日米発の市場動揺、国債売りとグリーンランド問題が波及
はじめに
2026年年初から、世界の金融市場に日米発の動揺が広がっています。日本では衆院選で与野党が消費税減税を掲げる構図が固まり、財政悪化懸念から国債市場が混乱。長期金利は27年ぶりの高水準に達しています。
一方、米国ではトランプ大統領がデンマーク自治領グリーンランドの取得に固執し、欧州諸国への追加関税を発動。米欧関係の悪化が景気減速への懸念を生み、株安を招いています。
年初から続いていた世界的な株高基調に変調が見られる中、本記事では日米を震源地とする市場動揺の背景と影響を解説します。
日本:財政懸念による国債売り
長期金利、27年ぶりの高水準
2026年1月、日本の長期金利(新発10年物国債利回り)は2.275%に達し、1999年2月以来およそ27年ぶりの高水準を記録しました。30年物国債利回りも史上最高水準を更新し、債券市場には強い緊張が走っています。
新発30年物国債利回りは1月21日に一時前日比0.165%低下しましたが、これは前日までの急激な上昇の反動であり、水準としては依然として高止まりしています。
消費税減税が引き金に
金利急上昇の直接的な引き金となったのは、消費税減税をめぐる政治動向です。自民党の鈴木俊一幹事長が食料品の消費税率を2年間ゼロにする方針を「今まさに議論している」と発言。日本維新の会も期間限定の食品消費税ゼロを公約に掲げることを表明しました。
与野党がそろって減税を競う構図が固まったことで、市場では財政規律への懸念が一気に高まりました。消費税は社会保障の財源に充てられており、減税すれば少なくとも5兆円規模の穴が開くと試算されています。
日本国債市場の構造的問題
日本国債市場が抱える課題は、消費税減税だけではありません。
巨額の政府債務: 普通国債残高は1,000兆円を超え、政府債務のGDP比率は234.9%(IMF予測)と先進国で突出して高い水準にあります。
日銀の出口戦略: 日銀は長年の金融緩和で国債を大量に保有してきましたが、今後は購入ペースの縮小が見込まれています。最大の買い手が後退する中での財政拡張は、国債需給の悪化を招きます。
2026年度予算: 政府の2026年度予算案は一般会計総額122兆円と過去最大を更新。国債発行額は29.6兆円で30兆円を下回りましたが、特例的な会計操作による部分も含まれています。
円安とインフレ懸念の連鎖
国債売りは円売りとも連動しています。日銀の利上げが緩やかなペースにとどまるとの見方から円が売られ、円安がさらなるインフレを招くとの懸念が債券売りを加速させる悪循環に陥っています。
円は対ドルで158円を挟む水準で推移しており、輸入物価の上昇を通じて家計への負担増が懸念されています。片山さつき財務大臣は市場参加者に冷静な対応を求めましたが、市場の動揺は収まっていません。
米国:グリーンランド問題で欧米対立
トランプ大統領の関税発動
トランプ米大統領は1月17日、デンマーク自治領グリーンランドを米国が取得するまで、欧州8カ国からの輸入品に10%の追加関税をかけると表明しました。
対象となったのはデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドの8カ国。関税は2月に発動し、6月1日からは25%に引き上げられる予定です。グリーンランド取得に関する合意が成立するまで継続するとしています。
欧州の反発と「貿易バズーカ」
これに対し、欧州諸国は即座に反発しました。8カ国は1月18日に共同声明を発表し、グリーンランドへの軍事要員派遣は事前に調整されたものであり、北極圏の安全保障強化に必要なものだと反論しました。
マクロン仏大統領は欧州連合(EU)に対し、「貿易バズーカ」と呼ばれる反威圧措置(ACI)の発動を要請。米欧間の貿易対立が一気に先鋭化する事態となっています。
米ブルッキングス研究所の上級客員研究員は、「今回の威嚇で、米国が昨年夏に英国、EUと結んだ貿易協定が崩壊し、最も近い同盟諸国との関係がさらに悪化する事態になりかねない」と警告しています。
株式市場への波及
グリーンランド問題による地政学リスクの高まりは、世界の株式市場に影響を与えています。
1月19日の東京市場では、日経平均株価が前週末比352円安で取引を終え、3営業日続落となりました。一時は下げ幅が800円を超える場面もありました。
欧州市場も下落し、リスク回避の動きから金価格は最高値を更新。米ドルに対する信頼性の低下から、ドルは対主要国通貨で下落しています。
日米の市場動揺がもたらす相互影響
金利上昇の連鎖
日本と米国の債券市場は相互に影響を与えています。米国でもトランプ政権の減税法案をめぐり財政赤字拡大への懸念が高まっており、米国の財政拡大懸念が間接的に日本の国債利回りに影響を与える経路があります。
日本の長期金利上昇が米国金利の上昇圧力となり、それがまた日本に跳ね返るという連鎖が起きています。実際、日本国債の売りは海外金利の上昇を招き、米国で一時約5カ月ぶりの高水準をつける場面がありました。
株安の波及
金利上昇は株式市場にも重しとなります。日本では金利高を嫌気して株式が大幅に続落。米国でもグリーンランド問題に加え、金利上昇による景気減速懸念から株安圧力がかかっています。
年初から続いていた世界的な株高基調は、日米発の動揺により変調をきたしています。
今後の注意点と展望
日本の財政政策の行方
衆院選の結果と、その後の財政政策の方向性が最大の焦点です。消費税減税が実現する場合、市場の信頼を得られる財政計画をセットで示せるかどうかが、国債市場の安定を左右します。
2022年の英国「トラス・ショック」のように、財源の裏付けのない減税策が市場から拒絶される事態も排除できません。財務大臣による市場への冷静呼びかけが奏功しなければ、日銀による緊急国債買い入れなどの対応が必要になる可能性もあります。
米欧関係の展開
グリーンランド問題をめぐる米欧対立がどこまでエスカレートするかは不透明です。トランプ大統領の発言は予測困難であり、関税の追加引き上げや対象国の拡大もあり得ます。
一方、欧州側も「貿易バズーカ」の発動に踏み切れば、本格的な貿易戦争に発展するリスクがあります。昨年夏に締結された米英・米EU貿易協定の行方も注目されます。
投資家の対応
市場の不確実性が高まる中、投資家はリスク管理を強化する必要があります。国債利回りの上昇は住宅ローン金利の上昇にもつながり、企業の資金調達コストにも影響します。
金価格の上昇は、リスク回避の動きが強まっていることを示しています。ボラティリティの高い相場環境が続く可能性を念頭に置いた対応が求められます。
まとめ
2026年年初から、日米が世界の金融市場を揺らす震源地となっています。日本では消費税減税をめぐる財政懸念から国債売りが加速し、長期金利は27年ぶりの高水準に達しました。米国ではグリーンランド問題で欧州との対立が深まり、リスク回避から株安・金高が進んでいます。
両国の問題は相互に影響を与えており、金利上昇の連鎖や株安の波及が起きています。年初の楽観ムードは一転し、市場は不安定な展開が続いています。
日本の衆院選の結果と財政政策の方向性、米欧関係の行方が今後の焦点となります。政策当局の対応と市場の反応を注視しながら、リスク管理を強化することが重要です。
参考資料:
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