衆院選公示、1285人が立候補 高市政権の信任問う
はじめに
2026年1月27日、第51回衆議院選挙が公示されました。立候補者は計1285人に上り、2月8日の投開票に向けて12日間の選挙戦がスタートしました。約1年3カ月ぶりとなるこの衆院選は、2025年10月に発足した高市早苗首相率いる自民党・日本維新の会の連立政権への信任を問う選挙です。
「責任ある積極財政」を掲げる高市政権に対し、野党各党も消費税減税を旗印に対抗します。物価高対策、安全保障政策、政治改革など多岐にわたる争点について、与野党が論戦を交わします。本記事では、選挙の構図と主要争点を解説します。
高市政権発足の経緯
石破政権の退陣と自民党総裁選
高市内閣が誕生した背景には、前内閣総理大臣・石破茂の退陣があります。2024年10月の第50回衆議院選挙、続く2025年7月の参議院選挙で自民党・公明党が大敗し、衆参両院で少数与党に転落しました。
米国との関税交渉が一段落した2025年9月7日、石破首相は辞任を表明。後継を決める自民党総裁選に向けて党内は動き出しました。
女性初の自民党総裁・首相誕生
2025年10月4日の自民党総裁選投開票で、高市早苗は1回目投票で183票を獲得してトップに立ち、決選投票で小泉進次郎を29票差で破って第29代自民党総裁に就任しました。同党結党以来初の女性総裁の誕生でした。
「危機を乗り切るために必要なのは暮らしや未来への不安を夢と希望に変える政治だ」。高市はこう述べて総裁選に臨み、党員からの支持を集めました。
公明党の連立離脱と維新との連携
高市総裁就任を受け、連立パートナーだった公明党の斉藤鉄夫代表は同日、高市と会談。靖国神社参拝問題、歴史認識、政治とカネの3点に懸念を示しました。
10月10日、公明党は正式に連立離脱を伝えました。企業・団体献金の規制強化について折り合えなかったことが理由です。四半世紀にわたる自公の枠組みが終わりを告げ、政局は流動化しました。
自維連立政権の発足
公明党離脱後、高市は日本維新の会との連携を模索。10月15日に維新代表の吉村洋文らと党首会談を行い、連立に向けた政策協議開始で合意しました。
10月20日、両党首は連立政権合意書に署名。経済・社会保障、外交・安全保障など4分野12項目で政策の方向性を共有しました。10月21日、衆議院の首班指名選挙で高市が過半数を得て内閣総理大臣に指名され、日本史上初の女性首相が誕生しました。
選挙戦の構図と各党の勢力
与党:自民党・維新
衆院公示前の与党勢力は自民党が198議席です。維新は閣外協力として閣僚を出さず、連絡調整役として遠藤敬・維新国対委員長が内閣総理大臣補佐官に就任しています。
高市首相は与党で過半数確保を目標に掲げ、下回った場合は「即刻退陣する」と明言しました。選挙戦初日は安倍晋三元首相ゆかりの東京・秋葉原を第一声の地に選び、維新の吉村代表と共にマイクを握りました。
野党:中道改革連合ほか
2025年10月の高市政権発足直前、公明党を離脱した議員と立憲民主党の一部が合流し「中道改革連合」が結成されました。公示前勢力は172議席で、自民党に次ぐ第二勢力です。
その他、日本共産党、れいわ新選組、チームみらいなど各党がそれぞれの政策を掲げて戦います。
主要争点:消費税減税と物価高対策
各党の消費税政策
本選挙の最大争点は消費税減税です。食料品価格は2021年から約28.8%上昇しており、物価高対策は喫緊の課題となっています。
自民党は食料品について2年間の消費税率ゼロを「検討を加速する」と公約に明記しました。財源や開始時期は超党派の「国民会議」での議論に委ねるとしています。高市首相は「2年間限定であれば特例公債を発行せずに確保できる」と述べ、2026年度中の実施を目指しています。
維新も「アクセル役となる」と与党の姿勢を支持。一方、中道改革連合は食品消費税ゼロの恒久化を今秋に実施すると主張し、より踏み込んだ政策を掲げています。
財源論争
財務省の試算によれば、食料品の税率をゼロにする場合は年約5兆円、一律5%引き下げなら年約15兆円、全廃なら年約31兆円の税収減となります。
自民党は税外収入に加え租税特別措置と補助金の見直しで財源を確保するとしています。中道改革連合は国の資産を運用する「ジャパン・ファンド」創設と政府基金・余剰金の活用を掲げ、国債に頼らない財源確保を主張しています。
れいわ新選組の大石晃子共同代表は消費税「廃止」を訴え、チームみらいは消費税ではなく社会保険料引き下げを優先する現役世代最優先の政策を打ち出しています。
その他の争点
外交・安全保障
首相が掲げる「強い経済」に加え、政権の外交姿勢も争点の一つです。高市首相は靖国神社参拝を公言しており、対中・対韓関係への影響が注目されています。安全保障政策をめぐっても、各党の立場の違いが鮮明になっています。
政治改革
選挙制度を含む政治改革も重要なテーマです。公明党が連立離脱の理由に挙げた企業・団体献金の規制強化について、与野党間で見解が分かれています。
憲法改正
高市首相は憲法改正に積極的な姿勢を示しており、維新も改正に前向きです。野党各党の対応と合わせ、憲法論議の行方も有権者の判断材料となります。
注目される勝敗ライン
与党の目標
高市首相は与党で過半数(233議席)確保を目標に掲げ、達成できなければ「進退を懸ける」と明言しています。衆院では現状、与党でギリギリ過半数に届いている状態ですが、選挙結果次第では政権の行方が大きく変わる可能性があります。
野党の戦略
中道改革連合をはじめとする野党各党は、与党過半数割れを目指して選挙戦を展開します。消費税減税の恒久化など、与党よりも踏み込んだ政策で有権者にアピールする戦略です。
まとめ
第51回衆議院選挙は、日本初の女性首相である高市早苗氏率いる自維連立政権への信任を問う選挙です。1285人が立候補し、2月8日の投開票に向けて12日間の選挙戦が始まりました。
最大の争点は消費税減税を含む物価高対策です。与党は食料品2年間ゼロ、野党は恒久化や全廃など、より踏み込んだ政策を掲げて対峙しています。財源論争も激しく、有権者は各党の政策の実現可能性を見極める必要があります。
高市首相が「進退を懸ける」と明言した過半数確保ができるか、野党がそれを阻止できるか。2月8日の投開票結果は、日本の政治の方向性を大きく左右することになるでしょう。
参考資料:
関連記事
厳冬の衆院選2026が映す日本政治の転換点
寒波の中で行われた2026年衆院選は、自民党が戦後初の単独3分の2超を獲得する歴史的結果に。冬の選挙が浮き彫りにした日本政治の構造変化を多角的に読み解きます。
高市圧勝の陰にチームみらい躍進、減税慎重論の行方
自民党が316議席で圧勝した衆院選で、消費税減税に唯一反対したチームみらいが11議席を獲得して躍進。高市政権の食品消費税ゼロ公約に潜む減税慎重論の実態を分析します。
第51回衆院選を徹底解説、自民316議席の歴史的圧勝
2026年2月8日投開票の第51回衆議院選挙で自民党が316議席を獲得し歴史的圧勝。消費税減税や外国人政策など各党の公約、投票率、今後の政局を徹底解説します。
高市早苗首相の高い人気と「情動の政治」の功罪を考える
支持率80%超を誇る高市早苗首相の人気の背景を分析。SNSや若者からの支持理由、「情動の政治」と「エビデンスに基づく政策」のバランスについて解説します。
高市首相の圧勝後に問われる政策の実行力
衆院選で自民党が3分の2超を獲得した高市早苗首相。消費税減税や憲法改正など「悲願」の実現に向けた課題と、巨大な政治資本の使い道を分析します。
最新ニュース
アクティビストの標的が変化、還元から再編へ
割安株の減少でPBR1倍超え企業も標的に。アクティビストの投資戦略が株主還元から事業再編へとシフトする背景と今後の展望を解説します。
アームが初の自社製チップ発表、AI半導体市場に本格参入
ソフトバンクグループ傘下の英アームが35年の歴史で初めて自社製チップ「AGI CPU」を発表。メタやOpenAIを顧客に迎え、5年で年間150億ドルの売上を目指す戦略転換の全容を解説します。
Armが半導体自前開発に参入、AI向けCPUで事業転換
ソフトバンク傘下の英Armが35年間のIPライセンスモデルを転換し、自社開発チップ「AGI CPU」でメタやオープンAIにAI半導体を直接供給する戦略の背景と影響を解説します。
イビデン大幅続伸の背景と半導体銘柄上昇の全貌
2026年3月25日、イビデンが特別利益491億円の計上発表で大幅続伸。半導体関連銘柄が軒並み上昇した背景には、米イラン停戦期待による原油下落と投資家心理の改善がありました。
イラン強硬派「3人組」の実権と米15項目和平案の行方
ハメネイ師亡き後のイランで実権を握る革命防衛隊出身の強硬派3人組と、トランプ政権が提示した15項目の和平案の内容・交渉の行方を詳しく解説します。