日本の貿易赤字5割減、輸出額は過去最大を更新
はじめに
2026年1月22日、財務省が2025年の貿易統計速報を発表しました。注目すべきは、5年連続の赤字となりながらも、その赤字幅が前年比で52.9%も縮小したことです。
輸出総額は110兆4480億円と過去最大を記録。一方で、トランプ政権による関税措置の影響で対米貿易黒字は1割以上減少するなど、明暗分かれる結果となりました。
本記事では、2025年の日本の貿易動向を詳しく分析し、輸出好調の要因や対米貿易の変化、そして2026年の展望について解説します。
2025年貿易統計の概要
貿易収支は5年連続の赤字
2025年の貿易収支は2兆6506億円の赤字となりました。赤字は5年連続ですが、前年の約5.6兆円から大幅に縮小しています。
輸出総額は110兆4480億円で前年比3.1%増。比較可能な1979年以降で過去最大を更新しました。一方、輸入総額は113兆987億円で同0.3%増にとどまり、輸出の伸びが輸入を上回ったことが赤字縮小の主因です。
12月は黒字に転換
月次で見ると、2025年12月は1057億円の黒字となりました。輸出が前年同月比5.1%増の10.41兆円、輸入が同5.3%増の10.31兆円で、年間では赤字でも月次では黒字を計上する局面が出ています。
11月も3222億円の黒字を記録しており、年後半にかけて貿易収支が改善傾向にあることがわかります。
輸出好調の要因
半導体等電子部品が牽引
2025年の輸出を牽引したのは半導体等電子部品です。輸出額は4.9兆円で前年比17.9%増と2年連続で増加しました。
世界的なAI需要の拡大を背景に、半導体関連製品への需要が高まっています。米国半導体工業会(SIA)によると、2025年11月の世界半導体月間売上高は過去最高の753億ドルに達し、前年同月比29.8%増となりました。
日本からの半導体等電子部品は、中国向けが1.2兆円、台湾向けが1.0兆円を中心に、香港、韓国、マレーシアなどアジア向けが中心となっています。
半導体製造装置も好調
半導体製造装置の輸出も好調でした。2025年1月から9月の輸出額は3.36兆円で、前年同期比3.0%増加しています。
国別では台湾向けが前年同期比65%増、韓国向けが16%増と大幅に伸びました。一方、中国向けは11%減、米国向けは28%減と、地政学的な要因による変化も見られます。
食料品・航空機部品も増加
半導体関連以外では、食料品や航空機エンジン部品の輸出も増加しました。日本食ブームを背景とした食料品輸出の拡大は近年続いており、2025年もこの傾向が維持されました。
対米貿易の変化
対米黒字は12.6%減少
2025年の対米貿易黒字は7兆5200億円で、前年比12.6%減少しました。対米輸出が4.1%減の20兆4100億円、対米輸入が1.6%増の12兆8900億円となり、輸出減と輸入増の両面から黒字が縮小しました。
対米輸出の減少は5年ぶりのことです。
トランプ関税の影響
この背景にあるのがトランプ政権による関税措置です。2025年4月、トランプ大統領は世界各国に対する相互関税率を発表し、日本に対しては24%(自動車は25%追加)とされました。
7月の日米関税交渉で最終的に15%で決着しましたが、それでも従来より大幅に高い関税率となっています。
自動車産業への打撃
特に打撃を受けたのが自動車産業です。日本の自動車大手7社の2025年4月から9月の中間決算では、関税負担額は合計1兆4000億円に上りました。
日産、マツダ、三菱は赤字に転落し、他の4社も大幅減益となっています。ホンダは2025年度通年の関税コストを4500億円と見込んでおり、営業利益は前年度から7134億円減少して5000億円になると発表しています。
輸出価格引き下げで対応
日本の自動車メーカーは関税分を吸収するため、輸出価格を大幅に引き下げる対応を取っています。米国向け乗用車輸出物価は約2割の下落となりました。
その結果、輸出数量はあまり変わらないものの、輸出金額は関税分だけ減少する構図となっています。収益の悪化幅が大きくなっており、難しい舵取りを迫られています。
注意点・今後の展望
新たな懸念材料
2026年に向けては、中国によるレアアース輸出規制が新たな懸念材料として浮上しています。自動車のEV化や電子機器に欠かせないレアアースの供給制約は、日本の製造業全体に影響を及ぼす可能性があります。
また、トランプ政権下での関税政策は依然として不透明な部分が多く、追加関税のリスクも否定できません。
為替動向の影響
円安傾向が続いたことも2025年の輸出拡大に寄与しました。ただし、円安は輸入コストの増加にもつながるため、エネルギー価格の動向次第では貿易収支を再び悪化させる可能性もあります。
半導体市場における課題
世界の半導体市場が好調な一方、日本市場だけがマイナス成長となっている点は気がかりです。2025年11月の半導体売上高は、日本を除くすべての地域が2桁成長を遂げる中、日本だけ8.9%減少しました。
日本の半導体市場シェアは、2024年11月の7.2%から2025年11月には5.0%に下落しています。製造装置の輸出は好調でも、半導体製品そのものの競争力には課題が残ります。
まとめ
2025年の日本の貿易統計は、輸出総額が過去最大を更新し、貿易赤字が5割縮小するという明るい結果となりました。半導体等電子部品を中心にアジア向け輸出が好調だったことが主因です。
一方、トランプ関税の影響で対米貿易黒字は1割以上減少し、特に自動車産業は大きな打撃を受けています。メーカー各社は価格引き下げで数量維持を図っていますが、収益への影響は深刻です。
2026年に向けては、中国のレアアース規制、関税政策の不透明性、為替動向など複数のリスク要因があります。輸出好調を維持できるかどうか、引き続き注視が必要です。
参考資料:
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