衆院選で候補乱立が加速、死票増加と二大政党制の終焉
はじめに
2026年2月8日に投開票が予定される衆議院選挙で、与野党候補の一騎打ちの構図がさらに崩れる見通しとなっています。多党制により各選挙区で候補が乱立し、本来の「政権選択選挙」としての意義が薄れつつあります。
1994年に導入された小選挙区制は、二大政党制の実現を目指したものでした。しかし30年を経た現在、むしろ多党化が進み、制度の根本的な見直しを求める声が強まっています。
この記事では、2026年衆院選における各党の動向、小選挙区制と「死票」問題、そして選挙制度改革の議論について解説します。
2026年衆院選の政党配置
自民党と維新の与党連立
2025年10月、高市早苗首相率いる自民党は日本維新の会と連立政権を発足させました。女性初の首相誕生という歴史的出来事でしたが、この連立により政界の勢力図は大きく変化しました。
注目すべきは、連立を組みながらも選挙協力を行わないという方針です。自民党の鈴木俊一幹事長は1月20日の記者会見で「基本的に選挙協力は行わない」と明言しました。維新は全国77選挙区で候補者を立てる予定で、自民党と64選挙区で競合します。
与党同士が同じ選挙区で争うという異例の事態は、有権者にとって分かりにくい構図を生み出しています。
立憲民主党と公明党の新党「中道改革連合」
一方、野党側でも大きな再編が起きました。2026年1月15日、立憲民主党と公明党は新党「中道改革連合」の結成で合意しました。
公明党は2025年10月、企業・団体献金の規制強化で折り合えなかったとして、約26年続いた自民党との連立を解消していました。斉藤鉄夫代表は「右傾化が進む政治状況のなか、中道主義の大きなかたまりをつくる」と新党結成の意義を語りました。
新党では、立憲が小選挙区、公明が比例代表に注力する役割分担が想定されています。衆院議員で見ると、立憲の148人と公明の24人を合わせて172人となり、自民党の196人に迫る勢力となります。
国民民主党の独自路線
国民民主党の玉木雄一郎代表は「中道改革連合」への参加を否定し、独自路線を維持しています。「手取りを増やす」をスローガンに掲げる同党は、自民党や立憲民主党とも一定の距離を保ち、選挙後の「部分連合」継続を視野に入れています。
しかし、支持層が自民党や参政党と重なる部分があるため、小選挙区での議席確保に苦戦する可能性も指摘されています。
小規模政党の苦境
日本保守党、参政党、れいわ新選組、チームみらいなど小規模政党も選挙に臨みますが、厳しい戦いが予想されます。
特に日本保守党は、高市政権の発足により「自分たちの存在感を出していくことに相当工夫が必要」な状況に追い込まれています。保守層の支持が与党に流れる中、比例で1~2議席を確保できるかどうかが焦点となります。
小選挙区制と「死票」問題
死票とは何か
小選挙区制の最大のデメリットとして指摘されるのが「死票」の問題です。死票とは落選者に投じた票のことで、当選した1人以外への票は全て無効になります。
2024年10月の総選挙では、死票が全国で約2828万票にものぼり、小選挙区得票の52%を占めました。過半数の有権者の意思が議席に反映されなかったことになります。
候補乱立が死票を増やす理由
候補者が乱立すると、当選者の得票率は下がり、相対的に死票が増加します。たとえば、4人の候補者が争う選挙区で当選者が30%の票を得た場合、残り70%が死票となります。
過去10回の総選挙を見ると、比較第1党が4割台の得票率で6~8割もの議席を占めたケースが7回もありました。「虚構の多数」を生み出す構造的な問題があるのです。
二大政党制の挫折
小選挙区制は、英国や米国のように二大政党制を生み出すことを期待して導入されました。2009年と2012年の政権交代は、その成果と見ることもできました。
しかし現在、自民・維新・立憲・公明・国民・れいわ・参政党・日本保守党など多数の政党が競い合う状況となっています。元首相の石破茂氏は「二大政党制に収れんすると考えたのは間違いだった。制度さえ入れれば実現すると思っていた」と率直に認めています。
選挙制度改革の動き
超党派での検討開始
衆院議院運営委員会は2024年12月、選挙制度の抜本的検討を行うため、議長のもとに全会派参加の協議会設置を決定しました。衆院を構成する全11政党・会派でつくる超党派議員連盟も、「現行の小選挙区比例代表並立制に代わる新たな選挙制度の創設」を目指すことで合意しています。
一票の格差問題
「一票の格差」をめぐる訴訟で違憲判決が出ていることも、制度改革を促す要因となっています。都市部と地方で有権者数に大きな差がある現状は、民主主義の根幹に関わる問題です。
定数削減の議論
自民党と維新は連立政権合意書に「1割を目標に衆院議員定数を削減する」と明記しました。しかし、定数削減は少数意見の反映をさらに難しくする可能性があり、慎重論も根強くあります。
両党は選挙制度改革と一体で議論し、詳細は2026年以降に決める方針で合意しています。
有権者への影響と対策
投票行動の難しさ
多党化により、有権者は「誰に投票すれば自分の意思が反映されるか」を判断しにくくなっています。特に小選挙区では、支持政党の候補者が当選可能性の低い場合、「戦略的投票」を検討する必要が出てきます。
比例代表の重要性
小選挙区で「死票」になるリスクを考えると、比例代表での投票がより重要になります。比例代表では得票率に応じて議席が配分されるため、小規模政党への投票も無駄になりにくい仕組みです。
政策比較の必要性
政党の数が増えたことで、有権者は各党の政策を比較検討する必要があります。特に経済政策、安全保障、エネルギー政策などの重要課題について、各党の違いを理解した上で投票することが求められます。
今後の展望
2月8日投開票の焦点
今回の衆院選で焦点となるのは、自民・維新の与党が過半数(233議席)を維持できるかどうかです。高市政権の支持率は比較的高く、与党有利との見方が多いですが、「中道改革連合」の結成により野党側も一定の競争力を確保しています。
選挙後の政界再編
選挙結果次第では、さらなる政界再編も予想されます。国民民主党がどの勢力と連携するかは、政局を左右する重要な要素となるでしょう。
選挙制度改革の行方
1年4ヶ月で3回目となる国政選挙は、頻繁な選挙が政策停滞を招いているとの批判もあります。今後、超党派での選挙制度改革論議が本格化すれば、小選挙区制の見直しや議員定数の変更など、大きな制度変更が議論される可能性があります。
まとめ
2026年衆院選は、与野党一騎打ちの構図が崩れ、多党制による候補乱立が顕著な選挙となっています。自民・維新の与党連立、立憲・公明の「中道改革連合」結成という大きな再編が起きた一方で、選挙協力は限定的で、各選挙区での競合が続きます。
小選挙区制導入から30年、二大政党制の実現は遠のき、死票問題への懸念が高まっています。有権者としては、各党の政策を比較し、小選挙区と比例代表それぞれで戦略的に投票先を選ぶことが重要です。
選挙後には、選挙制度改革の議論が本格化する見通しです。日本の民主主義の在り方を左右する重要な局面を迎えています。
参考資料:
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