト削減
タン氏の再建計画の特徴は、積極的なコスト削減です。2025年7月にインテルは25,000人の人員削減を発表し、タン氏は従業員へのメモで「もう白紙小切手はない」と警告しました。
製造とAI事業の全面的な見直しを進めており、チップ製造方法の大幅な変更とAIへの新たな注力を通じて、同社の再建を目指しています。
注意点・今後の展望
18Aプロセスノードへの期待
タン氏のリーダーシップのもと、インテルの最先端プロセス「18A」ノードの開発は進展しています。アリゾナ工場から初期の18Aウェーハが出荷され始めており、量産開始が年央に前倒しされる可能性も報じられています。
18Aの成功は、インテルがTSMCやサムスンといった競合他社に対抗できるかどうかの鍵を握っています。
AI市場での巻き返し
AI半導体市場ではエヌビディアが圧倒的なシェアを持っており、インテルの存在感は限定的です。データセンター&AI部門の成長は明るい材料ですが、エヌビディアに追いつくには相当の時間と投資が必要となりそうです。
供給制約の解消
第2四半期以降に供給制約が改善すれば、業績の回復が期待できます。ただし、PC市場の成長鈍化という構造的な課題は残っており、長期的な成長戦略の再構築が求められています。
まとめ
インテルの株価急落は、同社の再建が依然として道半ばであることを示しています。供給制約による第1四半期の低調な見通しは、短期的な悪材料となりました。
しかし、リップブー・タン新CEOのもとでのコスト削減や製造プロセスの改善など、再建に向けた取り組みは進んでいます。18Aプロセスノードの成功と、AI市場での競争力回復が、今後の焦点となるでしょう。
半導体業界の覇権争いが激化する中、かつての王者インテルがどのように復活を遂げるのか、引き続き注目が必要です。
参考資料:
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