公明・学会票が握る選挙の趨勢、接戦区で1万〜2.5万票の争奪戦
はじめに
立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」の発足は、日本の国政選挙における得票構造に大きな変化をもたらします。26年にわたって自民党を支えてきた公明党や、同党の支持母体である創価学会の組織票が、一定数「中道改革連合」に向かうことで、衆院選の結果が大きく左右される見通しです。
日本経済新聞の試算によると、1選挙区あたり9千〜2.5万票とされる公明・学会票が、接戦区での勝敗を決定づける可能性が高まっています。自民党の小野寺五典前政調会長も「激戦区、接戦区においては少なからず影響はある」と認めており、公明・学会票の争奪戦が選挙の趨勢を握る鍵となることは間違いありません。
本記事では、公明・学会票の実態と選挙への影響力、そして中道改革連合の発足が選挙情勢にもたらす変化について詳しく解説します。
公明・学会票の実態
組織票の規模と推移
創価学会から公明党への票は600万票を超えており、日本で最も票数が多い組織票とされています。ただし、近年は減少傾向にあり、2024年10月の衆院選比例代表では約596万票と、1996年の比例代表導入以降初めて600万票を割り込みました。これは前回より約114万票の減少です。
参院選比例代表の得票数を見ると、2004年の862万票をピークに低落傾向に転じており、2022年には618万票にまで落ち込んでいます。公称の信者数は800万とされていますが、実際の信者数は200万〜300万という試算もあり、衆議院選挙では600万票を下回る状況が続いています。
1選挙区あたりの票数
最新の分析によると、1選挙区あたり9千〜2.5万の公明党・創価学会票があるとされています。他の推計では1万〜3万票、あるいは1〜2万人という数字も示されており、地域によってばらつきがあるものの、いずれの推計でも相当数の票が存在することが確認されています。
特に都市部(東京、神奈川、大阪など)では組織の密度が高く、1選挙区あたり2万票前後の票が動くと見られています。この票数は、接戦区においては勝敗を分ける決定的な要因となり得る規模です。
組織力の特徴
創価学会・公明党の強みは、その組織力と「的確な得票の割り振り」にあります。全国津々浦々に広がる学会組織の末端が「ブロック」と呼ばれ、1ブロックは10〜20程度の学会員世帯で構成されています。2〜4程度のブロックを束ねたものが「地区」となる組織構造を持っています。
組織票は団結が固く、得票数も安定しており棄権も少ないため、「低投票率なら組織力の強い政党や候補が有利」とされています。地域ごとに非常に緻密な活動を行っており、熱心な会員が選挙運動を支えることで、高い投票率を実現しています。
小選挙区制における組織票の威力
小選挙区制の特性
小選挙区制は、一つの選挙区から一人の勝者しか選出されないため、僅差の勝負になりやすい制度です。比較的小規模であっても結束力の固い組織票のブロックは、選挙結果を左右する決定的な要因となり得ます。
二人の候補が競り合う小選挙区では、数は少なくても組織された票がキャスティングボードを握ります。候補者が50対50で競っているときに2%の組織票でも相手側に行くと4%の差が生じてしまうため、組織票の動向は極めて重要です。
自公協力の実績
これまで公明党は、小選挙区では候補者を立てず、自民党候補を支援することで、自民党の当選を支えてきました。公明党は伝統的に支持基盤が強く、多くの自民議員が各選挙区で1万〜2万票あるとされる「公明票」に支えられ当選してきました。
2024年選挙データの分析では、前回自民党が勝利した小選挙区は全部で132ありましたが、シミュレーションでは公明党の票がないと、およそ55%にあたる72人の自民党議員が逆転され敗北していたという結果が出ています。
また、1選挙区あたり1万票の公明票が自民党から立憲民主党候補にシフトすると、35選挙区で結果が逆転し、自民97議席から立憲139議席へと大きく勢力図が変わる可能性が指摘されています。
中道改革連合発足の影響
自公連立の歴史と終焉
1999年10月5日、小渕恵三第2次改造内閣の下で自民党と公明党が初めて連立政権を組みました。その後、野党時代を除いて22年以上にわたって連立が続きましたが、2025年10月10日、公明党は企業・団体献金の規制強化や政治資金問題の真相解明を求めて連立離脱を表明しました。
自民党にとって公明党との連立は、参議院の過半数を確保するために不可欠でした。1993年の第40回衆議院議員総選挙で自民党が過半数割れし、一党優位体制が崩壊した後、公明党の議席は政権運営の生命線となっていました。
新党の選挙戦略
1月16日に正式発表された「中道改革連合」では、公明党は全ての小選挙区から候補者を取り下げ、立憲民主党系の候補を支援する方針です。立憲民主党からは170〜180人の候補を擁立し、公明党系の候補は比例代表で優先的にランク付けされる仕組みとなっています。
この戦略により、これまで自民党候補を支えてきた1選挙区あたり約1.5万〜3万票が、そのまま立憲民主党系候補の票に転じることになります。特に都市部の接戦区では、この票の移動が大きな影響を与えると見られています。
自民党への打撃
自民党は小選挙区の2割で苦戦する可能性があると分析されています。公明党の選挙協力なければ、自民党の2割が落選するという試算もあり、都市部の接戦区で自民党の現職が次々と落選する「逆転現象」が起きる可能性が指摘されています。
最大50選挙区でさらに自民が敗北する可能性があるという日本テレビの試算もあり、公明票の移動が自民党に与える打撃は極めて大きいと言えます。時事通信の試算では、協力が奏功すれば中道改革連合が第1党になる可能性も示されており、30選挙区超で逆転が起きる可能性が指摘されています。
公明・学会票の争奪戦
接戦区での影響
接戦区では、公明・学会票の行方が勝敗を直接的に左右します。立憲民主党の候補が接戦区でこの公明票を得られれば、自民党の候補に競り勝てる可能性が高まります。
特に、前回選挙で数千票差で決着した選挙区では、1万〜2.5万票の移動は決定的な意味を持ちます。都市部を中心に、多くの選挙区でこのような接戦が繰り広げられることが予想されます。
自民党の対応
自民党は、公明票なしで戦うための新たな選挙戦略を迫られています。小野寺五典前政調会長が「少なからず影響はある」と認めているように、自民党内でも危機感が広がっています。
各選挙区で独自の組織を強化し、無党派層への訴求力を高める必要がありますが、短期間でこれまでの公明票の穴を埋めることは容易ではありません。特に都市部では、組織力の弱い自民党候補が苦戦を強いられる可能性が高いと見られています。
公明・学会票の動向
ただし、すべての公明・学会票が自動的に立憲民主党系候補に流れるわけではありません。一部の学会員は、従来通り自民党候補を支持する可能性も指摘されています。
特に地方部では、長年の自公協力の関係が残っている地域もあり、公明党の方針とは異なる投票行動を取る学会員が一定数存在する可能性があります。また、新党への不信感から、投票そのものを棄権する学会員が増える可能性も否定できません。
今後の展望
選挙結果のシナリオ
公明・学会票の動向次第で、衆院選の結果は大きく変わります。中道改革連合が公明・学会票を効果的に取り込めれば、第1党になる可能性も現実味を帯びてきます。
一方、公明・学会票が分散したり、投票率が低下したりすれば、中道改革連合の勢いは削がれ、自民党にも一定のチャンスが残ります。選挙戦の焦点は、公明・学会票をいかに確実に取り込むかにかかっていると言えるでしょう。
組織票の今後
若い世代では「創価学会員=公明党支持」の構図に異変が起きているとの指摘もあります。組織としての結束力は依然として強いものの、個人の政治的判断を重視する傾向が強まっており、従来のような盤石な組織票とは言えなくなっている面もあります。
中長期的には、組織票そのものの影響力が低下していく可能性もあり、各党は組織票に頼らない選挙戦略を構築していく必要があるかもしれません。
まとめ
立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」の発足により、26年続いた自公協力体制が崩壊しました。1選挙区あたり9千〜2.5万票とされる公明・学会票の行方が、衆院選の結果を大きく左右することは確実です。
小選挙区制という制度の特性上、組織票の威力は増幅され、接戦区では決定的な役割を果たします。自民党は公明票なしで戦う新たな選挙戦略を迫られており、都市部を中心に苦戦が予想されます。
公明・学会票の争奪戦は、単なる票の奪い合いではなく、日本の政治の枠組みそのものを変える可能性を秘めています。選挙結果次第では、中道改革連合が第1党となり、新たな政治の流れが生まれるかもしれません。有権者は、この歴史的な転換点における選挙の意味を十分に理解した上で、投票に臨む必要があるでしょう。
参考資料:
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