インテル株が17%急落、製造問題と供給不足が深刻化
はじめに
2026年1月23日、米国半導体大手インテルの株価が17%急落し、2024年8月以来最悪の下落を記録しました。NYダウも3日ぶりに反落し、終値は前日比285ドル30セント安の4万9098ドル71セントとなりました。
インテルが発表した2025年10〜12月期(Q4)決算は、売上高・利益ともに市場予想を上回る結果でした。しかし、2026年第1四半期のガイダンスが予想を大きく下回ったことに加え、深刻な製造問題と供給不足が明らかになり、投資家の失望売りを招きました。
この記事では、インテルの決算内容と株価急落の背景、そして半導体業界全体への影響について詳しく解説します。
インテルQ4 2025決算の内容
予想を上回った決算
インテルのQ4 2025決算は、ウォール街の予想を上回る結果となりました。
- 調整後1株当たり利益(EPS): 15セント(予想8セント)
- 売上高: 137億ドル(予想134億ドル)
売上高は前年同期比4.1%減となりましたが、市場予想は上回りました。セグメント別では、クライアントコンピューティング部門が7%減の82億ドル、データセンター・AI部門が9%増の47億ドル、ファウンドリ事業が4%増の45億ドルとなっています。
期待外れのガイダンス
問題は2026年第1四半期のガイダンスでした。インテルは以下の見通しを発表しました。
- 売上高: 117億〜127億ドル(市場予想125.1億ドル)
- 調整後EPS: 損益トントン(市場予想5セント)
このガイダンスはアナリスト予想を大幅に下回り、投資家の売りを誘発しました。
製造問題と供給不足の深刻化
在庫が枯渇状態に
インテルが直面している最大の課題は、製造能力と需要のミスマッチです。CFOのデビッド・ジンスナー氏は「現在の需要が供給を上回っており、このトレンドは2026年まで続く見込み」と述べました。
特に深刻なのは、2025年Q4に社内在庫の大部分を出荷してしまったことです。現在の在庫水準はピーク時の約40%にまで低下しており、Q1は最も厳しい状況になると予想されています。
歩留まりの問題
AI向けサーバーに不可欠なDiamond Rapids Xeon 7プロセッサーの歩留まりが、社内目標を下回っています。リップブー・タンCEOは「歩留まりは社内計画に沿っているが、私が望むレベルにはまだ達していない」と認めました。
業界標準の歩留まりに達するのは2027年になる見込みで、自社のロードマップから2年遅れている状況です。
供給制約の影響
インテルは製造可能な分を、利益率の高いデータセンター向けチップに優先的に割り当てています。その結果、次世代消費者向けチップ「Core Ultra Series 3(Panther Lake)」の供給が制約される見通しです。
チップの受注から出荷までのリードタイムは30週間を超えており、大手クラウド事業者が長期契約で生産能力を確保しているため、中小クラウド事業者や一般企業顧客は調達に苦労している状況です。
金融株への波及とNYダウへの影響
トランプ大統領によるJPモルガン提訴
同日、トランプ大統領がJPモルガン・チェースを提訴したことも、金融株の下落を招きました。2021年の連邦議会議事堂乱入事件後、政治的な理由で支持者の口座を閉鎖されたとして、50億ドル(約7900億円)の損害賠償を求めています。
この「デバンキング」問題への批判は他の銀行株にも波及し、ゴールドマン・サックスなど金融セクター全体が売られる展開となりました。
市場全体の動き
NYダウ構成銘柄では、ゴールドマン・サックス、キャタピラー、ディズニーなどが売られた一方、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディアは買われました。ナスダック総合指数は前日比65ポイント高の23,501と小幅続伸し、S&P500も横ばいを維持しました。
半導体セクター全体への影響は限定的でしたが、インテルの供給問題が長期化すれば、PC市場やサーバー市場全体に波及する可能性があります。
半導体供給不足の今後の見通し
Q2以降の改善期待
インテルは2026年Q2以降、供給状況が改善すると見込んでいます。ジェフリーズのアナリストは、供給不足が3月に底を打つと予測しています。
18Aプロセス技術の歩留まりは年末までに「望ましいコスト水準」に達し、2027年には業界標準の性能に到達する見通しです。
AIデータセンター需要との競合
世界的なインテルチップへの需要は、AIデータセンターの急速な拡大により極めて高い水準にあります。これらのリソース集約型施設は、ノートPCやデスクトップなどの日常的なコンピューティングデバイスと同じ製造ライン、パッケージング施設、部品を奪い合う状況です。
アナリストの予測によると、RAMはほとんどの電子機器価格の10%、スマートフォンでは30%を占めるようになる可能性があります。IDCは2026年の予測を更新し、スマートフォン販売で5%、PC販売で9%の減少を見込んでいます。
投資家への影響と注意点
株価の見通し
アナリストのコンセンサス評価は「ホールド」で、9人が「買い」、19人が「ホールド」、4人が「売り」となっています。平均目標株価は44.55ドルで、現在の株価から17.5%の下落リスクを示唆しています。
しかし、年後半にかけてはAI需要の加速と製造供給の回復により、投資環境は改善する見通しです。
日本市場への影響
インテルの株価急落と供給問題は、日本の半導体関連銘柄にも影響を与える可能性があります。特に、半導体製造装置メーカーやインテルとの取引がある企業は注視が必要です。
一方で、インテルの供給制約はライバル企業であるAMDやクアルコムにとっては市場シェア拡大の機会となる可能性もあります。
まとめ
インテル株の17%急落は、決算内容そのものよりも、深刻化する製造問題と供給不足に対する市場の懸念を反映しています。Q1は最も厳しい状況が予想されますが、Q2以降は改善に向かう見通しです。
半導体供給問題はAIデータセンター需要の急拡大と絡み合い、PC・スマートフォン市場全体に影響を及ぼす可能性があります。投資家は短期的な株価変動に注意しつつ、中長期的な需要動向と製造能力の回復状況を見極める必要があります。
参考資料:
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