2026年衆院選で加速する多党化と与党内対決の構図
はじめに
2026年1月27日に公示された第51回衆議院議員総選挙は、日本政治の「多党化」を如実に映し出す選挙となっています。最大の特徴は、連立与党を組む自民党と日本維新の会が、原則として候補者調整を行わず、80を超える小選挙区で正面からぶつかる異例の構図です。
さらに参政党や日本保守党といった新興保守政党も積極的に候補者を擁立し、保守票の奪い合いが激化しています。一方、野党側では立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を結成し、対抗軸の形成を図っています。
本記事では、小選挙区制導入から約30年を経て進む多党化の実態と、その背景にある政治構造の変化について詳しく解説します。
与党内で激突する自民党と維新
80超の小選挙区で競合する連立与党
2025年10月に発足した高市政権のもとで、自民党と日本維新の会は連立政権を組んでいます。しかし今回の衆院選では、両党は原則として候補者調整を行わない方針を採用しました。
時事通信の集計によると、自民党と維新は80を超える小選挙区で候補者が競合しています。特に維新の地盤である関西地方と、浮動票の多い首都圏で与党同士の激突が目立ちます。
神奈川県では6選挙区で自民と維新の候補者が対決する構図となりました。両党の政策の差別化が有権者に浸透しにくい中、各陣営は「相手との政治姿勢の違いを前面に打ち出す」と強調しています。
維新が抱える「埋没」リスク
連立入りした維新にとって、この選挙は難しい戦いとなっています。内閣支持率が高い状況では、与党の中で維新が「埋没」する懸念があるためです。
選挙アナリストからは「維新は現時点では上がる要素がない」との分析も出ています。今後、自民との選挙協力体制を構築するか否かで情勢が変動する可能性はありますが、現状では両党の協調は限定的です。
唯一の例外として、兵庫2区では自民が擁立を見送りました。自民の古屋圭司選対委員長は「維新から強い要請があった」と説明し、あくまで例外的な対応であることを強調しています。
新興保守政党の台頭と保守票の分散
参政党は190人規模の擁立を発表
参政党は今回の衆院選で、比例候補を含めて約190人を擁立する方針を明らかにしました。神谷宗幣代表は「野党第1党や、与党でも第1党になる可能性がゼロではない」と述べ、第三極としての存在感を示す考えです。
参政党は小選挙区で160人の擁立を目指し、30議席の獲得を目標としています。1月26日には、元自民党衆院議員の豊田真由子氏を比例代表北関東ブロックで擁立することも発表しました。
日本保守党も存在感を示す
百田尚樹代表が率いる日本保守党も、17人の候補者擁立を予定しています。同党は2024年の第50回衆院選で政党要件を満たし、国政政党となりました。
1月7日には群馬2区、東京8区、東京29区、愛知4区などの候補予定者を発表。「立候補者全員の当選を目指す」としています。
これらの新興保守政党の台頭により、保守層の票が自民党、維新、参政党、日本保守党の間で分散する構図が生まれています。
野党再編と中道改革連合の結成
立憲と公明が合流した新党
野党側でも大きな動きがありました。2025年10月、公明党は26年間続いた自民党との連立政権から離脱。企業・団体献金の規制強化で折り合えなかったことが主な理由とされています。
その後、公明党は立憲民主党との連携を模索し、2026年1月16日、両党は新党「中道改革連合」(略称:中道)の結成を発表しました。野田佳彦代表と斉藤鉄夫代表が共同代表に就任し、1月22日の結党大会時点で165人の国会議員が所属しています。
新党の基本姿勢と政策
野田共同代表は党名について「右にも左にも傾かず、熟議を通して解を見いだしていく基本姿勢」を表したと説明しました。斉藤共同代表は「日本の経済の安定と平和を保つことが中道だ」と語っています。
政策面では「食料品の消費税率ゼロ」を盛り込む方針が示されています。新党のシンボルカラーには、立憲と公明が共に使ってきたブルーの「中間的な青」が採用されました。
中道改革連合は小選挙区で200人を超える候補者を擁立し、比較第1党を目指しています。公明党出身者は小選挙区から撤退し、比例に専念することで立憲とすみ分けています。
小選挙区制と多党化のジレンマ
二大政党制を想定した制度設計
現在の小選挙区比例代表並立制は、1994年に導入されました。導入の主な目的は、金権政治の打破と二大政党制の実現でした。
制度導入を強く推進した小沢一郎氏は当時、「一騎討ちで勝敗を決める小選挙区がいい」と主張していました。小選挙区制には「デュヴェルジェの法則」と呼ばれる効果があり、二大政党制を生みやすいとされてきたためです。
現実との乖離
しかし導入から約30年が経過し、現実は異なる様相を呈しています。今回の衆院選では、与党と野党の「一騎打ち」となる小選挙区は2割未満しかありません。
ある分析では、2026年衆院選は「日本政治が『二大政党幻想』から完全に離脱したことを示す節目になる」と指摘されています。選挙の本質は「与党 vs 野党」という単純な構図ではなく、「多極化したまま収束しない分散戦」だというのです。
制度導入を決めた当時、野党自民党総裁だった河野洋平元衆院議長は近年、この制度改革について「失敗だった」と明言しています。
注意点・展望
議席予測と政局の見通し
各種分析では、自民党が200議席前後、中道改革連合が160議席前後、維新が40議席台という予測が出ています。与党が過半数(233議席)を維持できるかが最大の焦点ですが、仮に維持できたとしても「安定政権」というより、政策ごとに綱引きが続く可能性が高いとされています。
選挙結果が示す今後の方向性
今回の選挙結果は、日本の政党政治の今後を占う上で重要な意味を持ちます。与党内の競合、野党の再編、新興政党の台頭という三つの動きが同時に進行しており、選挙後の政治構造にも大きな影響を与えるでしょう。
特に、小選挙区制のもとでの多党化という矛盾をどう解消するのか、選挙制度改革の議論が再燃する可能性もあります。
まとめ
2026年衆院選は、日本政治における多党化の進行を象徴する選挙となっています。連立与党である自民党と維新が80超の小選挙区で競合し、参政党や日本保守党も保守票を奪い合います。野党側では立憲と公明が合流した中道改革連合が対抗軸を形成しています。
二大政党制を想定して導入された小選挙区制のもとで、実際には多党化が進むという矛盾は、今後の政治改革論議にも影響を与えるでしょう。2月8日の投開票結果が、日本の政党政治の新たな姿を示すことになります。
参考資料:
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