維新が食品消費税ゼロを公約化、2年間限定で自民に同調要求
はじめに
日本維新の会の藤田文武共同代表が2026年1月17日、次期衆議院選挙の公約に食料品の消費税率を2年間限定でゼロにする政策を盛り込む方針を明らかにしました。この発表は、2月上中旬に投開票が予定される衆院選を前に大きな注目を集めています。維新はすでに2025年の参院選でこの政策を掲げており、自民党との連立合意書にも検討事項として明記されていますが、具体的な実現時期や財源については不透明な状況が続いています。本記事では、この政策の背景、海外事例、課題、そして実現可能性について多角的に分析します。
維新の食品消費税ゼロ政策の背景と狙い
政策の概要と提案理由
藤田文武共同代表は記者団に対し、「物価高で家計が非常にいたんでいる。2年間に期間を限定したゼロは我が党がずっと言ってきた。強く訴えていきたい」と述べました。現在、日本では2019年10月の消費増税時に導入された軽減税率により、食料品には8%の税率が適用されています。これをゼロにすることで、物価高騰に苦しむ家計を直接支援する狙いがあります。
維新は2025年6月の参議院選挙でも食料品の消費税ゼロを公約に掲げており、今回の衆院選公約化は一貫した政策路線の延長線上にあります。また、社会保険料の6万円引き下げなど、家計負担の軽減を前面に押し出す戦略を取っています。
連立合意書との関係
2025年10月、自民党と日本維新の会が結んだ連立政権合意書には、「飲食料品を2年間に限って消費税の対象としないことも視野に、法制化について検討を行う」との文言が明記されました。藤田氏はX(旧ツイッター)でも「連立合意書で打ち出した政策転換の是非を問う選挙」と位置づけ、自民党に対してマニフェストへの盛り込みを求めています。
しかし、連立合意書では「視野に」「検討を行う」という表現にとどまり、具体的な実施時期や財源については言及されていません。高市早苗首相は自民党総裁選でこの政策を主張しておらず、党内には財政規律の観点から慎重論も根強く存在します。
食品消費税ゼロの経済効果と課題
家計への影響
第一生命経済研究所の試算によると、食料品を免税とした場合、平均的な4人家族で年間約6.4万円の負担軽減となります。一方、消費税を一律5%に引き下げた場合は年間約14.1万円の軽減効果があるとされています。物価高騰が続く中、こうした家計支援策は一定の効果が期待できます。
しかし、経済学者への調査では、一時的な消費税減税を行うのが適切かという問いに対し、「全くそう思わない」「そう思わない」が計85%を占めており、専門家の間では批判的な見方が支配的です。減税による消費刺激効果は限定的であり、税収減を相殺するほどの景気押し上げ効果は期待しにくいという指摘があります。
財源確保の困難性
食品消費税をゼロにした場合、年間約5兆円の税収減が見込まれます。消費税は日本の税収の約30%以上を占める基幹税であり、その大幅な減収は財政に深刻な影響を及ぼします。現在、消費税収は社会保障財源として位置づけられており、高齢化が進む日本において持続的な社会保障制度の運営には不可欠な財源となっています。
代替財源の候補として酒税やタバコ税が挙げられますが、酒税は約1兆円、タバコ税は約2兆円の税収にとどまり、消費税率1%分程度にしかなりません。維新は外国為替特別会計の剰余金や基金の活用を提案していますが、これらは一時的な財源であり、恒久的な減税の財源とはなり得ません。
海外における食品消費税の取り扱い
イギリスとカナダの事例
イギリスでは標準税率が20%ですが、1973年のVAT(付加価値税)導入当初から生鮮食品や日常の食料品に対してゼロ税率が適用されています。ただし、外食やアルコール飲料、スーパーの温かい持ち帰り商品には標準税率が課されており、品目による細かい区分が設けられています。
カナダでも一般の食料品にはゼロ税率が適用されていますが、加工食品やスナック菓子、外食などには標準税率が課されています。これらの国々では、食料品への税負担を軽減することで低所得層の生活を保護する政策が長年にわたり実施されてきました。
ゼロ税率と軽減税率の違い
「ゼロ税率」と「非課税」には重要な違いがあります。消費者の税負担がゼロになることは同じですが、ゼロ税率では流通過程で支払った消費税額が「仕入税額控除」として還付されます。これにより、食品製造業者や小売業者にとっても有利な制度となります。
日本の現行制度である軽減税率(8%)では、税率引き下げによる減収は年間約1兆円とされています。これをゼロにすることで、さらに約5兆円の減収が見込まれるため、財政への影響は極めて大きくなります。
実現可能性と今後の展望
衆院選での争点化
2026年の衆議院選挙は、1月27日公示・2月8日投開票、または2月3日公示・2月15日投開票のいずれかの日程で実施される見通しです。高市首相は1月23日召集の通常国会で早期解散する意向を示しており、戦後最短となる16日間の選挙戦になる可能性があります。
この短期決戦の中で、維新は食品消費税ゼロを主要公約として掲げ、有権者の支持を獲得しようとしています。物価高騰に苦しむ家計にとっては魅力的な政策に映る一方、財源や実現可能性については十分な議論が必要です。
自民党の対応と政治的駆け引き
自民党内には財政規律を重視する立場から、食品消費税ゼロに慎重な声が強く存在します。連立合意書では「検討」にとどまっており、具体的な実施時期は明示されていません。藤田氏は自民党にマニフェストへの盛り込みを求めていますが、選挙戦略として掲げるかどうかは不透明な状況です。
一方で、政治的には維新との連立を維持する必要があり、選挙公約として一定の配慮を示す可能性もあります。ただし、公約に盛り込んだとしても、実施時期を「検討」とする曖昧な表現にとどまる可能性が高いと見られています。
注意点と課題
財政悪化のリスク
恒久的な減税は財政悪化を招き、将来世代へのツケとなる可能性があります。日本の政府債務残高は対GDP比で世界最悪の水準にあり、これ以上の財政悪化は国債の信認低下や金利上昇のリスクを高めます。2年間という期間限定であっても、一度実施した減税を元に戻すことは政治的に困難であり、実質的な恒久減税となる懸念があります。
社会保障財源への影響
消費税収は社会保障財源として位置づけられており、年金、医療、介護などの制度を支えています。食品消費税ゼロによる5兆円の減収は、これらの制度の持続可能性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。高齢化が進む中、社会保障費は今後も増加が見込まれており、安定的な財源確保が不可欠です。
経済効果の限定性
過去の事例では、消費税を引き下げても消費が爆発的に増えるわけではありません。マレーシアは2018年6月に6%の消費税を廃止しましたが、物価下落は1%にとどまりました。ただし、その後の経済成長率は5.1%と高水準を維持しており、減税の効果は限定的ながらも一定の成果はあったとされています。
まとめ
日本維新の会が次期衆院選で掲げる食品消費税2年間ゼロの公約は、物価高騰に苦しむ家計への支援策として注目を集めています。平均的な4人家族で年間約6.4万円の負担軽減が見込まれる一方、年間約5兆円の税収減という財政への深刻な影響も懸念されています。
自民党との連立合意書には「検討」と明記されているものの、具体的な実施時期や財源については不透明であり、実現可能性は不確実な状況です。イギリスやカナダなど海外では食品にゼロ税率を適用している国もありますが、日本の財政状況や社会保障制度の特性を考慮すると、単純な比較は困難です。
2月上中旬に実施される衆院選では、この政策が主要な争点の一つとなる見通しです。有権者としては、短期的な家計支援の魅力だけでなく、長期的な財政健全性や社会保障制度への影響も含めて、総合的に判断することが求められます。
参考資料:
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