衆院選公示、「責任ある積極財政」掲げる高市政権の審判
はじめに
2026年1月27日、第51回衆議院議員総選挙が公示されました。2月8日の投開票に向けて12日間の選挙戦が始まります。小選挙区289、比例代表176の計465議席を争う今回の選挙は、「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗政権の評価を問う一大政治決戦となります。
2024年10月の前回総選挙から約1年3カ月。自民党が69年ぶりに第1党で200議席を割り込んだあの選挙から、日本の政治地図は大きく塗り替えられました。本記事では、今回の選挙の背景、争点、そして各政党の動向を詳しく解説します。
冒頭解散に至る経緯
石破政権から高市政権へ
2024年10月の総選挙で自民党が大敗して以降、日本政治は激動の時代を迎えました。石破茂首相率いる自公連立政権は少数与党として政権運営を余儀なくされ、2025年7月の参院選でも敗北。第2次石破内閣は退陣に追い込まれました。
同年10月の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利し、女性初の首相が誕生しました。しかし、公明党は企業・団体献金の規制強化で折り合えず、連立政権から離脱。代わりに日本維新の会と自維連立政権を樹立するという、戦後政治史でも異例の展開となりました。
高支持率を背景にした決断
高市首相が通常国会冒頭での解散を決断した最大の理由は、内閣支持率の高さにあります。読売新聞の世論調査では、昨年10月の政権発足時に71%を記録し、12月時点でも73%と7割台を維持。共同通信の調査でも64%と高水準を保っています。
首相は1月19日の記者会見で「危機管理や成長を後押しする積極投資などを進めていく。抜本的な政策転換の是非について堂々と審判を仰ぐ」と強調。維新との新たな連立についても信を得たいとし、首相としての進退を懸けると断言しました。
「責任ある積極財政」とは何か
高市首相の経済ビジョン
高市首相は「過度に緊縮的な財政政策と将来への投資不足を終わらせる」と宣言し、経済・財政政策の全面的な見直しを掲げています。具体的には、積極的な財政支出による経済刺激策を推進しながらも、大規模な国債発行は抑制するという「責任ある」姿勢を示しています。
昨年成立した2025年度補正予算は18兆円超と、新型コロナ禍後で最大規模となりました。国民民主党と公明党の要求を取り込み、物価高対策を盛り込んでいます。
消費税減税の公約
選挙戦の目玉政策として、高市首相は食料品に対する消費税(現行8%)の2年間免除を打ち出しました。物価上昇に苦しむ家計を支援する狙いがあり、この措置には国債発行を充てないとしています。既存の補助金の見直しなどで財源を確保する方針です。
市場アナリストの試算によると、食料品の消費税免除による税収減は年間約5兆円(約317億ドル)に上ります。
市場の反応と懸念
債券市場の動揺
高市政権の積極財政路線に対し、金融市場は敏感に反応しています。長期国債利回りは2.185%まで上昇し、27年ぶりの高水準を記録。その後も売りが続き、10年物国債利回りは1999年2月以来の高水準となる2.275%に達しました。
日本の政府債務はGDP比で200%を超え、主要国の中で最も高い水準にあります。債務返済費用はすでに政府支出全体の4分の1以上を占めており、日銀が利上げを進めればさらに膨らむ見通しです。
専門家の警告
野村総合研究所の木内登英氏は「野党勢力が消費税減税を選挙公約に掲げ、与党もそれに追随する動きは問題だ」と警告しています。財政の信頼性に「重大なダメージ」を与えるリスクがあり、消費税減税は高市政権が掲げる「責任ある積極財政」へのコミットメントを空洞化させかねないと指摘しています。
一方、クレディ・アグリコル証券の會田卓司氏は「衆院選での勝利は高市首相の権威を強め、財政健全化から、より積極的で責任ある経済姿勢への転換の余地を与える」との見方を示しています。
与野党の構図
与党:自民党と維新の連立
自民党と日本維新の会による与党連立は、現在233議席を確保しています。これは過半数ぎりぎりの水準であり、議席を減らせば法案成立などが困難になります。
高市首相は、与党が過半数を割り込んだ場合は辞任する意向を表明しており、まさに政権を賭けた戦いとなります。
野党:中道改革連合の結成
立憲民主党は大きな戦略転換を図りました。2026年1月12日、野田佳彦代表が公明党の斉藤鉄夫代表と会談し「より高いレベルで連携」することを確認。その後、保守と革新の間の中道路線を掲げた新党「中道改革連合」を結成しました。
この中道会派は172人で構成され、比例代表では統一名簿を作成。公明党は4つの小選挙区から撤退して比例に専念し、立憲民主党との棲み分けで党勢拡大を目指しています。
選挙の争点
自維連立政権の是非
最大の争点は、自民党と維新による連立政権の枠組みと政権合意の内容に対する評価です。従来の自公連立から大きく舵を切った高市首相の判断が、有権者にどう受け止められるかが問われます。
物価高対策と減税
消費税の減税・廃止を含む物価高対策も重要な争点です。各党とも家計支援策を打ち出していますが、財源の裏付けや実現可能性について論戦が交わされることになります。
安全保障政策
高市首相は「タカ派」として知られ、防衛力強化に積極的です。中国や北朝鮮の脅威が増す中、安全保障政策をめぐる議論も選挙戦の重要なテーマとなります。
今後の注目ポイント
世論調査の動向
朝日新聞の週末の電話世論調査では、今回のタイミングでの解散・総選挙を「支持する」は36%、「支持しない」は50%でした。一方、選挙後も与党連立が過半数を維持すべきとの回答は52%で、過半数を割るべきとの35%を上回りました。
支持率の高さと解散のタイミングへの評価には乖離があり、選挙戦を通じてこの数字がどう動くかが注目されます。
異例の真冬選挙
年度末に近い厳冬期の総選挙は、1990年以来36年ぶりです。1994年に現行の小選挙区比例代表並立制が導入されて以降では初めてとなります。投票率への影響も懸念されており、各党の組織力が試されます。
まとめ
2026年衆院選は、高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」の是非を問う選挙です。女性初の首相として政権発足からわずか3カ月、高支持率を背景にした早期解散は、野党準備不足を突く戦略的判断とも言えます。
しかし、市場は積極財政路線に警戒感を示しており、国債利回りの上昇という形で「評価」を下しています。立憲民主党と公明党による「中道改革連合」の結成という異例の展開もあり、政治地図が大きく塗り替わる可能性を秘めた選挙となります。
2月8日、日本の有権者は「積極財政」か「財政規律」か、そして「自維連立」か「中道連合」かという選択を迫られます。
参考資料:
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