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by nicoxz

ウクライナ停戦後の安全保障、72時間で米軍介入の枠組み合意

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はじめに

英フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道によれば、ウクライナは和平実現後の「安全の保証」をめぐり、ロシアによる再侵略を抑止する3段階の反撃体制を構築することで欧米と合意しました。この枠組みでは、ロシアが停戦に違反して武力攻撃に踏み切った場合、最終的に72時間以内に米軍が介入することが柱となっています。

2026年2月4日から5日にかけて、アブダビで米国、ロシア、ウクライナの3者による和平交渉の第2ラウンドが開催されます。この記事では、合意された安全保障の枠組みの詳細、有志連合の構成、そして今後の和平交渉の見通しについて解説します。

3段階の反撃体制の詳細

第1段階:24時間以内のウクライナ軍対応

停戦違反が発生した場合、最初の24時間はウクライナ軍が対応を担います。外交的な警告が発せられると同時に、ウクライナ軍が違反行為を阻止するために適切な行動をとります。この段階では、ウクライナ自身の軍事力で事態の収拾を図ることが想定されています。

第2段階:有志連合の展開

敵対行為が継続する場合、計画は第2段階に移行します。この段階では、英国とフランスが主導する「有志連合(Coalition of the Willing)」の部隊が展開されます。有志連合には、EU加盟国の大半に加え、英国、ノルウェー、アイスランド、トルコが参加しています。

第3段階:72時間以内の米軍介入

より大規模なロシアの攻撃が発生した場合、最初の違反から72時間以内に、米軍を含む西側主導の統合軍事対応が発動されます。米国は欧州主導の多国籍軍のバックストップ(最終的な後ろ盾)として機能する予定です。

有志連合の構成と役割

参加国と規模

有志連合は現在、34カ国(ウクライナを除く)で構成されています。この構想は2025年3月2日、ウクライナに関するロンドン・サミットを受けて、英国のキア・スターマー首相によって発表されました。

2026年1月6日、パリで開催された有志連合の会合で、フランスのマクロン大統領、英国のスターマー首相、ウクライナのゼレンスキー大統領が正式な宣言に署名しました。この宣言により、和平合意成立後にフランスと英国がウクライナ領内に軍隊を展開する意向が確認されました。

各国の貢献内容

各国の参加形態は様々です。

  • エストニア:2025年4月30日、ミハル首相は戦闘部隊、教官、参謀将校を含む中隊規模(50〜250人)の部隊派遣を申し出ました。
  • ドイツ:メルツ首相は、ドイツ軍が停戦監視に参加する可能性があるが、隣国に拠点を置くと述べています。
  • ベルギー:海軍と空軍を通じて支援すると表明しています。
  • クロアチア・チェコ:部隊は派遣しないと発表しています。
  • スペイン:サンチェス首相は、部隊派遣を含む可能性のあるスペインの貢献について、主要政党との協議を開始すると発表しました。

停戦監視メカニズム

有志連合は、米国主導の停戦監視・検証メカニズムに参加することを表明しています。このメカニズムには、ドローン、センサー、衛星が活用される予定で、米軍兵士の直接展開は含まれていません。米国は情報活動を通じて停戦の監視や再侵略の兆候察知に当たるとされています。

アブダビ和平交渉の経緯

第1ラウンドの成果

2026年1月23日〜24日にアブダビで開催された初の3者協議について、米国当局者は「期待を上回った」と述べ、会議の雰囲気は「非常に前向きで、非常に建設的だった」と評価しました。

この会談では、トランプ大統領が発表した通り、プーチン大統領が寒波を理由に1週間にわたってエネルギー施設への攻撃を停止することに同意しました。クレムリンは日曜日までエネルギーインフラへの攻撃を停止することに同意したと述べています。

残された課題

しかし、領土問題では実質的な進展がみられませんでした。モスクワは依然としてキーウに対し、ドネツク地域でウクライナがまだ支配している5分の1を割譲するよう要求していますが、ゼレンスキー政権はこれを拒否しています。

トランプ政権の当局者は最近、東部ウクライナの領土支配が最後の障壁だと自信を示していましたが、この問題は最も困難であり、多くの専門家は合意がまだ可能かどうか懐疑的な見方を示しています。

交渉参加者

ロシアは情報機関トップや軍事情報部門の幹部を含む軍事チームを派遣しました。ウクライナは外交官や安全保障当局者を含むトップ交渉団を派遣しました。米国はトランプ大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏、娘婿のジャレッド・クシュナー氏、ジョシュ・グリュエンバウム氏が代表を務めています。

UAEの仲介役としての役割

UAEは、ロシアとウクライナ間の捕虜交換のための17回の仲介を成功させ、4,641人の被拘禁者の解放に貢献してきました。今回の和平交渉のホスト国としての役割は、国際社会がUAEの平和支援への取り組みに信頼を置いていることを反映しています。

ロシアの立場と反応

安全保障枠組みへの反対

ロシアは、米国とウクライナが議論している安全保障の保証を一蹴しています。プーチン大統領の代理として大統領を務めたこともあるメドベージェフ氏は、「これらの保証は一方的であってはならない」「これはウクライナのための保証ではない。これはロシアとウクライナの双方のための保証だ。さもなければ保証は機能しない」と述べています。

欧州軍展開への反対

ロシアは、和平合意を監視・履行するためのウクライナへの欧州平和維持軍の展開を「明らかに実行不可能」として拒否しています。プーチン大統領はNATO加盟国の部隊がウクライナ領内に展開することを認めないと明言しています。

包括的合意の要求

モスクワは、戦争を終結させるための包括的な合意が成立する前にはいかなる停戦にも同意しないと述べています。また、西側諸国によるウクライナへの部隊展開も受け入れないとしています。

注意点と今後の見通し

米国の関与の不確実性

合意された計画には米軍のバックストップが含まれていますが、トランプ政権が提供する具体的な能力については曖昧なままです。トランプ氏は米軍兵士のウクライナ派遣は否定していますが、航空支援の可能性には言及しています。「72時間以内の米軍介入」が具体的に何を意味するのかは、依然として明確ではありません。

欧州の自立と限界

欧州諸国は安全保障の主導権を握ろうとしていますが、最終的には米国の支援なしでは十分な抑止力を維持できないという現実があります。ゼレンスキー大統領は1月に、米国と交渉し欧州パートナーからの意見も反映した安全保障の保証は「100%準備完了」しており、「署名の日時と場所を確認するためにパートナーを待っている」と述べていますが、EUや米国からの公式な確認はまだありません。

和平合意の実現可能性

領土問題という最大の障壁が残されている限り、和平合意の実現は容易ではありません。ロシアはウクライナ東部の広大な領土の割譲を要求し続けており、ウクライナはこれを「降伏」と受け止められる妥協として拒否しています。2026年初頭の時点で、両国とも武器を置く見込みは低い状況です。

まとめ

ウクライナと欧米が合意した3段階の反撃体制は、停戦後のウクライナの安全を保証するための重要な枠組みです。ロシアの違反から72時間以内に米軍が介入するという計画は、強力な抑止力として機能する可能性があります。

しかし、この枠組みにはまだ多くの不確実性が残されています。米国の具体的な関与の範囲、ロシアの強硬な反対姿勢、そして領土問題という根本的な課題があります。2月4日〜5日のアブダビでの交渉がどのような成果をもたらすか、世界が注目しています。

ウクライナ戦争は5年目に突入しており、これは第一次世界大戦より長い期間となっています。真の平和を実現するためには、安全保障の枠組みだけでなく、すべての当事者が受け入れ可能な政治的解決策が必要です。

参考資料:

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