インテル・ショックでも半導体株は買い?投資家が注目する理由
はじめに
2026年1月23日、米インテルの株価が17%急落し、世界の半導体市場に衝撃が走りました。決算発表後の大幅下落は2024年8月以来の規模となり、時価総額約310億ドル(約4.8兆円)が一日で消失しました。
この「インテル・ショック」は日本の半導体関連株にも波及し、東京市場では関連銘柄に売りが先行しました。しかし興味深いことに、投資家の間では「これは買い場だ」という声が根強く聞かれます。
なぜインテルが苦境に陥る中で、半導体株全体への強気姿勢は揺らいでいないのでしょうか。本記事では、インテル・ショックの背景と、日本の半導体関連株が注目される理由を詳しく解説します。
インテル・ショックの実態
決算内容と株価急落の背景
インテルの2025年第4四半期決算は、表面上は市場予想を上回る結果でした。売上高は137億ドル、調整後の1株当たり利益は15セントと、アナリスト予想の8セントを大きく超えました。
しかし株価が急落した理由は、2026年第1四半期の業績見通しにあります。リップブー・タンCEOは、売上高見通しを117億〜127億ドル(中央値122億ドル)と発表しました。これは市場予想の126億ドルを下回り、1株当たり利益も収支トントンと予想されています。
製造上の問題が足かせに
タンCEOは決算説明会で「製造面での問題」を率直に認めました。次世代の製造プロセス「Intel 18A」は技術的には進展しているものの、歩留まり(良品率)の改善には「時間と決意」が必要だと述べています。
特に深刻なのは、サーバー向けCPUの供給不足です。AIブームでデータセンター向け半導体の需要が急増する中、インテルは生産能力の制約から需要に応えられない状況が続いています。この供給不足は2026年第1四半期まで継続する見通しです。
ファウンドリ事業の苦戦
インテルが力を入れる受託製造(ファウンドリ)事業も苦戦しています。18Aプロセスを使った大口の外部顧客獲得には至っておらず、NVIDIAがテストを行ったものの本格採用には至らなかったとの報道もあります。
現時点で18Aを使用するのは主にインテル自身と、マイクロソフト、米国防総省に限られています。2024年に188億ドル、2025年第2四半期にも29億ドルの損失を計上するなど、構造改革の道のりは険しい状況です。
日本の半導体関連株が注目される理由
製造装置メーカーの優位性
インテルが苦戦する一方で、日本の半導体製造装置メーカーは好調を維持しています。その理由は、半導体の製造プロセスがどのメーカーであっても、日本製の製造装置が不可欠だからです。
東京エレクトロンの河合利樹社長は、2026年の世界の前工程向け装置市場が「過去最高になるだろう」と明言しています。さらに「長期的なスーパーサイクルに入る可能性もある」と強気の見通しを示しました。
アドバンテストの躍進
半導体テスト装置で世界首位のアドバンテストは、AI半導体需要の恩恵を最も受けている企業の一つです。2026年3月期第2四半期決算では、売上高5,267億円(前年同期比60%増)、営業利益2,324億円(同145%増)と過去最高を更新しました。
同社の世界シェアは2017年の36%から2024年には58%に拡大しています。NVIDIAやAMDの汎用AI半導体に加え、ブロードコムやマーベル・テクノロジーの特注型AI半導体向けテスタ需要も急増しています。
AI投資は継続する
重要なのは、インテルの業績不振がAI半導体市場全体の縮小を意味しないことです。むしろ、インテルの供給不足はAMDやTSMCへの需要シフトを加速させています。
AIを中心とした成長ストーリーは依然として健在です。世界半導体市場は2026年に9,754億ドルに達し、2025年比で約26%の成長が見込まれています。この成長を支えるのが、微細化や3Dパッケージング技術を持つ日本の製造装置メーカーなのです。
投資家が押さえるべきポイント
バリュエーションの確認
現在の株価水準は、すでに2026年以降の好況を織り込んでいる面があります。PER(株価収益率)はアドバンテストが54倍、東京エレクトロンが31倍と高水準です。
ただし、岩井コスモ証券のアナリストは「調整局面は投資機会になる可能性がある」と指摘しています。顧客基盤の拡大と利益率改善の余地を考えれば、割高感は限定的との見方です。
リスク要因も認識を
楽観一辺倒は禁物です。テック大手同士の競争激化で投資計画が一気に減速するリスクや、対中規制の影響度で装置メーカー間の勝敗が分かれる可能性もあります。
また「AIバブル」への懸念も根強くあります。短期的な過熱感から調整が入る可能性は常に意識しておく必要があります。
注意点・展望
インテルの復活シナリオ
インテルにも明るい材料はあります。2026年1月には「Panther Lake」と呼ばれる次世代プロセッサの出荷が開始されました。これは18Aノードで製造される初のサブ2ナノメートルCPUであり、設計・製造・パッケージングすべてを米国内で完結した製品です。
タンCEOは「14A(1.4nm級)プロセスに本格的に注力する」と宣言しており、2027年の量産開始を目指しています。米政府からの57億ドルの支援や、ソフトバンクからの20億ドル投資など、資金面でのバックアップも得ています。
今後の注目点
2026年後半からは2ナノ製造の本格化、さらに1.6ナノの量産開始も視野に入ります。HBM4(次世代高帯域メモリ)の需要拡大も、日本の装置メーカーにとって追い風となるでしょう。
中国市場の動向も重要です。AI半導体の国産化を進める中国向けの装置需要は、地政学的リスクを抱えながらも成長が続いています。
まとめ
インテル・ショックは確かに衝撃的でしたが、半導体市場全体の成長トレンドを覆すものではありません。むしろ、製造プロセスの複雑化と高度化は、日本の製造装置メーカーの重要性を一層高めています。
投資を検討する際は、個別企業の競争力と市場ポジション、バリュエーション水準、そしてリスク要因を総合的に判断することが重要です。短期的な株価変動に惑わされず、AI時代の半導体需要という大きな潮流を見据えた投資判断が求められます。
参考資料:
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