日本の貿易赤字が5割減 半導体輸出好調も対米黒字は縮小
はじめに
2026年1月22日、財務省が発表した2025年の貿易統計速報によると、日本の貿易収支は2兆6506億円の赤字となりました。5年連続の貿易赤字ですが、赤字幅は前年(5兆6284億円)から52.9%と大幅に縮小しています。
輸出総額は110兆4480億円と過去最大を記録し、特に半導体等電子部品の輸出が好調でした。一方、トランプ政権の関税政策の影響で対米自動車輸出は11%減少し、対米貿易黒字も1割超縮小しています。
この記事では、2025年の日本の貿易動向と、今後の見通しについて解説します。
2025年貿易統計のポイント
輸出額が過去最大を更新
2025年の輸出総額は110兆4480億円(前年比3.1%増)と、過去最大を更新しました。主な増加品目は以下の通りです。
- 半導体等電子部品:アジアや欧州向けが増加
- 半導体等製造装置:AI需要を背景に堅調
- 食料品:海外での日本食ブーム継続
- 航空機エンジン部品:新型機向け需要
半導体関連の輸出が全体を牽引しており、AI(人工知能)やデータセンター向けの需要拡大が背景にあります。
輸入は横ばい
輸入総額は113兆円台(前年比1%未満の増加)とほぼ横ばいでした。エネルギー価格の落ち着きが輸入額の抑制に寄与しています。
原油価格は2024年と比較して安定的に推移し、鉱物性燃料の輸入額増加が限定的となりました。これが貿易赤字縮小の主因の一つです。
赤字幅が5割以上縮小
輸出の伸びが輸入を上回り、貿易赤字は前年の5兆6284億円から2兆6506億円へと52.9%縮小しました。2021年以降の貿易赤字傾向は続いていますが、改善の兆しが見えています。
トランプ関税の影響
対米自動車輸出が11%減
2025年12月の対米輸出は前年同月比11%減少しました。特に自動車・自動車部品・半導体製造装置の減少が目立っています。
トランプ政権は2025年4月に日本を含む各国に10%の「相互関税」を課し、その後7月には日本向けに25%への引き上げを予告しました。最終的に7月22日の日米合意により15%に落ち着きましたが、関税引き上げ前の水準と比較すると日本の輸出企業にとっては大きな負担となっています。
対米貿易黒字は1割超縮小
年間ベースでの対米貿易黒字は1割以上縮小しました。2024年には約9兆円あった対米黒字が、関税の影響で減少傾向にあります。
米国側の統計(商務省発表)によると、対日貿易赤字は687億ドルで、前年から31億ドル縮小しています。
自動車メーカーへの影響
日本の自動車メーカーは関税負担を避けるため、米国現地生産の拡大を進めています。また、ハイブリッド車など付加価値の高い車種への注力も続いています。
ただし、中国のレアアース輸出規制という新たな懸念も浮上しており、自動車産業を取り巻く環境は不透明感を増しています。
半導体輸出が好調を維持
AI需要が追い風
半導体等電子部品と半導体等製造装置の輸出は好調を維持しています。世界的なAIブームを背景に、データセンター向けの需要が旺盛です。
2024年度には半導体等製造装置が前年度比27.0%増、半導体等電子部品が同9.8%増と大幅に伸びており、この傾向は2025年も継続しました。
地域別では欧州・アジア向けが増加
半導体関連の輸出先としては、欧州連合(EU)やアジア諸国向けが増加しています。一方、対中輸出は半導体製造装置の輸出規制強化もあり、伸びが鈍化しています。
対米輸出については、日米合意により半導体は「他国に適用される関税率を超えない」扱いとなっており、自動車と比較すると関税の影響は限定的です。
550億ドル投資プレッジ
2025年9月の日米覚書では、日本企業による米国への550億ドル(約8.3兆円)の投資プレッジが盛り込まれました。投資対象には半導体、医薬品、金属、重要鉱物、造船、エネルギー、AI、量子コンピューティングなどの戦略分野が含まれ、2029年1月までに実施される予定です。
今後の見通し
2026年度は黒字転換の予測
日本貿易会の予測によると、通関貿易収支は2025年度が1兆4210億円の赤字となる一方、2026年度は1兆8960億円の黒字に転じる見通しです。6年ぶりの黒字転換となります。
黒字化の要因としては、以下が挙げられています。
- 鉱物性燃料の輸入額減少が継続
- 電気機器・一般機械の輸出額増加
- 半導体関連需要の継続
輸送用機器は減少見通し
一方、自動車を含む輸送用機器の輸出額は、米国の関税措置の影響で2025年度に減少する見通しです。円高が進行した場合、輸出金額への下押し圧力がさらに強まる可能性があります。
リスク要因
今後の貿易動向に影響を与えるリスク要因として、以下が挙げられます。
- トランプ関税の追加措置:現行15%からさらなる引き上げの可能性
- 中国のレアアース規制:自動車・電子機器産業への影響
- 為替変動:円高は輸出金額を押し下げ、円安は輸入コストを増加
- 中国経済の減速:アジア向け輸出への影響
投資家・企業への示唆
輸出企業の選別が重要
半導体関連企業は引き続き追い風を受ける一方、自動車メーカーは関税負担や中国リスクに直面しています。投資家は業種ごとの差異を意識した銘柄選別が求められます。
サプライチェーンの見直し
企業にとっては、地政学リスクを踏まえたサプライチェーンの見直しが急務です。中国依存度の低減や、友好国との連携強化(フレンドショアリング)が進んでいます。
まとめ
2025年の日本の貿易赤字は2.6兆円と、前年比で5割以上縮小しました。半導体等電子部品や製造装置の輸出が過去最大を記録し、輸出総額は110兆円を超えています。
一方、トランプ政権の関税政策は対米輸出に影響を与えており、特に自動車輸出は11%減少しました。対米貿易黒字も1割超縮小しています。
2026年度には6年ぶりの貿易黒字転換が予測されていますが、関税リスクや中国のレアアース規制など不確定要素も多く、引き続き慎重な見通しが必要です。
参考資料:
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