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by nicoxz

イスラエルが米国に異例の不満、ガザ戦後統治で溝

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はじめに

イスラエル首相府は2026年1月17日、トランプ米政権が公表したパレスチナ自治区ガザの戦後統治枠組みについて、「イスラエルとの調整が不十分だ」との声明を発表しました。イスラエルが最大の支援国である米国に公然と不満を示すのは異例のことです。

この問題の背景には、ガザ停戦の「第2段階」移行に伴い発表されたガザ執行委員会の人選があります。トルコのハカン・フィダン外相やカタールの高官が名を連ねたことに、イスラエル側が強く反発しています。

本記事では、イスラエルと米国の間に生じた溝の詳細、ガザ停戦をめぐる経緯、そして今後の中東情勢への影響について解説します。

ガザ停戦第2段階と戦後統治の枠組み

停戦合意の経緯

2023年10月7日にハマスがイスラエルを越境攻撃してから約2年が経過した2025年10月、トランプ大統領が提示した和平計画に基づき、カタール、エジプト、トルコ、米国の仲介でハマスとイスラエルの間接交渉が行われました。10月8日に合意が成立し、10月10日に停戦が発効しています。

停戦合意は複数の段階で構成されており、第1段階では人質の解放や軍事活動の停止が進められました。2026年1月に入り、第2段階への移行が発表されたことが今回の問題の発端となっています。

第2段階の統治構造

第2段階では、ガザは3層構造の統治機構によって管理されることになりました。最上層にはトランプ大統領が議長を務める「平和評議会」が設置されます。その下に執行委員会が置かれ、トニー・ブレア元英首相らが参加する見通しです。

最下層には15人のパレスチナ人テクノクラートで構成される委員会が設置され、トップにはパレスチナ自治政府元高官のアリ・シャース氏が就任しました。この暫定統治機関がガザの日常的な行政を担うことになります。

執行委員会の人選をめぐる対立

イスラエルが問題視したのは、この執行委員会の人選です。1月16日に発表された構成にはトルコのフィダン外相やカタールの高官が含まれていました。トルコはイスラエルによるガザ攻撃を最も声高に批判してきた国の一つであり、ハマスとの関係も深いとされています。

イスラエル側は「和平評議会に従属するガザ執行委員会の構成に関しての発表は、イスラエルと調整されておらず、イスラエルの政策に反する」との声明を発表。ネタニヤフ首相はサール外相に対し、ルビオ米国務長官と連絡を取るよう指示しました。

イスラエルと米国の関係の複雑さ

「かつてないほど強固」とされる同盟

表面上、イスラエルと米国の関係は良好とされています。2025年9月にルビオ国務長官がイスラエルを訪問した際、ネタニヤフ首相は「同盟は嘆きの壁の石のように強く、揺るぎない」「同盟はかつてないほど強固になっている」と述べました。

2025年3月の電話会談でも、ルビオ国務長官はイスラエルへの揺るぎない支援がトランプ大統領の優先事項であると強調しています。7月にはネタニヤフ首相がワシントンを訪問し、トランプ大統領、バンス副大統領、ルビオ国務長官らと相次いで会談を行いました。

水面下での緊張

しかし、水面下では緊張が存在していることも事実です。2025年6月にイスラエルがイランへの攻撃を実施した際、トランプ大統領は再三にわたりネタニヤフ首相に自制を求めていました。それにもかかわらず攻撃が行われ、ルビオ国務長官は「イスラエルは単独での行動に踏み切った。我々は対イラン攻撃に関与していない」との声明を発表し、距離を置く姿勢を示しました。

今回のガザ戦後統治をめぐる不満表明も、こうした両国間の微妙な関係性を反映したものといえます。

トルコの関与をめぐる対立

トルコの仲介者としての立場

ガザ停戦において、トルコは米国、エジプト、カタールとともに仲介国として重要な役割を果たしてきました。フィダン外相は「トルコはガザの停戦交渉で仲介者として行動してきた」と説明し、イスラエルとハマス双方との対話を維持する立場を強調しています。

フィダン外相は、ハマスの武装解除を可能にするためには信頼できるパレスチナの文民政権と警察部隊が整備される必要があるとし、「まず第一にパレスチナの技術者委員会がガザの行政を引き継ぐこと、次にガザを取り締まる警察部隊が組織されることを確認する必要がある」と語っています。

イスラエルの警戒感

一方、イスラエル側はトルコの関与をハマス支援の延長線上にあると認識しています。トルコはイスラム諸国の団結を呼びかけ、イスラエルのガザ政策を厳しく批判してきた経緯があります。

トルコがガザの復興や統治に深く関与することに対し、イスラエルは強い警戒感を持っています。今回の執行委員会の人選に対する反発も、こうした根本的な対立を反映したものです。

未解決の課題と今後の展望

ハマスの武装解除問題

ガザ停戦において最大の争点となっているのは、ハマスの武装解除です。イスラエルは完全武装解除を譲れない条件として掲げていますが、ハマス側は明確な姿勢を示していません。この根本的な問題が解決されない限り、恒久的な和平の実現は困難です。

また、イスラエルがガザから軍を完全撤退させるかどうかも不透明なままです。ネタニヤフ首相は第2段階について「ハマスの武装解除とガザの非武装化の達成という難しい課題だ」と強調しており、容易に妥協する姿勢は見せていません。

停戦合意の脆弱性

停戦発効後も、合意違反の疑いや未解決の問題をめぐる対立は続いています。人質遺体の返還が遅れるなど、停戦維持の上での火種も残っています。

外交官の間では、第2段階の成功は調停者による持続的な圧力と、双方が長年のレッドラインを超える意思を持つかどうかにかかっているとの見方が支配的です。

イスラエル国内政治の影響

イスラエルでは2026年秋までに総選挙が予定されています。ネタニヤフ首相は汚職裁判を抱えながらも政権維持を図っており、強硬な対外姿勢を維持することで支持層にアピールする必要があります。

極右勢力との連立を維持する必要もあり、トランプ大統領の計画に含まれるパレスチナ暫定政権や国際平和維持軍、復興計画といった目標については、国内政治的に受け入れが難しい面もあります。

まとめ

イスラエルがガザ戦後統治の枠組みについて米国に公然と不満を表明したことは、両国関係の複雑さを浮き彫りにしています。トランプ政権下で「かつてないほど強固」とされる同盟関係にも、ガザ問題をめぐっては温度差が存在することが明らかになりました。

トルコの執行委員会への参加に対するイスラエルの反発は、ガザ停戦と戦後統治をめぐる各国の思惑の違いを示しています。ハマスの武装解除やイスラエルの撤退という根本的な課題が解決されない限り、第2段階の安定的な運営は困難を伴うでしょう。

今後の中東和平の行方は、イスラエルの国内政治、米国の仲介力、そして関係各国の妥協への意思にかかっています。

参考資料:

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